違法薬物使用者の逮捕パターン:弁護士が明かす入手ルートの実態
こんにちは、弁護士の髙野です。 覚醒剤などの違法薬物を使ったり、持っていたりして逮捕されたという報道を定期的に目にすると思います。もちろん、彼らは捜査機関にバレないよう細心の注意を払っています。ではなぜ頻繁にこのような報道があるのでしょうか。今回は、違法薬物の使用や所持で逮捕されるケースについて、具体的な状況や入手経路を交えながらお話ししたいと思います。
職務質問による現行犯逮捕
最も典型的なのは、薬物を所持した状態で職務質問を受け、現行犯逮捕されるケースです。 警察官が作成する現行犯逮捕手続書を見ると、職務質問のきっかけとして「警察官を見て突然進行方向を変えた」「警察車両とすれ違うとスピードを上げた」「覚醒剤使用者特有の顔つきをしていた」などの理由が記載されています。これらの判断基準の正確性には疑問が残りますが、実際にこうした理由で職務質問を受け、逮捕されるケースは少なくありません。
所持で現行犯逮捕された後、尿の提出を求められることがあります。尿から薬物使用の形跡が見つかれば、所持での勾留期間満了時に再逮捕されたり、後日追起訴されたりすることもあります。
売人から芋づる式に
次に多いのが、薬物を売っていた売人が先に逮捕され、その売人のスマートフォンに残された通話履歴などから特定されるケースです。 この場合、突然警察官が自宅に捜索に来ることになります。同時に尿の提出を求められますが、これは任意なので拒否することもできます。ただし、捜索令状が出ているということは相当の証拠が集まっているということなので、裁判所が採尿のための令状を出し、強制的に採尿されることもあります。
入手経路を辿られて
最近増えているのが、SNSなどを通じて売人と連絡を取り、郵便で薬物をやり取りするケースです。 例えば、ある薬物所持者Aが現行犯逮捕され、自宅捜索で売人Bから大麻が入ったレターパックが見つかったとします。捜査機関はそのレターパックの番号から郵送ルートをたどり、売人Bを特定します。B宅の捜索で大麻を送るのに使ったレターパックのシールが複数見つかれば、それらの郵送先を調べて次々と捜索や逮捕が行われていきます。
また、SNSで薬物売買を持ちかけているアカウントの中には、すでに捜査機関に把握されているものもあります。そこから購入すると、即座に捜査の対象となる可能性があります。
このような形で逮捕に至るわけですが、そもそも薬物使用者はどのようにして違法薬物を入手しているのでしょうか。
友人からもらう
よくあるのは、すでに薬物を使用している友人から誘われて使い始めるケースです。その後、友人からもらい続けたり、友人の売人を紹介してもらったりして、自ら直接購入するようになることもあります。
クラブで知り合った人からもらう
次によく聞くのは、クラブに行ったら初対面の人と仲良くなり、その人からもらった、というものです。一見すると作り話に聞こえるかもしれませんが、決して珍しくはありません。実際、以前は渋谷のクラブに一斉摘発が入り、何十人単位で若者が違法薬物の使用や所持で逮捕されるということがよくありました。最近はあまり聞きませんが、コロナ禍を経たことの影響でしょうか。
SNSを通じて売人に接触する
最近最も多いのが、SNSを介して売人に直接アクセスするケースです。X(旧Twitter)などで違法薬物の売買を持ちかけるアカウントは少なくありません。そういったアカウントのプロフィールには、テレグラムやシグナルといった履歴が自動消去されるメッセージアプリのアカウントが記載されていることが多く、そこで連絡を取り合い、郵送や直接対面で取引が行われます。郵送の場合には、代金を先に振込み、入金を確認した後に売人が発送する流れをたどります。その際の振込先口座は、当然売人の名義のものではなく、口座屋等などから入手した他人名義の口座です。
ダークウェブを通じて個人で海外から輸入する
さらに、ダークウェブを通じて個人で海外から輸入するケースもあります。ダークウェブは通常の検索エンジンでは出てこず、特殊な方法を使わないとアクセスできません。かつて「シルクロード」と呼ばれる違法薬物を扱う闇サイトがありましたが、現在は閉鎖されています。しかし同様のサイトは今もなお存在しており、そこを通じて個人使用目的の薬物を輸入する人もいます。
テレグラムなどの設定ミス
テレグラムやシグナルなどの履歴が自動消去されるメッセージアプリは、犯罪組織にしばしば利用されています。しかし、私の経験では、これらのアプリの履歴が刑事裁判の証拠として提出されることはよくあります。末端の使用者や所持者がアプリの設定に詳しくなく、売人などとのやりとりがそのまま残っているケースも少なくないのです。なお、捜査機関によるスマートフォンの解析技術については、こちらのnoteも参考にして下さい。
まとめ
違法薬物の使用や所持は重大な犯罪です。一時の好奇心や誘惑で手を出してしまうと、取り返しのつかない結果を招く可能性があります。もし子供や家族などの身近な人が薬物に手を出しそうな様子があれば、きちんと注意を促すことが大切です。また、すでに薬物に関わってしまった場合は、早急に専門家に相談することをお勧めします。
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