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荷物を受け取ったら逮捕された…コントロールドデリバリーの実態

こんにちは、弁護士の髙野です。
ある日、友だちに頼まれて自宅で宅配便を受け取った。中身を確認してみるとただの小麦粉の模様。すると突然警察がやってきて逮捕された——。嘘みたいなこんな状況、実は実際に起こりえるんです。今回は「コントロールドデリバリー」という捜査手法についてお話します。

薬物密輸事件の捜査の難しさ

薬物の密輸事件において、捜査機関が直面する大きな問題があります。それは、国外の発送者を摘発することが事実上ほぼ不可能だということです。そのため、受取人が「自分は勝手に受取人として名前を使われただけ」と主張した場合、国外にいる相手から供述を得ることが出来ないわけですから、共謀を立証することも困難です。
このような困難さを解決するための捜査手法の一つが「コントロールドデリバリー」です。例えば税関などで宅配の荷物の中に薬物が入っていることを発見しても、それをその時点で摘発せず、運送させ、配達されるところを監視し、受け取り役が受け取るところまで泳がせ一網打尽にする、という手法です。

コントロールドデリバリーの二つの種類

コントロールドデリバリーには二つの種類があります。
一つは、中の薬物等をそのままにして行う「ライブコントロールドデリバリー」。もう一つは、中身の薬物等を抜き取り代替物(小麦粉など)に置き換えて行う「クリーンコントロールドデリバリー」です。
薬物事件で数多く行われているのは後者のクリーンコントロールドデリバリーです。ライブコントロールドデリバリーの場合、万が一追跡を失敗したり、受け取った人物の確保に失敗すれば、違法薬物が社会に拡散してしまう危険があるためです。

クリーンコントロールドデリバリーでの逮捕を可能にする法律

クリーンコントロールドデリバリーでは荷物はまったく違法なものではありません。ですので本来その荷物を受け取ることは法律違反ではないわけです。ただ捜査機関にとって本来違法なものが入っていた荷物を受け取った人ですから、そのまま逃がしたくはない。そこでこの荷物を受け取ったことによる逮捕を可能としているのが、「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」(麻薬特例法)という法律です。

薬物犯罪を犯す意思をもって、規制薬物として交付を受け、又は取得した薬物その他の物品を輸入し、又は輸出した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する  

麻薬特例法8条

受け取った人物は麻薬特例法8条により、受け取ったその場で、その行動を監視していた警察官によって逮捕勾留されます。そして勾留満期日に、今度は覚醒剤取締法等、違法薬物の輸入罪で再逮捕されることとなるのです。

コントロールドデリバリーを支える技術

コントロールドデリバリーの際には、「ビーパー」と呼ばれる小型の電波発信機が利用されます。これを対象となる貨物に装着し、その所在を継続的に送信させることにより、貨物の移動を機械的に監視追跡できるようです。機種によっては単に所在地を送信するだけでなく、貨物周辺の会話を傍受したり、その周辺の景色を撮影して捜査機関に送信するものもあるようです。
また、私が担当した事件では、コントロールドデリバリーの際にドローンが利用されているケースもありました。配送される予定の場所にドローンを飛ばし、受け取りに来る人の動きを撮影しようとしていたのです。ただしその事件は海上保安庁なども関わっており、配送先も高い建物などがない場所でした。どの事件、どの場所でもドローンが使われているのかは不明です。

まとめ

このように、コントロールドデリバリーは、捜査機関が薬物密輸事件の立証の困難さを克服するために編み出した捜査手法です。しかしそれは同時に、友人に頼まれて何気なく荷物を受け取っただけの人が、突然逮捕されるというリスクも生み出しています。最近流行りの闇バイトのように、一見するとなんら違法ではないような仕事でも刑事事件に巻き込まれる危険はあります。自分とはまったく無関係の荷物を受け取ることには、十分な注意が必要です。特に不自然に高い報酬が約束されている場合には——。

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