スイッチ on with coffee
「♫ 大阪府に 入ります」
カーナビのアナウンスで、コンソールに置いてある水筒に手を伸ばす。
中には、先ほど淹れたばかりのお気に入りのコーヒーが入っている。
ゴクリと一口。
これで、仕事モードのスイッチが入る。
4ヶ月ぶりだ。
60歳で定年退職して、1年間は「専業主夫」をさせてもらった。61歳になる年に、縁あって大学の守衛職員として勤務することになった。65歳で年金が満額支給される月まで働こうと思っていた。
足掛け4年はあっというまに過ぎた。小学校の教育現場しか知らなかった私にとって、業務内容はもちろん、個性的な同僚の方々との出会いなどいろいろな意味で貴重な経験をさせてもらった。
予定通り65歳の誕生月の前月に退職した。人手不足で後ろ髪を引かれる思いはあったが、自分の人生だからと割り切って、気ままな「かりゆし65歳」(拙稿10/17)の道へ進む。
8月、9月、10月の3ヶ月間「翌日の勤務を考えなくていい生活」をさせてもらった。
そして、11月から、再び大学の守衛職員として復帰することになった。(細かい経緯は別の機会に)
以前のような24時間勤務ではない。日勤の施設管理業務である。失業手当の関係もあり、回数も少ない。
それでも、何も仕事をしない日々とは違う。
自分の中で、ちょっぴりだが「キリッ」とした感覚が生まれているのを感じる。
自宅が、奈良と大阪の県境付近にあり、出発してすぐに阪奈道路に入る。
5分も走らないうちに、冒頭のカーナビのアナウンスとなるわけだ。
熱いコーヒーを1口含んでスイッチON。
このルーティーンは24時間勤務の守衛をしていた頃と変わらない。
そのコーヒーを、職場に到着するまでの約30分の間に、何度か口にするが、全部は飲み切らない。そのまま、車中に置いたまま勤務にあたる。
勤務が終わり、再び車に戻る。
まずは、「お疲れさんのコーヒータイム」となる。
保温効果がある水筒とはいえ、かなり冷めている。
でも、その生ぬるい感じは嫌いではない。
仕事でそれなりに疲れた体にちょうどいい優しさなのだ。
「ああ、いいなあ。この感じ」
一人ごちでつぶやいてみる。
冷めたコーヒーが、仕事モードOFFを知らせてくれた。
「さあ、安全運転で帰るとしよう。今日は、何で飲もうかな」
気持ちは、早くも「お家居酒屋」にモード変換だ。
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