「言い分を伝えたい」にストップを!アナザーストーリーと手段
こんにちは、弁護士の髙野です。
取調べに対して黙秘をアドバイスしていると、依頼者やその家族から必ずと言って良いほど「でも、こちらの言い分を伝えたほうが良くないですか?」という疑問を投げかけられます。この疑問はもっともです。今回は、捜査機関に言い分を伝えることの目的、そしてその方法についてお話ししたいと思います。
黙秘を解除するかをどのように判断しているか
まず、弁護士が取調べ対応の助言内容を決定する思考プロセスについてお話しましょう。
基本的な状態は黙秘です。そこから、話をすることで得られるメリットがあるのかを検討していきます。弁護士は黙秘を解除して供述するように助言する場合、そのメリットが黙秘を維持するよりも大きいと確信できなければなりません。
私たち弁護士はプロフェッショナルです。ですから、どうして黙秘を解除したのかを、依頼者やその関係者にきちんと説明できるように言語化できていなければなりません。残念ながら、そこまで考えずに安易に供述するよう助言をしてしまう弁護士も少なくありません。
アナザーストーリーを示さなければまずい状況か?
では、実際にどのような場合に言い分を捜査機関に伝えることが有効なのでしょうか。
典型的なケースは、常識的なストーリーでは勝てない状況のときです。例えば、職務質問を受けたところ、自分の運転する自分名義の車の中から違法な薬物が発見されたようなケースを考えてみましょう。常識的に考えれば、その人の名義でその人が普段使用する車の中にある物は、その人の所有物と判断されます。このような場合、黙秘しているだけだと、その常識的な判断で手続きが進んでしまう危険があります。
そうでないのであれば、別のストーリー(アナザーストーリー)を示さなければなりません。例えば、ついさっきまで乗っていた友人が落としていった可能性があるかもしれません。そのような場合には、その話を捜査機関に伝えておいたほうが良いでしょう。もしそうする場合には早いほうが良いです。後から言い出しても、苦し紛れの嘘だと言われてしまう危険が高いからです。
伝える手段は取調べで供述することしかないか?
しかし、ここで重要なのは、アナザーストーリーを伝える手段は必ずしも取調べでなくても良いということです。
私たちの目的は、アナザーストーリーを主張していることを捜査機関に伝え、その主張が捜査初期からなされていたことを形に残すことです。この目的が達成できるのであれば、取調べで供述するという方法である必要はないのです。
現状、取調べに弁護士が立ち会うことは出来ません。調書を作成する場面を見ることも出来ません。どのような質問に対してどのように答え、どのように書かれている調書に署名をしているのか、弁護士に隣に座ってもらって確認してもらいながら行うことはできないのです。取調べは最もコントロールが効かない空間なのです。
他に目的を達成できる手段があるのであれば、決して取調べで供述することを選択してはなりません。アナザーストーリーを形に残し伝えられればよいのですから、弁護士との接見の際に、そのアナザーストーリーを書面化してもらい持って帰ってもらいましょう。そしてその書面を弁護士から検察官へ提出してもらえばよいのです。
まとめ
このように、捜査機関に言い分を伝えることは、場合によっては必要になることがあります。しかし、その手段として安易に取調べでの供述を選択することは危険です。より安全な方法を選択することこそ、それをアドバイスできることが弁護士の重要な役割なのです。
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