犯罪組織が好む理由は?テレグラムについて
先日、テレグラム(Telegram)の創業者がフランスで身柄を拘束されたというニュースが流れました。日本においても、テレグラムは振込め詐欺や違法薬物の輸入などの犯罪組織が好んで利用しているアプリとして知られています。今回は、このテレグラムの機能と、なぜ犯罪組織に好まれるのかについて解説します。
スマートフォンは第二の脳
まず、現代社会においてスマートフォンは人の第二の脳とも言える存在となっています。そのため、捜査機関は逮捕した人のスマートフォンをほぼどんな事件でも押収し、その中身の解析を行おうとします。なお、スマートフォンに暗証番号によるロックが掛かっていても、捜査機関にはそれを突破する手段があることは注意が必要です。詳しくはこちらのnoteを御覧ください。
捜査機関がスマートフォンの解析に人と時間をかけるのは、そこから得られる情報が事件の全容解明に大いに役立つからです。特に重要なのが通信履歴です。電話はもちろんですが、メッセージ、チャット、メールのやり取りは文字情報として残るため、被疑者が言い逃れのできない最も重要な証拠の一つとなります。日本では、LINEがその典型例です。捜査機関は被疑者がどのような人物とどのような内容のやり取りをしているのか、LINEのトーク履歴に大いに注目しています。
を開示することを明示しています。
これらの手段があることは、犯罪組織にとっては好ましくありません。そこで登場するのが、テレグラムです。テレグラムには、犯罪組織が求める機能が備わっているのです。
テレグラムの主な特徴
まず、テレグラムには、受け取ったメッセージや送信したメッセージを自動的に削除する機能が備わっています。例えば、開封後一定時間が経過すると、何の操作も必要とせずメッセージが削除されます。逮捕された場合でも、時間経過によって自動的に削除されるため、証拠隠滅が可能なわけです。 ただし、この機能はデフォルトでは設定されておらず、自ら設定する必要があります。日本語化されていないことも影響してか、私の経験上、意外とトーク履歴が残っていることもあります。
テレグラムでは、サーバにトーク履歴が保存されません。エンドツーエンドの暗号化が施されており、送信者と受信者しかそのメッセージの暗号化を解除するキーを持たない仕組みになっています。つまり、スマートフォンなどのデバイスからトーク履歴が明らかにならなければ、別の場所からそのデータを取得することが不可能な仕組みなのです。
これらの機能が、テレグラムが違法な行為をしているグループや、しようとしている組織に好まれる理由です。実際、X(Twitter)などでは薬物や口座売買を呼びかけるアカウントが多数存在し、その多くはプロフィール欄にテレグラムのURLが記載されています。これにより、上記機能に守られた秘密裏のやり取りを行うことができるのです。
他にも同様のアプリは存在する
なお、このような機能を有しているメッセージアプリはテレグラムだけではありません。有名なものとして、シグナル(Signal)、ウィッカー(Wickr)、ワッツアップ(WhatsApp)なども同様の機能を備えています。
しかし、これらのアプリの安全性機能は、プライバシー保護の観点からは重要ですが、同時に犯罪に利用される可能性も高めています。法執行機関にとっては、こうしたアプリの存在が捜査の障害となる一方で、一般ユーザーにとってはプライバシーを守るための有効なツールともなっています。
まとめ
先の報道を見て、多くの弁護士は過去のウィニー事件を思い起こしたはずです。
包丁を作った人は、包丁を用いて人を殺してしまった事件の責任まで負わなければならないのか。この事件の動向には注目するべきです。
最後に、テレグラムをはじめ犯罪組織しか使っていないというわけではありません。しかし、一般のユーザーにとっては、こうしたアプリを使用する際には十分な注意が必要です。特に、見知らぬ人からの連絡や、違法な取引の誘いには絶対に応じないようにしましょう。テクノロジーは便利なツールですが、それを適切に、そして安全に使用する責任は私たち一人一人にあります。