完璧なマンションは存在しない
マンション放浪記
10年前の話になるが、マンション購入を検討していた。消費税が上がる直前で、都心のマンション供給も増えていた時期だった。
ある日、近所に新しくできるマンションのモデルルームの案内チラシが目に止まった。モデルルーム見学に行くとクオカードがもらえるというので、どんなマンションか見てみたいし、興味本位で行ってみることにした。
それを皮切りに、都心のマンションをいくつか見学したが、購入には至らなかった。いいなと思うマンションは2つあったが、1つは外廊下であることが気になった。外向きの廊下に、各部屋のドアが並んでいる構造である。
もう1つのマンションは、見学した6階のベランダの向かいに、会社の看板があった。さらに2階上の8階であればベランダの向こうは空であるが、この2部屋の値段が200~300万違うのである。それが妥当かどうか迷ううちに、どちらのマンションも完売してしまった。
この後、都心のマンションはかなり値上がりしており、私が狙っていたマンションはどちらも新築分譲時より1000万円ほど値上がりしている。とりあえず買っておいて、値上がりしたら売るというのもありだったと思う。
完璧な既製品はないと肝に銘じる
マンションはかなり高い買い物だ。それゆえに、ちょっと気に入らないところがあると「このマンションに〇千万円出すのも…」と思ってしまう。
だが、マンションは「既製品」である。内装はある程度自分の想い通りに変えられるかもしれないが、立地、外観、建物の作り、隣人などを100%完璧な状態にそろえることは難しい。
あとは「この家に一生住む」とまで思う必要はない。
私の友人夫婦は結婚してすぐに都心のタワマンの1LDKの部屋を買った。そのとき、他人事ながら
「今後、子供ができたら1LDKじゃきつくないのかな?」
と思ったが、彼らは1年半でそのマンションを売り、賃貸物件に引っ越した。都心のマンション価格の推移を考えると、このときにかなり利益が出たはずである。さらに数年後に一戸建てを購入したが、一生そこに住むつもりはないらしい。この家が欲しい人がいたら売っても貸してもいいと言う。
一生住むつもりでも、人生何が起こるかわからない。値下がりしそうにない都心のマンションであれば、
「自分が住まなくなったら売ってもいいし、貸してもいい」
くらいの気持ちで、買ってもよかったと思う。
マンションを買う決意のために足りなかったモノ
マンションを買う決意のために足りなかったのは、入念な検討である。都心のマンションの相場や価格の推移、専門家による今後の予想をチェックすべきであった。これは基本の「キ」であろう。
ここを押さえていれば、自分が買おうとしているマンションがお買い得かどうかを判断できる。
あとは、マンション購入に肯定的な友人の存在である。本人が購入する気がないとしても、
「マンションを買うのはバカバカしい。絶対に賃貸が得だって」
とか言うような人ばかりが周囲にいたら、そりゃ買う気も萎える。自分の考えがどうであれ、他人のやることに口出ししない人といる方がいい。
私の場合、マンション購入を諦めた数年後に、マンション購入や資産運用に積極的な人たちと友達になった。
「大きな買い物は目をつぶって決めろ!」
などという大胆なアドバイスをくれる人もいた。なんともタイミングのずれた、皮肉な話である。もし、私がマンション購入を「前向きに、真剣に」検討していれば、マンション購入のデメリットではなく、メリットを語り合えるような友人ができただろうし、前向きな検討材料となる情報が耳に入っていたはずだ。
中途半端な気持ちで、なおかつマイナスポイントばかり心配していては大きな買い物はできないのである。