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緩和ケア[19]

1年前の話。
1クールの治療が始まる時、夫が休みを取り病院まで車で送ってくれた。
その時に主治医から私と夫に改めて治療方針など説明をしてくれた。
最後に「緩和ケアはどうしますか」と聞かれ、私と夫「‥‥‥」無言。
緩和ケアって、治療する術が無くなった時、つまり末期の患者さんが行くところという認識しかなかった。私も夫も。
私は涙目の無言で首を横に振る。夫はゆっくり言葉を選びながら
「いや‥今はまだ‥その時ではないので‥
これから治療を頑張るので‥」
とお断りを入れてくれた。
主治医は「よろしいのですか?わかりました。」
と特に感情のない事務的な話し方でこの話を終えた。

(ステージ4はやっぱり末期なんだな。)
私はこのまま家に帰りたくなった。やはり治療ではなく緩和ケアに入った方がいいんだろうな。もう考えるのも面倒だわ。
その後に主治医が説明をする、オピオイドという医療麻薬の話などをぼんやりと聞いていた。

それから3週間後。
その時に同室になった、同年代の肺癌の女性の元に緩和ケアの医師と看護師さんが回診にきた。
(え!とても元気そうなのに緩和ケアなの!そんなに癌が進行しているの?!)
と驚いた。ついつい、その医師との会話を盗み聞きしてしまう。(ごめんなさい)

ー盗み聞きをした結果ー
私はとんだ早とちりをしていた事が判明した。
緩和ケア🟰末期 ではなかった。
ドラマや映画ではそのはずなんだけど‥
現代の医療では末期かどうかではなく「癌による身体の痛みと心の痛みを緩和させる」ところだったようです。

医療麻薬(オピオイド)や鎮痛剤を処方してくれる。
そして患者の辛い気持ちをうんうん、と聞いてくれる。
入院患者には映画のDVDやきれいな写真集など貸出をしてくれる。
治療が始まった頃は心はとても不安定。だからこそ緩和ケアが必要だったんだ!

わー!早とちりしないで、ちゃんと聞くべきだった。なんだか恥ずかしいわ。
そしてすぐ、看護師さんに緩和ケアをお願いをした。

あの時の同室の方、本当にありがとうございます!
お陰で緩和ケアの先生や看護師さんにたくさん相談する事ができました。
オピオイドの量が多くなり眠ってばかりになったり
免疫の薬の副作用で関節が痛んだり
なぜか辛くて涙が止まらなくなったり
そんなたくさんの困り事を、専門家に相談できて、適切な回答をもらい
私の辛い気持ちを聞いてもらえた。
そして外来治療になった今も、月に一度の点滴中に必ず回診をしてくれる。

安心できる場所や人、それはひとつでも、1人でも多い方がいい。
癌治療という高く見える壁を少しでも低くする為に。





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