[書評] HOW TO ハウ・トゥー
みなさん、こんにちは。Naseka です。
私は 哲学者・書評家・エッセイスト として、
自らを定義しています。
よく動画サイトなんかを見ていると、
えらくハイレベルな
技術や知識を駆使して
「実にバカバカしいこと」を
している人を見かける。
俗に「才能の無駄遣い」などと
言われるカテゴリーである。
もっとも今の時代であれば、
広告収入なんかもついてくるから
言葉でいうほど
「無駄」にはならないのだろうが。
無駄遣いする才能にも
いろいろとあって、
身体的なもの・感覚的なもの・
頭脳的なものなど多岐に渡る。
とりわけ私が好きなのは
「頭脳的な才能」の無駄遣いで、
頭脳明晰な人が
本気でバカバカしいことを
考察するのを見るのが好きである。
有名なところでいえば、
少年時代には
「空想科学読本」シリーズに
ハマった時期もあった。
マンガやアニメは
ロボットものだろうが
ファンタジーものだろうが
発想とストーリーが大事なのであって、
そこに現実的な科学を
持ち込んで反論するのは
エレガントな行いではない。
だが、いざ常識…
いや「科学的視点」を
持ち込んでみると、
そのツッコミどころの多さに
思わず笑いが込み上げてくる。
これはある程度 科学の素養を
持ち合わせていないと
嗜むことのできない、
なかなかに高度な笑いである。
今回紹介する本も、
そんな知的なユーモア
たっぷりの1冊である。
真剣にバカなことを考える
高くジャンプをする。
自宅にプールを作る。
引越しをする。
一見「普通」に考えれば、
手段も 結果も 限界も
「こんなものだろう」と想像がつく。
それは悲しいかな、
大人になればなるほどに
その想像の幅は
一定の範囲に収束していくものである。
ジャンプするときに
「山を越えよう」とは思わないし、
プールを作るのに
「アルミ箔で作るか チーズで作るか」
なんて考えないし、
引っ越しの話で
「家が空を飛ぶ」ことなど想像しない。
ジャンプといったら
せいぜい棒高跳びの
世界記録ぐらいなものだし
(世界記録「ぐらい」と
いうのも失礼な話だが)、
家のプールなんて いくら大富豪だって
大きさは たかが知れている。
(競技用のプール数面程度だろう)
引っ越しといったら、荷の移動が
陸送か 空輸か 海運かで
迷う程度であろう。
ここまで読みながら頷いた あなた。
いかに我々が
「普通」や「常識」といったものに
囚われているか、
この本を読めば痛感することだろう。
「可否」ではなく「どうすれば」
常識の枠さえ取り払ってしまえば、
何のことはない。
ジャンプでエベレストを超える
高さまで跳ぶことも、
柔らかな素材で
バカでかいプールを作ることも、
人類史上最大の穴を掘ることだって、
「計算上は」できるのである。
そもそもイメージだけで
可能か不可能か議論しているようでは、
身の回りにあふれる
ソリューションだって
生まれてこなかったものは
たくさんある。
「それはできそうにないね」
で終わりでははない。
「じゃあ、どうしたらできるのか」
という発想に、
極めて科学的なアプローチに
基づいて解決策を探していく。
そんなバカげた話を
アメリカ人らしいユーモラスな文章と
棒人間たちが織りなす
シンプルなイラストが笑いを誘う。
たしかに中学・高校の
科学の授業を思い出してみれば、
いずれの法則や公式にも
「実現可能性」なんて要素は
入っていなかった。
そこにあるのは
「重力加速度」などの各種定数や
「物体の質量」といった変数があるだけ。
そこに数字を当てはめて
答えが導き出せれば、
その発想は「理論上は可能」なのである。
科学法則には人類が作為的に作り出した
「費用」や「迷惑さ」といった
要素は入り込まないから、
その「理論上は可能」なことを
実現するかしないかは
我々 人間の都合が決めているのだ。
「実現不可能なこと」と
「現実的ではないこと」は
全く別の話であることを
理解させられる。
自由な発想を持とう
常識に囚われぬ発想。
それは技術者にも、
あらゆるクリエイターにも
必要な要素だ。
note や X で日々発信をしている
私にとっても、常に欲しているものである。
「自由な発想をしよう」というのは
言うは易く行うは難し。
どれだけ自分が
自由に考えたと思っていても、
岡目八目とばかりに
他者から見れば雁字搦めの中にある。
本書は バカバカしくも
しっかりと科学を学べる良書である。
「科学なんて何の役に立つの?」
と思う人は、読めば少しだけでも
興味が湧くかもしれない。
科学がどんなことを
知るために役立つのか、
そのエッセンスが面白おかしく
存分に散りばめられている。
無論、タイトルどおりバカバカしい話を
読みたい人にもピッタリである。
下手なギャグマンガよりも
笑えることは請け合いだろう。
こんな人にオススメ!
・科学が好きな人
・知的なユーモアを愛する人
・科学に興味がない人(特に学生)
・真面目にバカげることが好きな人
・自由な発想力を身に着けたいと思う人
こんな人には合わないかも…
・笑いが嫌いな人
・バカげた話や発想が嫌いな人
お読みいただき、ありがとうございました。
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