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北千住散歩

初めてのバー。
上京してから、ではなく人生で初めてのバー。しかも一人。すごくハードルが高かったが、何となく少し格式が高そうなところに行きたかった。
最寄りから二駅のこの街は、ディープな飲み屋が多くあることで有名だからこの場所を選んだ。
この街にはよくくるが、川沿いの図書館にしか行かないが、図書館から駅を挟んで反対側が飲み屋街である。今夜初めて足を踏み入れた。
落ち着いていて、歴史があって、ザ・バーというところに行きたかった。Googleマップでバーと検索して、少し駅から離れている、かつ評価が高いお店を選んでみた。
店までの道は細い路地だがとても賑やかで、チャラそうなお姉さんやお兄さんが声をかけてくる。色気のある大人な女性が、お店から出てきてアイコスを吸っている。あとは、すごく狭くて渋い中華料理屋やおでん屋が並んでいて、スナックからカラオケでおっさんが熱唱してる声も漏れている。とっても賑やかな道である。その道を抜けると、一気に灯りが少なくなり、高架下に辿り着く。聞こえるのは電車の大きな音のみ。賑やかではあるが、さっきとは違う。その高架下のすぐ近くに警察署があり、隣あたりにそのバーはある。入り口は狭くマジックミラーが貼っているようなドアで中は見えない。勇気を振り絞って入店。中は薄暗くオレンジという感じ。ずらっとグラスやお酒が並んでいる。シーンとしていた。40代くらいの綺麗な女性が1人、カウンターに座っているだけだった。その女性も先ほど入店したばかりのようで、注文をしている。マスターは50代にみえる、真っ白のジャケットに黒の蝶ネクタイ、髪は昔の演歌歌手みたいなオールバック。とってもにこやかだけれども落ち着いた雰囲気。女性が今日行ってきた音楽会の話をしている。あとは競馬。会話の間がどうにも渋くって、趣を感じた。少し経って僕の前に来てくれたマスターは、注文を尋ねてくれた。おすすめをお願いすると、好みを聞かれた。甘めか辛めか、度数は強いか弱いか。甘め強めと答えた。するとマスターはカウンターに戻り、ワイングラスとウイスキーを持ってきてくれた。トマーティン12年です。ストレートで飲んでください。
ほんの少し口に含み、それをじっくり噛んでから、喉に通してください。

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