気があろうがなかろうが、受け身の男性とは関わってはならない
皇居ランでのなんでもない出会い
私は「なんちゃって皇居ランナー」で、ランニングを通して知り合った友人が何人かいる。皇居ランナーは「一度一緒に走ったらお友達」という雰囲気でFacebookでつながるのだが、その後はほとんど会う機会がない人もたくさんいる。
知り合って間もなく関西地方に引っ越した小田さん(仮名)もそんなラン友の一人だが、とてもフレンドリーな人で、東京出張のたびに
「一緒に皇居を走りませんか?」
と声をかけてくれる。
今年も5月半ばに声をかけてくれたので、ひさしぶりに皇居ランをやることにした。
小田さんが作ってくれたFacebookのイベントページでは、5人の参加者がいたが、小田さん以外は全員知らない人だった。当日、待ち合わせ場所のランステに行くと、小田さんから「少し遅れます」というメッセージが届いていた。また、5人のうち2人の女性は早めに着いたらしく、すでに走りに行っていた。もう1人の男性、後藤さん(仮名)という人が
「ランステで待っています」
というメッセージを書き込んでいたので、私はこの後藤さんを探すことにした。ロビーには数人の男性がいたが、ひとり、スマホを見ながら誰かを待っている様子の男性がいた。そこで、
「後藤さんですか?」
と話しかけたところ、そのとおりであった。
小田さんとの関係性や、ランニング経験(タイム、大会の話など)をしているうちにすぐに小田さんが到着したので、3人で走りに行くことにした。走りながら、野球や競馬の話で盛り上がり、楽しく走ることができた。
でも、それだけ。私は、美容室でも整体院でも、野球と競馬の話で盛り上がるので、それを特別なこととは思わなかった。
特別な出会いのように語られても…
ランニングのあと、小田さんの他のラン仲間も合流し、飲みに行った。私以外のメンバーは仲が良いようだが、私も疎外感を感じることなく、楽しく談笑していた。
そこでの会話で知ったのだが、一緒に走った後藤さんはアラフィフで、結婚歴はないらしい。そこからどういう流れか、彼が私を指して
「彼女はさっき、ランステで、後藤さんですか?と話しかけてくれたんだ。こういう自然な出会いがいいよね」
「競馬とか野球とか、めちゃめちゃ気が合うんだ」
と言い出した。
そこで、隣にいた女性が
「彼女は独身なの?(だったら後藤さんといいじゃん、みたいなニュアンス)」
と小田さんに聞いたのだが、小田さんは
「実は俺も知らない(笑)」
と言い、私は無言でふっと笑ってやった。それで察したのか、それ以上、何も言われず、別の話題に移った。同席した女性陣がタチの悪いお節介な方でなくてよかった。
私がランステで話しかけたのは、後藤さんに惚れたからではない。小田さんが来るまでに一緒に走るメンバーと合流しておいた方がいいだろうと思ったからである。野球や競馬の話は、初対面の美容師さんとでも盛り上がる話題で、何も特別なことではない。
なにより、私は出会いを求めてやってきたわけではない。後藤さんについていえば、ランニング中の会話で不快なことはなく、口臭が気になったくらいだ(これはかなり重要だが)。こちらは他のラン友と同じように
「今後、また会うかもしれないし、会わないかもしれない」
くらいに思っているのに、みんなの前で「特別な出会い」のように語られてもちょっと困る。
飲み会の代金は後藤さんがまとめてカードで払うことになり、私は後藤さんにPaypayで支払った。ここで後藤さんは私のPaypayアカウントを知ったわけだが、彼は早速これを悪用した。Paypay上で「おだっちのグループ」という小田さん、後藤さん、私の3人グループを作ったのだ。このときは6人で飲んでいたのに、なぜかこの3人だけなのである。小田さんは普段は関西にいるし、この3人で集まることなど今後あるかどうかわからないのに、何のためのグループなのだろう。後日、このグループからは脱退しておいた(苦笑)。
お店の前で解散するとき、後藤さんから
「Facebookで友達申請してね!」
と言われた。
「申請してね」とは言っているが、私は勝手に「向こうから申請が来て、それを承認すればいいのだろう」と思っていた。だが、申請は来ないし、べつに友達になりたいとも思えなかったので、スルーしておいた。
受け身の人と関わるリスク
飲み会で後藤さんの話を聞いていて、特に男女関係についてとことん受け身なんだろうな、と思う発言があった。
「今度、婚活イベントに行くことになったんだけど、学生時代以来、そういう独身男女が集まるイベントに行ったことがないからどうすればいいかアドバイスちょうだい」
→アラフィフになるまで自分から動かなかったということだな。待っていても出会いはないぞ。
「ラン友に好きな女性がいるのだけど、彼女はシングルマザーでお子さんのことでいろいろあるみたいなので難しそう」
→この話し方から想像するに、相手からアプローチがないのに自分からはアタックはせず、相手の状況のせいでうまくいかないと自分を納得させたな。あるいは、彼女の状況を知って躊躇したのだとしたら、大変なことを一緒に乗り越えようという気持ちが不足している。
私についても、「彼女が話しかけてくれたんだ」と語るように、「彼女から俺に言い寄って来たんだ」というポーズをとりたいのであろう。Facebookも相手から申請されたテイにしたいのであろう。こんな人に友達申請したら、
「彼女が友達申請してくれたんだ!」
と騒いでめんどくさいことになりそうだ。いいね!を押しただけで、
「彼女は俺に気があるんだ!」
と騒ぐ恐れだってある。私は実際にそういう発言をする人に会ったことがある。
若い頃、私は男を見る目がなかったので、自分から受け身の男に惚れて付き合ったことがある。途中で疲弊して逃げるように別れたが、受け身の男がモテるはずがないのでヤツに次のチャンスはなく、私に執着した。別れ話がしたくて電話をかけたら電話に出ないくせに、
「あんずから電話があったー」
と友達に謎の自慢をしていた。
やがて電話どころか口もきかなくなった頃、大学のキャンパスで、ヤツやその友人たちとばったり会ったことがあった。私は無言で通り過ぎたのだが、背後で
「あんずと目が合ったー」
という声がして驚愕した。大学生にもなって、目が合ったから俺を好き、と思っているならヤバすぎる。でも、受け身の男は本当に自分から動けないので、こういうちょっとした相手のアクションにも勝手に望みを見出してしまうのだ。
言い過ぎかもしれないが、受け身の人は、楽して得したい人である。一緒に何かを乗り越えるには適していないから、パートナーにしてはいけない。
また、恋愛だけでなく、ただの同性、異性の友達であっても、受け身の人とはなるべく関わらない方がいい。特に、自分から誘うのは嫌だけど、誘ってほしくて「誘い待ち」の態度をとる受け身の人には要注意だ。せっかくこちらから誘っても、あれこれ計画しても、気に入らないことがあると、
「あなたが誘うから来てやったのに楽しくなかった」
みたいなことを平気で言う(苦笑)。
男性でも女性でも、恋愛でも友達でも、
「私があなたを好きだから」
「私があなたと一緒にどこどこに行きたいな」
というように、主語が「私」のメッセージを出せる人と仲良くしたいものである。