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『グラスバードは還らない』※ネタバレ注意※
今作はシリーズ3作目ということで、Instagramに載せた過去作の投稿を先に載せておきます。
↓↓『ジェリーフィッシュは凍らない』↓↓
↓↓『ブルーローズは眠らない』↓↓
※以降『グラスバードは還らない』の真相に触れています。閲覧はくれぐれもお気をつけください。
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『ジェリーフィッシュは凍らない』『ブルーローズは眠らない』に続くシリーズ3作目!
今作もこれまでと同様、2パート構成+インタールドで構成されています。
リアルタイムで進行中の事件を描いたグラスバード章と、マリア達の捜査中に巻き起こる爆破テロを描いたタワー章。どちらもこれまでにないほどスリリングな展開となっています。
💎グラスバード章 透過率可変型ガラスの実態
グラスバード章では、透過率可変型ガラスという特殊なガラスの迷宮で透明になる度に1人ずつ殺害されてゆき、見えない犯人に怯える招待客たち。
第1章で描かれていたサンプルが使用されたガラスの迷宮と言うわけですね。
そしてこの極限状態の中で視点人物のセシリアは何か別の緊張感を生み出していますが、それはイアンの透過率可変型ガラスは改竄されたもので、実は液晶パネルだったという真相には驚きです。つまり第1章で描かれていたサンプルはフェイクで、実際には新技術の理論があまりにも非現実的で失敗だったというわけです。
アドバイザーとしてプロジェクトに介入し、3年前の爆発事故の原因となった頭でっかちなイアンの理論を、安全・簡便かつ機能はそのままに改竄するという恋人に対する裏切りが露見するのをセシリアは特に恐れたわけですね。
セシリアが液晶パネルの研究をしている事はサラッと明かされていましたが、なかなかに意表を突くオチでした。
👤見えない犯人の正体
そして見えない犯人の正体ですが、件の透過率可変型ガラスとの引き合いに光学迷彩布という成功例が出されているところが鮮やかだと思います。
・p34ヒューの「ブランケット」
・p282「透明な粘土のような塊」
・p234セシリアが殺される直前の「何も無い空間に赤いもの」
などの発言から犯人は透明マントのようなものを身につけているという事はある程度察しの良い方は気づくことが出来たのかなと思います。
ブランケットや粘土が光学迷彩布に繋がる瞬間は気持ちいいですが、あまりにも架空のテクノロジー過ぎますね笑
ほんとにあったらいいけど。
🔷『硝子鳥』
さて、本書のメイントリックは『硝子鳥』の正体が生きた人間だったというなかなかにショッキングなもの。
いわゆる人間を鳥に見せかける叙述トリックですが、
チャックの日記ではむしろ『硝子鳥』が人間であることを伏せなければならないので、明らかに人間ではありえない容姿の記述(羽毛・くちばしなど)をするのは分かるのですが…
『硝子鳥』を初見のセシリアの視点描写で一目見て「鳥?」と表現しているのは若干無理矢理感が否めません
アンフェアではないと思いますが、『硝子鳥』の実 態は迷宮内で犯人不在の謎を支えている大きなトリックなので真相が明かされた後の気持ち悪さはやや残ります。
🏢タワーでの謎
そしてタワー章での犯人の侵入・脱出が不可能な謎。
まずグラスバード章で巻き起こっている事件はタワー内ではなく実は別の場所。そしてエルヤ以外の残された『硝子鳥』の死体が別地点で殺されたセシリア達と事件ごとすり変えられているのはお見事すぎます。
解決編では読んでいてかなり複雑で理解に時間はかかるのですが!笑
マリアが操作資料である希少生物の遺体写真を見て自分がタワー内で見た生物たちとの相違に気づき、『硝子鳥』の正体および身代わりトリックに辿り着いたあの瞬間は何度読み返してもゾワゾワしますし、そこから繰り広げられるスピーディーな展開には目を見張ります。
やるせない結末
いやぁ、しっかし犯人多いなあー!!笑
というわけで全体的に物語が錯綜しているように思いますが、事件背景とプロローグとの繋がりを見ればドラマチックで切なく、最終的には全員が退場してしまったやるせない結末になっているのがなんとも言えない余韻を残します。
個人的に前2作を超えることはないですが壮大なトリックやドラマの質を鑑みると心に残る良作だと感じました😭
何度だっていいます、私は市川憂人作品がだいすきだ!!
Instagramにもその他ミステリ作品載せているのでよければ覗いてください📖´-