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再度の執行猶予獲得術:刑務所行きを回避する最後の手段
こんにちは、弁護士の髙野です。
刑事裁判を受けることになった人にとって、最大の関心事の一つは、執行猶予付きの判決を受けられるのか、それとも実際に刑務所に入らなければならないのかということです。特に、過去に同種の罪を繰り返してしまっている人にとっては、この問題は切実です。今回は、執行猶予の制度と、「再度の執行猶予」を得るための弁護活動の工夫についてお話ししたいと思います。
事例の設定
具体的なイメージを持っていただくために、ある事例を設定してみましょう。
あなたの息子さんは現在25歳。残念ながら、これまで万引き事件を繰り返してしまっており、1年半前にも裁判を受け、「懲役10月執行猶予3年」の判決を言い渡されていました。そんな中、先ほど警察から電話があり、本屋で雑誌を2冊万引きしたとして逮捕されたとの連絡を受けたのです。
このような事案を元に、以下の説明を進めていきます。
まずは不起訴処分を目指す
まず、万引き事件の場合、同種前科がある場合でも、基本的にはまず不起訴処分を目指すことになります。そのためには、被害店に対して賠償の申し入れを行い、被疑者を許すという書面を作成してもらえないか打診していくことが重要です。示談交渉は被害者の気持ちを害しないようにしながら、許してもらう手続きです。もし納得してもらえれば合意書を作成し、その書類をもって検察官に不起訴処分とするよう求めていきます。 これらの手続きは非常に専門的で、知識と経験が必要です。そのため、経験豊富な弁護士に依頼することをお勧めします。 ただし、最終的に不起訴にするかどうかは検察官が決定します。同種の前科がある場合、初犯に比べて示談が成立したとしても不起訴とはならない可能性が高いのも事実です。
再度の執行猶予とは
次に考えるべきは、裁判になってしまった場合に、再度執行猶予付きの判決を得ることです。「再度の執行猶予」とは、執行猶予期間中の人に対して、さらに執行猶予付きの判決を言い渡すことを指します。これは刑法25条2項に定められています。
前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。
再度の執行猶予の要件は次の4つです。
①今回の刑の言渡しの時点で執行猶予中の者であること ②言い渡すべき宣告刑が1年以下の懲役又は禁錮であること ③情状に特に斟酌すべき理由があること ④前刑の執行猶予に保護観察が付されていないこと
②の要件については、前回の刑が懲役10ヶ月なので、今回言い渡される刑罰はそれよりは重くなることが見込まれますが、1年以下に収まる可能性は十分にあります。
最も問題となるのが③の要件、「情状に特に斟酌すべき理由」です。再度の執行猶予を求める際には、前回とは異なる事情から、今回こそ二度と罪を犯すことはないと説得力のある形で主張する必要があります。単に前回と同じことを繰り返すだけでは不十分です。なぜなら、その方法の効果が薄いことは今回の再犯で明らかになってしまっているからです。
嗜癖クリニックで治療を受ける
ここで重要な選択肢となるのが、嗜癖治療を専門に行っているクリニックの受診です。窃盗行為を繰り返してしまっている人の中には、特にお金に困っているわけでもなく、盗んだものも法を犯してまで欲しいものではなかったというケースがあります。このような場合、「クレプトマニア」という一種の依存症状態になっており、自分の意思だけでは万引き行為を止めるのが難しい状態に陥っている可能性があります。
嗜癖治療専門のクリニックでは、このような状態に対して科学的知見に基づく再犯防止プログラムが提供されています。定期的に一定期間通い続けることで、窃盗行為を繰り返さないようになっていく可能性が高まります。
このようなクリニックへの通院を決め、担当の医師などに治療計画書を書いてもらい、それを裁判所に提出することが有効な戦略となります。被告人が罪を繰り返さないためには刑務所に入るのではなく、適切な治療を受けることこそが重要であることを説得的に主張し、再度の執行猶予を得られるよう努めます。
経験豊富でクリニックへツテを持つ弁護士に依頼することが重要
このようなクリニックは混み合っており、通常の予約だと1ヶ月先と言われることも珍しくありません。刑事事件の経験が豊富な弁護士であれば、このようなクリニックを紹介できるネットワークを持っていることが多いです。そうすれば優先して受診をすることが出来るかもしれません。再度の執行猶予を目指すためには、そのような経験豊富な弁護士に依頼することが極めて重要です。
まとめ
執行猶予制度は、罪を犯した人に更生の機会を与えるという重要な役割を果たしています。特に再度の執行猶予は、その人の人生における重大な分岐点となり得ます。だからこそ、この制度を適切に活用し、真の更生につなげていくことが、弁護士の重要な使命の一つなのです。
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