被害届を受け取ってもらえない!?警察官の対応と弁護士に出来ること
こんにちは、弁護士の髙野です。
今回は、刑事事件の被害者の方が警察に被害届や告訴・告発を出そうとする際の問題点と、弁護士にできることについてお話ししたいと思います。
例えば、会社内で横領事件が発覚した、暴行や傷害の被害に遭った、詐欺の被害に遭ってしまった。このような場合、被害者の方は当然警察に相談し、被害届を出そうと考えるでしょう。しかし実際には、警察は被害届や告訴・告発を受け取ることに消極的な態度をとることが少なくありません。
被害届の受理を拒む警察官の手口
私の経験では、警察官から次のような対応をされることが多いのです。
まず多いのが、「管轄が違う」という理由で断られることです。被害者の方は通常、自宅から最寄りの警察署に行くことが多いと思います。しかし、例えば事件現場が別の警察署の管轄であることを理由に、そちらに行くように言われるのです。被害者からすれば、なぜ最寄りの警察署で受け付けてもらえないのかわからないでしょう。
また、「今後大変になりますよ」と、被害者本人の負担を強調して取り下げを勧められることもあります。「何度も事情聴取に来てもらうことになる」「仕事を休まなければならなくなる」「時間がかかる」など、被害届を出した後の大変さを説明され、出すことを思いとどまるように説得されるのです。確かに、被害者の方が突然連絡が取れなくなったり事情聴取に協力してもらえなくなったりすることは警察にとって困るでしょうから、ある程度の説明は必要かもしれません。しかし、それを超えて過度に強調し、被害届の提出を諦めさせようとするケースが目立ちます。
さらに、「結果が出ないからやめたほうが良い」と説得されることも少なくありません。「相手が認めないと立件できない」「仮に検察庁に送致しても起訴できず、前科もつかない」「時間だけかかって結局何も変わらない」などと言われるのです。しかし、実際に捜査をしてみなければ、立件に足りる証拠が集まるかはわかりません。経験豊富な警察官であれば、ある程度の予想はできるかもしれません。しかし、捜査もせずに「やっても無駄」と決めつけて被害届の提出を断ることは、明らかにおかしいと言わざるを得ません。
本当は被害届は受理しなければならない
このような警察官の対応は、実は規則違反なのです。
警察官が犯罪捜査を行う際に守るべき規則として「犯罪捜査規範」があります。そこには次のように定められています。
ここで重要なのは、「管轄区域の事件であるかどうかを問わず」という文言です。先ほど、管轄を理由に断る警察官がいるとお話しましたが、そのような対応は明確に犯罪捜査規範に違反しています。 また、「受理することができる」ではなく「受理しなければならない」となっています。つまり、警察官には被害届や告訴・告発を受理する義務があるのです。
弁護士は被害届の提出をサポートできる
それにもかかわらず、残念ながら上のような対応をする警察官は少なくありません。きちんと捜査をしてもらえれば立件することも可能な事件にもそのような対応をされている可能性は十分にあります。
刑事事件の捜査は基本的には事件から時間が立てば立つほど困難になります。一般的には証拠というものは時間の経過によって散逸してしまうからです。警察官もそのことは十分に知っていますので、時間が立てば立つほど被害届等の受理を拒むようになります。
警察官が受理を拒む理由の一つは、仕事量の増加だと考えられます。そこで私たち弁護士は、被害者の供述調書の作成や、一般市民でも集められる範囲での証拠の収集・整理を代わりに行うことで、警察の負担を軽減することができます。
また、弁護士が同行することで警察官の態度が軟化することも少なくありません。これ自体は本来あってはならないことですが、被害者の権利を守るために利用できる手段は利用すべきでしょう。
弁護士なら賠償金の交渉や、その後の民事訴訟までサポートできる
さらに、刑事手続の中で賠償金の交渉を行うことも可能です。加害者が被疑者となれば、前科がつくことを避けるため、自発的に賠償を提案してくる可能性もあります。このような交渉も、弁護士が代わりに行うことができます。
仮に示談が成立しない場合でも、警察の捜査によって集められた記録の一部を民事訴訟で利用できる可能性があります。捜査機関は強大な権限を持つため、一般市民では入手困難な重要な証拠を容易に収集できます。例えば、関係者からの事情聴取の結果や、防犯カメラの映像、各種の取引記録などです。これらの記録は、その後の民事訴訟において極めて重要な証拠となり得ます。
このように、被害届や告訴・告発の受理から示談交渉、さらには民事訴訟まで、弁護士は一貫してサポートすることができます。警察に被害届などを出そうとお考えの方は、一度弁護士にご相談されることをお勧めします。弁護士が同行することで、より円滑に手続きを進められる可能性が高まります。また、その後の賠償請求まで見据えた戦略を立てることができます。
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