メンヘラホイホイ-51 結婚願望
その清楚な雰囲気な女性の名前はユミ。
ユミは俺より2個年上で細身で色白で一途な子だった。
ユミが俺に連絡先を教えてくれたが、例のおばさんはそれを見て「一体何のために仕事をしてるの?」と言って来た。
「あなたに手伝ってくれと言われて入社したけど、仕事はちゃんとやってますよね?目障りなら退職しましょうか?」
おばさんは無言になっていたが、後から責任者に色々と悪い様に俺の話をしていたのは知っている。いや、そのおばさんらしい解釈をしてるから分かりやすいんだ。化けの皮はもうめくれてんだ。
それはそうと、ユミはとにかく積極的だった。何処でもかまわずやりたがる。しかし、俺はなんか上手くできない。全く出さない。理由は精神的な部分にあった。
ユミは前の職場でノルマが厳しく、鬱を患っていた。そして5年間無職だそうだ。実家で生活をしていて、お父さんは働いているらしいがお母さんはずっと主婦。
女は働いてはいけないが口癖らしく、お父さんはたった1人で働いて今はもう身体がボロボロになっているらしいが、それでもお母さんとユミはお父さんだけの収入で生活しているらしい。
話を聞いていてお父さんが可哀想でたまらなかった。何故ならユミはもう回復して仕事が無いを言い訳に働いていないだけなんだから。お母さんは論外だな。
ユミはお酒が好きでよく一緒に飲みに行った。
いつも行くのは駅前の居酒屋で、店員さんとも顔見知りになった。
ある時ユミは言った。
ユミ「もう期限切れのポイントカードがあるんですけど、あと2つ貯まれば全部貯まるんです。お願いですから今日ポイントを付けてもらえませんか?」
期限は3か月前に切れていた。
俺はそれはやめなさい。商売でやっているんだ。
俺が毎回飲み代出しているんだから、君は何も損はしないんだから。
するとユミは起こり始めた。
ユミ「いつも〇〇君が出してくれるから負担を減らしてあげたいの」
俺「だったら期限切れのポイントカードの掟破りみたいな事はせず働けばいい。甘えてばかりで奪える物は全て奪っていないで、自分でその対価の為に努力しなよ」
ユミは泣いた。
その1週間後にユミと俺はまた同じ居酒屋に足を運んだ。道中、俺はスーパードライの500ミリを半ダース買った。
ユミは私にくれるの?と言ったが、俺は作り笑顔でどうかな?とはぐらかした。
居酒屋に到着し、俺は店員さんにそれを丸ごと渡した。先日は結局彼女のワガママを飲んでくれたから、そのお礼だった。ポイントが貯まったので2000円の割引を受けられるが、俺は胸糞悪かった。商売してる人に失礼だ。
俺は持ってきたビールを
「コレ、彼女からのプレゼントです。こないだポイントを無理言って付けてもらったお礼だそうです。」
ユミは、
「こんな物しかお渡しできずすみませーん」
と言った。
店員さんはそのお礼に、刺身の盛り合わせを大皿で振る舞ってくれた。サービスと称して。
一枚も二枚もお店の人が上を行っていた。
俺は涙が出そうになった。
トイレに立った俺は後ろから店員さんに声をかけられた。
「コレって彼女さんじゃなくてお兄さんが用意してくれたんですよね?なんとなくわかりますよ。本当にスタッフ一同感謝してます。」
と、小声で言われた。
俺はもう小さくなっちまった。
良い意味で化け物揃いの居酒屋だ。素敵なお店だ。
そして席に戻るとユミは大喜びしていた。
ユミ「スーパードライのプレゼントがいくらでしょ?でも、お刺身の盛り合わせはいくらだから・・・お刺身の方が高いね!コレを〇〇君は狙ってたんだね!」
俺は愕然とした。
考え方がゴミだ。
ユミは俺と結婚したいと言ってくれていたが、それを聞いて論外だと思ってしまった。
いや、俺は金勘定でお店にプレゼントを買った訳じゃない。心の話だ。
期限切れのポイントカードにポイントを付け、更に割引き券として使用許可を出してくれたその心に対してのお礼なんだ。
それが彼女には全く理解できていなかった。
それを説明したら泣き始めた。
呆れた。
しばらく会うのやめよーな。
そう言って帰宅した。
ユミは電車を乗り継いで俺の家の前で待ち伏せしていた。職場の最寄り駅でも。
見つからないようにした。
そしてある時に待ち伏せをされた流れで、近所の公園に行き、別れ話をした。ずっとユミは嫌だとゴネていた。
ある時、自宅の最寄り駅前の改札でユミが待ち伏せしていた。
ユミ「お疲れ様!」
俺「あ?おう。」
そのまま俺は自宅へ帰った。
人は金じゃないよ。
ただ他人の心を踏みにじってまで、自分の金銭的な負担を減らそうという考え方をしてしまう、彼女の考え方は
俺には許せなかった。
最後にメッセージを1通送った。
君を育ててくれたお父さんの負担を減らす救世主になれるのは、きっとユミだよ。
返事は無かった。
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