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管理不全土地とのたたかい〜Vol.3 相続放棄された非上場株式のゆくえ

Xさんは、ここまで元宅地建物取引業者の代表取締役Yの足取りを追ってきたが、仮に、相続人不存在のまま、清算人の活動によっても元業者の株式を買い受ける者が見つからなかった場合、元業者の株式は誰のものになるのだろうか。

民法の規定

民法では、

(残余財産の国庫への帰属)
第959条 前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第九百五十六条第二項の規定を準用する。

民法

と規定し、相続人、受遺者、特別縁故者のないときは、最終的には被相続人の財産は国庫に帰属するという。
代表取締役Yの相続財産清算人である女性弁護士は、既に清算業務を終了して辞任しているという。

それでは、Yの元業者の株式は、国庫に帰属しているのだろうか。実務書をあたったところ、

『Q&A 相続人不存在・不在者 財産管理の手引』共編/野々山哲郎(弁護士)、仲隆(弁護士)、浦岡由美子(弁護士)より

との記載が存在し、元業者の株式が国庫に引き渡され、財務局が管理している可能性があることがわかった。

財務局への照会

そこで、代表取締役Yの最後の住所地である東京都江東区を管轄する関東財務局に問い合わせたところ、

  1. 一般論として、民法の規定により、非上場株式が国有に帰することはあり得る。

  2. 国有に帰した非上場株式については、株主総会を招集して代表取締役を選任、登記するなど、適切な管理を行っている。

  3. 他方で、個人情報保護の関係上、国がいかなる銘柄の非上場株式を所有しているかは公開していない。

  4. 本件で問題の会社が、10年以上も登記がされず放置されているということであれば、国の対応としては考えられず、聞いたことがない。この点から、問題の会社を国が所有しているかどうかについては、察してほしい。

とのことがわかった。

家庭裁判所での事件記録閲覧

もし、元業者の株式が国庫に帰属していれば、財務局への問合せにより株主総会の開催状況などを知ることができると思ったところだったが、あてが外れてしまった。
他に元業者の株主を知る方法としては、代表取締役Yに係る相続財産清算人の選任申立事件の事件記録を東京家庭裁判所で閲覧する方法が考えられるが、そのためには、その閲覧についての法律上の利害関係を裁判所に説明しなければならない。

Xさんは行政書士に相談したが、行政書士は、(裁判所については行政書士の専門外だと断りながらも、)会社に対して権利を主張する債権者が、直接、その会社の株主について何らかの請求を行う根拠となる法令上の規定は存在しないので、株主を特定するために事件記録を閲覧したいという申請は認められないのではないかと助言した。

やはり、特別代理人、一時取締役の選任申立によるほかはないのか——Xさんの悩みは尽きない。






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