[全文無料] [書評] 禁断の通知攻撃マニュアル
みなさん、こんにちは。Naseka です。
私は 哲学者・書評家・エッセイスト として、
自らを定義しています。
今回は依頼を受けての書評である。
現代人において
もはや必須アイテムとすら言える
「スマートフォン（以下、スマホ）」
その主要機能のひとつである「通知」
アプリの種類を問わず、
常に我々に何かを知らせに来る。
中でもSNS系のアプリにおいては、
その通知の量は（デフォルトでは）
おびただしい数になるであろう。
「SNS依存症」や「SNS疲れ」なる
言葉も生まれるほど、
現代人には弊害も大きい。
そんなスマホの「通知」は、
疲弊する人間の側から見れば
「攻撃」とすら思えるのではなかろうか。
今回は、そんな問題提起をする１冊である。
ちなみに事前に言っておくが、
迷惑行為を推奨する内容ではないので念のため。
現代人の価値
「人間は考える葦である」とは
有名な言葉であり、私も好んで引用する。
知性こそが人間を他の動物と
決定的に異なる存在にするものであり、
知性なくして人間を語ることは
できないと私は思っている。
人類は知の進歩と共に
文明を発展させてきたわけだが、
その進歩と発展は未だ留まることを知らない。
（地球環境が悲鳴を上げるほどに）
一方、「知」の進歩に対して
「肉体」的な発展はどうだろうか。
その昔 人力に頼っていた仕事は
道具や機械により代替され、
同じ生産物を生み出すのに必要な労力は
時代と共に軽減されていった。
「環境に応じて適した形質が生き残る」
というのはダーウィンが唱えた進化論だが、
文明の発展によって
従来ならば淘汰されていた形質は生き残り、
逆に従来 生き残りに適していた形質は
その優位性を失うこととなってきた。
これの意味するところは、
肉体的な優位性は
時代と共にその価値が低下し、
相対的に知に関する優位性の方が
重要になってきたということである。
モノづくりで喩えるならば、
古来より奴隷や職人といった労働者が
手作業でになっていた作業は、
機械化によって人の肉体に
依存する度合いが大きく低下した。
一方で その機械を設計する知的労働は
年々高度化するから、
求められる「知」のレベルは高まっていく。
つまり、古来需要が高かった力自慢は
現代では需要が小さくなり、
代わりに力はなくとも知恵がある者は
古来に比べて
その価値が高まったということである。
現代において、その身近な代表例が
「スマホ」であろう。
手のひらサイズで
ハード（機械）的なパワーは
皆無であるものの、
それが持つソフトパワーは計り知れない。
とりわけ IoT や ICT が隆盛を誇って以降、
そのソフトパワーはハードパワーをも
包括していると言っても過言ではなかろう。
人間の脳とスマホの相性
さて、そんな人類史上最大に
「知」が価値を持つ現代において、
「人間の脳」と「スマホ」は
二大象徴とも言える。
だが、この２つの相性は大方の予想に反して
あまり良くはなさそうなのである。
知的な行動というのは、
肉体的な行動よりも遥かに集中力を要する。
「身体で覚える」という表現があるように
ある程度 自然に動けるものだが、
知的な行動は集中力を保たないと
脳の持つ能力を十分に発揮できない。
とりわけ学生であれば
「スマホの通知が気になって
勉強が手につかない」
などという悩みを抱える者は多いであろう。
これが著者の主張するところの
「通知『攻撃』」なのである。
対象者のスマホ依存度にもよるが、
この「通知」を悪意を持って利用すれば
「集中力を削ぐ」という
相手への攻撃手段に十分なり得る。
正にそれは、現代人の価値の多くを占める
「知」の持つ力を抑制することに他ならないのだ。
だからこそ 本書は
「通知攻撃」を推奨していないし、
あくまで反面教師的な位置づけで
読むべきなのである。
まとめ
本書は表題とは裏腹に、
通知を悪用するための本ではない。
人間の肉体と知、
そしてあなたが普段使っている
スマホについての「価値」を考え直す
きっかけを提示してくれる本である。
ちなみに ただひとつ、
私には本書を読んでいく上で
序盤からある違和感を抱えていた。
その違和感は、
「あとがき」を読んで腑に落ちることとなる。
私自身は斯様な本を（それと知らされて）
読んだのは初めてだったが、
案外 自分の感覚というものは
的を射ているものだと思った。
その違和感の正体が気になる方は、
ぜひ本書を読んでみてほしい。
こんな人にオススメ！
・SNSによる通知を戦略的に活かして、
より活発に活動を展開したい人
・人間の身体や頭脳の価値について考えたい人
こんな人には合わないかも…
・スマホの通知で迷惑行為を仕掛けようとする人
（そんな人がいるとは思いたくないが）
・スマホの通知に何の不都合も感じていない人
（今までどおりにスマホが触れなくなるかも）
・機械的な文章が得意ではない人
お読みいただき、ありがとうございました。
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