読書記録「つけびの村 噂が5人を殺したのか?」高橋ユキ
この本は、前回の読書記録のノンフィクションの時に、いろいろ調べていたら、オススメで挙がっていた本です。
図書館で貸し出しになっていて、予約していました。
この本って、著者の方がnoteにアップしたものが書籍化されたそうですね。すごいぞnote❗
この事件は2013年に山口県の限界集落で起こった5人の殺害と2軒の放火。そして、犯人とされた男の家のガラス窓に掲げられた張り紙「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」が異様だったのを覚えています。
12人しかいない集落のうち5人が殺されるという…。当初から、この事件は田舎にありがちな村八分とか閉鎖的なコミュニティから起きたトラブルなどが、原因とされました。しかし、この著者は粘り強い取材でこの村独自の…不気味さに迫っています。
中学を出て、東京で仕事して1人で生活していたときは、近くの飲み屋家族とも仲よくし、彼女がいたり別れたり、仕事も順調でいわゆる普通のオジサンだったオトコ。
しかし、両親から体調が悪いから戻ってきてと言われ、故郷に帰ったあたりから歯車が狂いだしました。
最初こそ、村人たちと交流を持とうとしたようだが、都会人ぶって…お礼もいわない…カッコつけて…などと陰口を叩かれ(言われていたのは間違いないが本人の話全てが本当のことかどうかは謎…)だんだんと孤立を深めていったようですね。
両親も亡くなり仕事はせず(東京での貯金を切り崩していた)兄弟や親戚とも付き合いはなかった。
もどってきたのが四十代のときで事件のときは63才ですから、二十年近く誰ともまともな交流はなかったことになりますもんね。
でも、裁判の担当ではない、別の精神科医の見立てによればもう東京にいるときから、何かしらの精神疾患を抱えていたのではないかということでしたね。
推定ではあるけど、「妄想性障害」の典型的な発症パターンではなく、「統合失調症」に移行してるのでは、という見解でした。
結局裁判では弁護人は妄想性障害として無実を主張し、本人は犯行自体が警察の捏造だと信じて疑わない。著者と面会したり手紙のやりとりした内容も支離滅裂で、要領を得ない。
結局、責任能力ありってことで、判決は出てしまったんだけど、筆者は何かモヤモヤしたものを感じていたんです。
誰もが事件当初「Uターンしてきた村人が、他の村人たちに村八分にされた挙げ句、恨みを抱いて犯行声明を掲げたのちに起こした事件」(あとがきより)と思っていたと。犯行声明とは例の「つけびして…」の貼り紙のことです。
しかし、取材してみるとこの貼り紙は事件よりはるか前に起こった別の放火事件のことを書いたものだとわかりました。そんな事件を当たり前のように話す村人たち。「うわさ」は本当にあったのか?妄想をこじらせたのは間違いないとしても、そのもとになるようなイジメや嫌がらせはなかったのか?
…そこに切り込んだわけですよ。不謹慎ながら興味深く、一気読みしました。
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