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和解で不起訴となることは可能か?:不同意わいせつ及び不同意性交等の場合

こんにちは、弁護士の髙野です。 不同意わいせつや不同意性交等の罪で被疑者となってしまった場合、本人やその家族から「示談をしたら必ず不起訴になりますか?」という質問をよく受けます。相応の賠償金を支払うことになるわけですから、そのメリットを最大化したいと考えるのは当然です。弁護士としても、依頼者の利益を最大限に追求することが仕事です。今回は、不同意わいせつで示談をした場合の不起訴になる可能性について、詳しくお話ししていきたいと思います。

不同意わいせつ・不同意性交等

まず、2023年の刑法改正により、これまでの「強制わいせつ罪」「強制性交等罪」が「不同意わいせつ罪」「不同意性交等罪」に変更されました。この改正では、従来必要とされていた暴行・脅迫という要件が、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」という要件に変更されました。この変更により、より幅広い状況が罪に問われる可能性が出てきたと言えます。

不同意わいせつ罪等は非親告罪

次に重要な点として、これらの罪は現在非親告罪であることを理解する必要があります。かつては親告罪でしたが、2017年の改正により非親告罪となりました。親告罪とは、被害者による告訴がなければ検察官が起訴できない罪のことです。現在は法律上、被害者の告訴がなくても起訴が可能となっています。

検察官は被害者の意向を無視して起訴することはできない

しかし、実務上は検察官が被害者の意向を無視して起訴することはほとんどありません。これは、かつてこれらの罪が親告罪とされていた理由は、現在も変わりないからです。性犯罪の被害者は深く傷つき、刑事裁判に協力することで二次被害を受ける可能性があります。そのため、起訴するかどうかの判断において、検察官は被害者の意向を尊重せざるを得ません。極端な例ですが、被害者が「もう裁判には協力しない」と明言した場合、検察官は事実上起訴できなくなります。
このような背景から、不同意わいせつや不同意性交等の罪を犯してしまった人にとって、被害者との和解を成立させることは極めて重要な選択肢となります。公判請求を避け、前科がつくことを回避するためには、被害者との示談が大きな意味を持つのです。

和解により不同意わいせつの罪が不起訴となる可能性

では、実際に示談が成立した場合、不起訴になる可能性はどの程度あるのでしょうか。私の経験から言えば、不同意わいせつ罪の場合、被害者と和解が成立し、「被疑者を許した」という趣旨の示談書に署名をもらえた場合、不起訴となる可能性は非常に高いです。弁護士としては、依頼者が真に罪を犯してしまっている場合、このような内容の和解成立に全力を尽くすことになります。
なお、不同意わいせつより軽い罪と考えられている、各都道府県の条例違反である痴漢事件の場合も、和解が成立していれば不起訴になる可能性は非常に高いです。

和解により不同意性交等の罪が不起訴となる可能性

不同意性交等の罪の場合は、より慎重な対応が必要になります。それでも、「被疑者を許した」という趣旨の示談書が作成できれば、不起訴となる可能性は高いと言えます。さらに不起訴の可能性を高めるため、被害者の協力が得られるなら「裁判には絶対に出頭したくない」などの条項を入れることもあります。これにより、検察官が裁判の維持が困難だと判断し、不起訴にする可能性が高まります。
しかし、被害者が「賠償金は受け取るが『許す』という条項を入れることには納得できない。」と主張する場合もあります。このような場合、弁護士としては他の条件面でより被害者に有利な内容を提案し、何とかこの条項を入れてもらえないか交渉します。それでも難しい場合は、和解を成立させないか、あるいは可能性は下がりますがこのまま賠償金を支払い不起訴となる余地を残すかの選択を迫られることになります。 この場合、基本的には、賠償金を支払うことをお勧めします。なぜなら、賠償金を支払わない限り、不同意性交等の罪で不起訴(起訴猶予)となる可能性はほぼゼロだからです。また、ここで賠償金を払わなければ、被害者は民事訴訟を起こす可能性があります。そうなれば結局賠償金を払わなければならなくなりますし、起訴された後に民事で賠償金を支払っても不起訴にはなりません。したがって、不起訴の可能性を少しでも高めるためには、検察官が判断する時点で賠償を済ませておくほうが賢明と考えるからです。
私の経験では、単に賠償金を受け取っただけの場合、起訴される可能性のほうが高いと感じています。また、不同意性交等致傷(死亡の場合は当然)のような重い罪の場合、怪我の程度にもよりますが、和解できたとしても起訴される可能性は十分にあります。

まとめ

以上、不同意わいせつで示談をした場合の不起訴の可能性について詳しく説明しました。このような事態に直面した場合は、早急に経験豊富な弁護士に相談し、適切な対応を取ることが重要です。示談交渉や検察官とのやり取りなど、専門的な知識と経験が必要な場面が多々あるため、弁護士のサポートは不可欠です。

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