少年よ
少年よ
そっと大人を盗み見ていたあの頃
誰もが器用に目を逸らした
少年よ
身体いっぱいに何かを伝えようとしていた君
その命のメッセージに
誰もが気がつかないフリをした
なぜ?
あなたの必死の問いかけに
誰もが耳を傾けなかった
少年よ
理不尽な世間の欲求に身体と心を引き裂かれながら君は闘った
全身全霊でもがきながら
言葉という武器を持てなかった君に浴びせられる正論のシャワーよ
冷たい視線よ
当たり障りのなさよ
少年よ
いつか君は何かを諦めた
何かを手放した
握りしめた拳からこぼれ落ちてゆく砂
やがて訪れる静けさ
少年よ
君が置いてきた何かを私は今になって拾い集めている
もう遅い
あの頃の君の目が私を刺すように射抜いていく
少年よ
それでも私は拾い続ける
もう遅い
あの頃の君の声が背中に響く
ああ、少年よ
あの日、君の拳からこぼれ落ちた砂を、私は今日も拾い続けていく
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