【ライブ感想】Ave Mujica 3rd LIVE「Veritas」
(セットリスト等については下記記事を参照している)
光を求めて彷徨った2nd LIVEの愛知公演から早3ヶ月、あの猛暑も二度とごめんだと誓ったはずなのに少しの懐かしさを感じるような季節になってきた。あの頃続いていたデジタルリリースがついに一段落してミニアルバム「ELEMENTS」としてリリースされた。そこには前回のライブの映像が早くも収録されており、今回を控えて改めて確認することが出来た。彼女たちの苦悩が綴られて、それでも光を信じて歩き続けた物語から続いた今回のマスカレード。凛とした富士の空そして水に、どのような「真実」が映し出されるのか…
会場に入るとBGMと共に感じる「いつもの空気」、ここからマスカレードが始まる。そこにこれまでと異なる点を見出すならば単独ライブでは初の屋外ということだろうか。僅かとはいえ空が見えるのは新鮮な気分。
開演を告げるのは2ndから引き続き「素晴らしき世界 でも どこにもない場所」が担う。イントロの音圧があっという間にライブの世界に叩き込んでくれる、このメリハリが快い。
続くは"Symbol I : △"なのだが、ここで野外公演の強みを見せつけてくる。まさかと思っていたがステージからぼうと炎が噴き上がる!筆者がいたのはS席の中では後ろの列、全体としては概ねステージ側1/3程度といったところだろうか。そんな場所でも熱気が直に伝わってくる。
激しい旋律と熱気で一気に会場内のボルテージを高めたかと思ったらそこに続くのはジャジーな"Symbol II : 🜁"となる。今回はペンライトやサイリウムの使用については禁止とされ、物販で発売されている無線制御対応の公式バングルライトのみが使用できる「光り物」となる。
観客席の光の色や強さが統一されているのはなかなか見慣れない光景ではあったが、公演毎にはっきりした世界観を創り上げてセットリストや幕間を構成する「マスカレード」にはこれまで無かったのが不思議なくらいのツールに感じた。
今回の幕間の朗読は1st,2ndから繋がる新しい世界を創り上げた人形達が、光を求めて彷徨う物語。今回はこれまであった舞台のスクリーンが無くどのように表現するのかと入場時から気になっていたが、プロジェクションマッピングと新しい試みとなったコンテンポラリーダンスによる表現となった。
人形達の苦悩や葛藤を顕現させるようなダンス、これには驚かされた…
あたかもこんな光を見出すことすらままならない自分達を作り上げた神への呪詛のような、あるいは不出来な自分達を罵るような「神さま、バカ」でライブは第二幕が始まる。「ふたつの月 ~Deep Into The Forest~」もそこに続き、縋り付いて導きを求めるような気迫を感じた。「暗黒天国」では一転して明るいようなリズムを刻むが、続く"Choir ‘S’ Choir"ではガラリと空気が変わり、そしてそのまま2回目の朗読パートに入る。
このあとの展開を思わせるような水をテーマにした朗読、そこから続くのはもちろん"Symbol III : ▽"となる。ステージには2人きり、普段は他のメンバーが居るはずの位置を周りながら歌が綴られていく。前回はライブの締めくくりを飾ったこの曲が終わった後もマスカレードは続き、ピアノソロの美しい音色に誘われて残るメンバーも再びステージに上ってくる。
そこから一気に激しい曲が続き"Mas?uerade Rhapsody Re?uest"から「堕天」となるとここまでの空気も全てヘドバンで吹き飛んでしまったような気分になる。テンションが一気に上ったところで満を持して"Ave Mujica"の出番とだが、なんでもこの曲でだけバングルライトの制御が無かったそうな…記憶にある限りA席ではそのことに気付いている人はあまりおらず、演奏中である興奮もあってか色もそのままだった人が多いように感じた(そもそもかく言う筆者がこういう点には限りなく鈍感なので、あくまでも印象として受け取っていただければ)。
続く朗読はまるで「光」のような景色、めいめいの夢見た美しい景色を語るもの。これまでの苦悩や困難を全て抱くような暖かい様子…しかしその中の「開けてはいけない扉」とは一体何なのだろうか、目を逸らせない魔力を持つような謎の扉とは。
マスカレードも終盤に入り、ここから怒涛の展開となる。その先鞭をつけるのは"Angles"そして「黒のバースデイ」という生誕を示唆するような2曲。破壊の果ての再生、そして生み出された世界で光を求める…その物語の手引きに新たに現れるは"Symbol IV - 🜃"、7月に公開されたものの演奏は初披露の曲ではないか。そしてこの舞台には火、風、水、そしてついに土が揃う。
光を求めてきた物語、結局すべてを満たす大いなる光は見つからなかった。しかし人形達はついに見つけた、微かな光を。頼りないような小さなものだったが、なにやら魅せられるような光。その光はあらゆるものの境界を消していく、自分も他人も、人間も人形も。あらゆるものや概念の調和を成し遂げ、ひとつの存在に昇華させていく光…
人形達の劇を見に来ていたつもりのオーディエンス達、しかし舞台から見てみようじゃないか。ここまでの間、彼等はその存在を示すためのライトをほとんど全ての時間制御されて演出を担い続けてきた。これでは果たしてどちらが人形劇なのか。
「本当の僕たち」を示すラストナンバー"Ether"でこのマスカレードも幕を閉じる。ステージと観客席、自分と他人、あらゆる境界が溶けていき一つの存在にまとまっていく…このシーンのために、なるほど他の光が存在するのは赦されなかったわけだ。一つの塊になったかのような会場で、いつまでも続くかのように余韻が響き続けた……
次回ライブは今年の暮にもう控えている「Adventus」、やはりラテン語で「到来・来臨」を意味する言葉であり、もっぱらキリストの来臨を待ち望む期間を意味する。あるいは審判に備える時期とも。
いよいよ迫ってくるものといえばTVアニメだろう、次回のライブそしてそのアニメで彼女たちの物語はどのように紡がれていくのだろうか。救いの物語なのか裁きの物語なのか、あるいは…
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