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ちょっくらシルクロード横断してきます〜中東・アジア旅行記ep19〜

第三章 シリア・アレッポ〜ハマ
三十路センチメンタルジャーニー
ep19,マルクスとイスラーム 2006/11

 この日は金曜日でイスラームの安息日にあたるため、ほとんどのお店はシャッターを下ろしていた。たまたま、宿の近くにはキリスト教徒が多く住むアルメニア人地区があり、シリアには多くのキリスト教徒が住んでいて開いているお店もあった。この地区では女性はヘジャブやチャドルなどをもちろん身につけていない。シリアは9割がイスラームではあるが、こうしたアルメニア正教の他、東方正教会やコプト教なども1割ほど住んでいる。

 イスラームの場合、同じ一神教であるユダヤ教やキリスト教のように神が6日間で世界を創り、7日目を安息日としたという形での土曜日が安息日とは異なる。ちなみに日曜日は祈りの日だ。金曜日設定の由来は、イスラームの創設者であるムハンマドが大経済都市であったメッカから脱出した曜日にあたる。

 なぜムハンマドはメッカから出なければならなかったかというと、もともと商人であるムハンマドが大天使ガブリエルからの啓示を受け覚醒することから始まる。ムハンマドはガブリエルを通して神から言葉を預かる。そして預言者となったムハンマドが人々に訴えたのが「格差是正」。どういうことかと言うと、当時のメッカは砂漠の交易路を請け負ったキャラバン隊、そう私達がイメージするいわゆる”月の砂漠のラクダ”の行商人の一大基地でもあった。

 ちなみになぜ月の砂漠、つまり夜間の移動なのかと言うと、昼は暑すぎること、そして夜空に瞬く星の位置が彼らのコンパスとなったからである。砂漠はとても乾燥しているため、本当に日本では考えられないような星が夜の空を覆う。また、そこに入ってくる月光は、夜間でも本を読むのに苦労しないほど明るい。このような手法を用いてロジスティックレーンを砂漠に築いた商人たちは、この後の16世紀に起こる大航海時代、つまり大規模な海上シーレーンが建設されるまで、莫大な富と権力を集め続ける。

 話は戻るが、もちろんそのメッカにいる多くのビジネスマンやCEOたち、つまり商人たちは、一大交易路で莫大な富を築いていた。富が蓄積されれば、そこには当然貧富の差が出来上がる。ちなみに彼らは多神教を信奉する人たち。

 そこでムハンマドが富めるものは貧しい人々に与えよという、富の再分配論(イスラームの重要な五行の一つ”喜捨”となる)を唱えたわけだから、莫大な富を有するCEOたちの批判は免れない。そして、商人たちから度々命を狙われたりするほどの迫害を受ける日々が始まる。結果的にこのままメッカで訴えてもだめだ、外部で自分に賛成する勢力を集め、力をつけて再びメッカに戻ろうとこのメッカを脱出し、メディナに拠点を移したのである。

 こうしてみるとマルクスが訴えた階級闘争は、西暦600年代にはすでに起こっていたと考えると面白い。そして、今日の世界や日本でも行き過ぎた資本主義に対する格差是正がキーワードになっていることを考えると、やはり歴史は繰り返すと言わざる得ないのか。人類の永遠のテーマなのか。そうなると、今後大きな争いが起きるのか起きないのか・・・

 なんてそんな小難しい話は置いといて、とりあえず今日は安息日なので、昨日に買っておいた、アレッポを代表するオリーブ石鹸であるアレッポ石鹸で、のんびり手洗い洗濯をすることに。

キャラバン ロジスティックルート

『月の砂漠』まさかのUAバージョン

読んでくれた人へ
 今後、定期的にシルクロード横断日記や行きたいけど行けないという悶々とした気持ちで書いた、脳内妄想旅行の計画などをアップする予定です。お暇なときにでも、そちらも読んでやってください。ありがとうございました。スキをしてくれると僕のテンションが上がります。ファローしてくれたらうれション状態です。よろしくお願いします。人生の無駄遣い万歳^_^

HPやってます。いろいろな旅行関連記事を書いているのでよかったら寄ってみてください(^^)


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