逮捕された家族をすぐに釈放させる!弁護士が明かす"身柄解放"のポイント
こんにちは、弁護士の髙野です。 今回は刑事事件における弁護活動の最重要目標である、起訴前の身体拘束からの解放についてお話したいと思います。これは逮捕されてしまった人の家族からの法律相談の多くでお話する内容です。
逮捕された後の流れ
まず、逮捕された後の流れについて説明しましょう。逮捕による身体拘束は法律上72時間までしか認められていません。しかし、捜査機関はより長期の身体拘束である「勾留」を請求してきます。逮捕された人は通常、逮捕の翌日か翌々日に検察庁に送致され、担当検察官と面談します。検察官はそこで勾留の必要性を判断し、必要があると考えれば裁判官に勾留を請求します。
勾留請求された場合、被疑者は裁判所に連れて行かれ、今度は裁判官と面談します。裁判官が勾留の必要性を認めれば、勾留が決定されます。勾留が決定すると、検察官との面談日を1日目として10日間、身体拘束が継続します。この期間はさらに10日間延長することができます。
釈放のために弁護士が〇〇に働きかける
このような流れの中で、弁護士が働きかけるポイントは主に3つあります。
1つ目は、検察官に対して勾留請求しないよう働きかけることです。具体的には、勾留の要件を満たしていないことや身体拘束が相当でないことなどを書面にまとめて提出します。検察官がこれを受けて勾留請求をしなければ、被疑者は釈放されることになります。
ただし、検察官の判断には逮捕の種類が大きく影響します。通常逮捕の場合、警察はあらかじめ検察官と相談して逮捕していることが多いため、検察官が勾留を請求しないことは稀です。一方、現行犯逮捕の場合は、勾留の要件を満たしておらずその必要性がないと検察官自身が考える事案も少なくありません。適切な働きかけを行えば、勾留請求されないことも十分にあり得るのです。
逮捕の種類については別にnoteを書いていますので参考にして下さい。
2つ目は、勾留請求を受けた裁判官に対して勾留決定しないよう働きかけることです。これも書面で提出します。裁判官が勾留決定をしなければ(そして検察官の準抗告が認められなければ)、被疑者は釈放されます。
3つ目は、勾留決定が出た後の準抗告の申立てです。一度勾留決定が出ても、別の裁判官3人に再審査を求めることができます。これによって先の勾留決定が取り消されれば、その日のうちに釈放されることになります。
身体拘束からの早期解放を左右する事情と弁護士の活動内容
これらの活動を通じて早期の身体拘束からの解放を実現するためには、いくつかの重要な要素があります。
まず、できるだけ早く弁護士に依頼して活動を開始させることが極めて重要です。特に「裁判官に対する働きかけ」のタイミングを逃さないことが肝心です。準抗告は一度裁判官が認めた勾留を別の裁判官が覆すものなので、そのハードルは当初の勾留決定を阻止するよりも高くなります。裁判官に働きかけられるのは逮捕の翌日か翌々日(東京の場合はその翌日)までなので、それまでに弁護士に依頼し十分な準備をしてもらうことが重要です。
次に、勾留の要件を満たしていないことやその必要性がないことを説得的に裏付ける資料を集めることが極めて重要です。個人的には弁護士自身が作成する意見書の内容よりも、どのような資料を集められるかのほうが重要度は高いと感じています。
例えば、罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれがないことを示す資料としては、①被害者と面識がなく今後絶対に接触しないことを書いた本人の誓約書、②定職に就いていて逃亡が困難であることを裏付ける社員証や給与明細、名刺などが必要です。また、勾留が相当でないことを主張するための資料としては、③勾留されると重要な仕事上の予定を欠席し解雇されるリスクが高いことがわかる手帳の写しや上司の上申書、④身体拘束が続き仕事を失えば家族の生活が成り立たなくなることを書いた家族の上申書などが有効です。
これらの資料収集には家族の協力が不可欠です。弁護士の指示を受けて家族が探すことになるケースが多いため、早期の身体拘束からの解放には家族の協力も重要な要素となります。
勾留が決まってしまっても諦めない
勾留決定後も、諦めずに身体拘束からの解放を目指す活動が必要です。 その一つが被害者との示談交渉です。被害者と示談が成立すれば不起訴になる事案もあり、その場合、身体拘束を継続する理由がなくなります。したがって、準抗告が認められなかった場合は特に、被害者との示談交渉を早期に開始しまとめる努力が必要です。
示談が成立した場合、その合意書を検察官に提出します。検察官はこれを受けて当日被疑者を釈放することもありますが、これは検察官の任意によるものです。 そこで、検察官が自発的に釈放を急ぐよう、勾留取消請求という手段を用います。これは示談成立など、勾留決定時から大きく事情が変化したことを理由に、勾留を取り消すことを請求するものです。勾留取消請求は即日判断が出ないため、一見効果が薄いように思えますが、実はこれを請求しておくことで検察官が自発的に釈放する可能性が高まります。検察官は勾留取消が認められて裁判所から釈放を命じられるのを好まないため、勾留取消が認められる可能性が高い事案では、請求を受けた時点で自発的に釈放することが多いのです。この工夫による釈放タイミングの差は1日程度かもしれませんが、勾留されている人にとってこの1日は非常に大きな意味を持ちます。この1日の差で仕事を失い、その後の人生が大きく変わってしまう可能性もあるのです。
まとめ
以上、身体拘束からの解放についてお話ししました。 逮捕されている事案の場合、身体拘束からの解放は最重要の弁護活動です。この活動に精通している弁護士を、できるだけ早いタイミングで依頼することが、解放までの近道となります。逮捕された場合は、一刻も早く行動を起こすことが重要です。