![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/165687272/rectangle_large_type_2_9850f8985f595d383d10aa98d426e745.png?width=1200)
『こゝろの計画』(詩)
あのときわたしはまだ処女だった
もう三十路を過ぎて七年が経っていたけど
誰も知らないこの秘密
貴方だけ知っている
絶望に飼い慣らされ
誰ひとり振り返りもしないこんなわたしを
気紛れな貴方だけが
抱き寄せてくれた
殺してよ、お頼みしたら
いけないよ、泣いて貴方は首を振った
血も涙もないわたしは
驚いて貴方の涙を指で辿った
震える肩をわたしはつかみ
目を伏せ
舌を絡ませ合い崩れ落ちた
わたし、三十七歳
処女を終える
手帳に記して貴方の顔写真を挟んだ
最初で最後の貴方はいない
明るい冗談も聞こえない
わたしは人生を問うていない
悲しすぎて、淋しすぎて、虚しすぎて
壊れたこゝろの行き場はなく
酒をあおってひとり呑む
どこに行ったの、どこに行ったの
いま、四十五歳
誰もわたしの名を呼ばない
震える貴方の肩もなく
もいちど死んで詫びてみたい