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警察は本当にドアを破壊して入って来るの?捜査の限界と違法収集証拠

こんにちは、弁護士の髙野です。
ドラマや映画で、警察がドアや窓ガラスを破壊して犯人の家に突入しているシーンを見たことはありませんか?実は、これは単なるフィクションではなく、現実の捜査でも実際に行われていることなのです。今回は、捜索差押えの際に捜査機関に許される行為と、それが違法となる基準についてお話ししたいと思います。

刑事訴訟法111条

まず、捜査機関がそのような行為をすることができる法的な根拠についてお話しします。

差押状又は捜索状の執行については、錠を外し、封を開き、その他必要な処分をすることができる。

刑事訴訟法111条1項

捜査機関は、この「必要な処分」という文言を根拠に、状況に応じて様々な手段を取ることができるとされているのです。
捜索の現場で問題となるのは、対象となる建物や部屋に入るためにどこまでの行為が許されるのか、という点です。考えられる手段としては、例えば「業者を連れてきて鍵を開けること」「宅配業者を装って騙して中から鍵を開けさせること」「窓ガラスやドアの鍵を破壊すること」などが挙げられます。

違法な捜査との分水嶺

しかし、捜査機関といえどもこれらの手段を無制限に取ることが許されるわけではありません。最高裁判所は合鍵を使って扉を開けたことについて「被処分者が任意に扉を開けるのを待っていては捜索差押えの目的を達成し得ない場合には、合鍵によって扉を開けることも許される」と判断しています。つまり、その必要な処分を取らないと部屋の中で証拠隠滅が行われる可能性が高いかどうかとのバランスで判断されることになるのです。
例えば、覚醒剤などの違法薬物の所持や譲渡が疑われる売人が対象の場合を考えてみましょう。中の人に気づかれてしまえば、トイレや洗面台に薬物を流して隠滅行為に及ぶことが容易だと考えられます。そのため、気づかれてしまった時に即座に中に入るために強硬な手段を取ることも許容されると判断されやすいのです。つまり、中の人が自発的に開けないことが明らかになった時点で窓やドアの鍵を破壊して入ってくることは行われやすく、裁判所も違法とは認めないことが多いというわけです。

違法収集証拠排除法則

ただし、事件の記録を見ていると、捜索を行う捜査官たちが常に冷静にその分水嶺を判断しているとは思えません。焦りから許される範囲を超えた行動をする危険は常にあります。それによって侵害されるのは捜査の対象となっている被疑者の権利です。
法律は当然そのようなやり得は許しません。刑事裁判では違法な捜査によって収集された証拠は利用することができないとされています。もし窓ガラスを割って入ってきた捜査機関の行動が違法と判断されれば、その後に家の中で収集された証拠は裁判ではなかったものとして扱われることになります。さらにその証拠が被告人の有罪を裏付ける唯一の証拠であれば、無罪判決が言い渡されることになるのです。
違法捜査であることを主張する際の難しさは、多くの場合片面的な証拠しかないという点です。被疑者はその時点で自由に録音や録画をすることができず、自由に証拠を作成することはできません。しかし、捜索差押えの場面は捜査機関によって録画されたり、写真が撮られていることが多いのです。その記録を見れば捜査機関の違法を裏付けるものが見つかる可能性はあります。ただし、これらの証拠は待っていて自然に手に入るものではありません。弁護士が適切な方法で検察官に開示を求めて初めて入手できるものなのです。このような主張を考えているときは、必ず弁護士に証拠開示の方法や準備状況を確認しなければなりません。それをしようともしない弁護士であれば、ともに戦ってくれることはないと考えてよいと思います。 証拠開示についてはこちらのnoteをお読み下さい。

まとめ

違法収集証拠の主張は容易に認められるものではありません。しかし、しっかりと準備して戦えば十分に可能性はあるのです。鍵を壊されたり窓を破られたりした方は、このような主張も考えてみてはいかがでしょうか。その際には経験豊富な弁護士の協力が必須になります。

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