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『こゝろの計画』(詩)

あのときわたしはまだ処女だった

もう三十路を過ぎて七年が経っていたけど

誰も知らないこの秘密

貴方だけ知っている

絶望に飼い慣らされ

誰ひとり振り返りもしないこんなわたしを

気紛れな貴方だけが

抱き寄せてくれた

殺してよ、お頼みしたら

いけないよ、泣いて貴方は首を振った

血も涙もないわたしは

驚いて貴方の涙を指で辿った

震える肩をわたしはつかみ

目を伏せ

舌を絡ませ合い崩れ落ちた

わたし、三十七歳
処女を終える

手帳に記して貴方の顔写真を挟んだ

最初で最後の貴方はいない

明るい冗談も聞こえない

わたしは人生を問うていない

悲しすぎて、淋しすぎて、虚しすぎて

壊れたこゝろの行き場はなく

酒をあおってひとり呑む

どこに行ったの、どこに行ったの

いま、四十五歳

誰もわたしの名を呼ばない

震える貴方の肩もなく

もいちど死んで詫びてみたい

#詩

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