#8 異国でカメラのパーツを無くした話
さて、引き続きダブリン生活1週目のお話。
私は写真を撮ることが趣味でカメラを持参していた。とくに最初は目に映るものすべてが新鮮で、そしておそらくだんだん慣れてきてしまうだろうということが予測できていたので、ファーストウィークは基本的に学校が始まるまでの時間カメラを持って街をうろうろしていた。
火曜日、カメラを持って訪れたのはトリニティカレッジ。相変わらず寒かったものの、天気には恵まれ絶好の観光日和だった。
お目当てはもちろん、Long roomと呼ばれる図書館。
そしてその図書館、なんとチケットが18.5ユーロもする!!びっくらぽん!!!!!
まあそんなに何度も行くような場所でもないので、まあいいかと購入。
そもそもどこでチケット買うのかもよく知らなかったしチケット制なのもしらなかったけど建物の目の前でオンラインでチケット買った。
ケルンの書の展示されているエリアは撮影ができなかったけれども、ロングルームの中はフラッシュをたかなければ撮影ができた。
なんか見たことがあるな…?と思ったんだが、今思えばそれは、何年か前に見たCandida Höferの写真だったのだと思う。なんかいろいろと記憶と経験がつながっておもしろい。
10:30入場のチケットを購入し、入場直後は人がかなり多かったものの、11:00くらいになるとだいぶ減ってきて写真も幾分撮りやすくなった。
iPhoneではもちろん、持参していたフィルムカメラでじっくりと写真を撮り、入っているフィルムすべてを撮りきったところで図書館を後にする。
学校に向かうついでにカメラ屋にフィルムを渡そうと思っていたところ、私は気がついてしまったのだ。
フィルムの巻き戻しハンドルがないことに。
私は激しく動転した。
いつ落とした?いつからない?
途中で寄ったコーヒーショップまで引き返し、床を捜索させてもらうも見つからず。このような小さなパーツを街中で見つけるのは絶望的に思えた。
とりあえず現像をお願いするつもりのカメラ屋に行き、見てもらうが、その場では修理できないとのこと。
店主の方が近くのカメラ修理屋を教えてくれたので、とりあえずそのお店にメールを送ってみたが、しばらくして帰ってきた回答は下記の通り。
おわかりだろうか、この絶望感。突き放された感。
ああここが東京だったら。アキバか新宿の中古カメラやにでも行き、ジャンクで同じ機体を拾ってくるか、修理してもらえるところも多数あっただろう。
しかしここはダブリン。都会とはいえお世辞にもフィルムカメラをたくさん扱っている店があるとも思えない。
絶望した気持ちのまま学校へ向かう。1週目でこんなのってないぜ。
授業中も考えるのはカメラのことばかり(しろよ集中を)。
休み時間にダブリンに他にカメラを修理できるところがないだろうかとグーグル先生にお聞きする。
するとシティセンターに修理屋があるというので、ウェブサイトから問い合わせてみると、こんどはほんの20分ほどでめちゃくちゃ心強い返事が返ってきた。
なんと心強いことか。しかも平日は夜7時までやっているという。
授業が終わった後の17時過ぎに向かってもいいか尋ねたところ、OKよという返事をもらったので早速行ってみることに。
カメラを持ち込んだのはCamera Repairというそのまんまの名前のお店で、場所は繁華街ど真ん中のビルの中の一室。階段で4階まで上がって呼び鈴を鳴らした。
店主が出迎えてくれ、さっそくカメラをみてもらった。
リワインダーを無くした旨、中の巻き上がってない撮影済みフイルムを安全に取り出したいという旨を拙い英語で伝える。
いわく、同じパーツはないが似たようなパーツを作れるとのことで、数日後に見積もりを送ってくれるとのこと。
異国の地でのこと、とんでもない不安に駆られていたところだったので、もしお金がけっこうかかったとしても、とても心強かった。
カメラを預けて帰路に着く。
道中、午前中に通った道をもう一度確認してみる。注意深く、足元を見ながら歩いてみる。まあどうせ見つかんないんだろうな〜的なテンションで。
そしたら、あった。いや、マジで。
大きさにしておよそ1.5センチメートルかそこらの黒くて丸くて小さきパーツ、スーパーの軒先に転がっていた。
いや、あるんかい。
預けたばっかりのところで、運がいいのか悪いのか。
一度通ったはずなのに、目がいいのか悪いのか。
頭が悪いのだけは確かだった。
自分のものかどうか確信は持てなかったが(ほかにNikon F3の同パーツを同日に落とした人がいたら本当にごめんなんだが)、あきらかに同パーツであったためそれを回収。
多分次の日とかだったら側溝に落ちて消え去っていたと思うので普通に運は良かったのかもしれない、ギリ。
翌日リワインダーが見つかった旨を連絡すると、診てあげるから持ってきなとの優しい回答。先の記事でも書いたように木金は風邪っぴきで使い物にならなかったので、翌週に再度訪問した。
まずは中のフイルムを取り出し、それからパーツを着けてもらった。ようやくカメラが生き返り、嬉しすぎてハワハワしていると、「これまでで一番ハッピーな日だろ〜?」と店主。頷きまくる私。
お代は?と尋ねると、それはいいからグーグルマップにレビューつけて!とのこと。なんて優しいんだ…。
次壊れた時は必ずこのお店に持ってきます!と伝え、ホクホクで店舗を後にした。
けっきょく、中に入っていたフイルムは何かの拍子に感光してしまっていたようで、現像に出した後写真は一枚も残っていなかった。高い金払って入ったロングルームの写真ももちろん一枚も残っていなかった。
ジーザスだったが、人の親切心に触れた経験でもあった。
でもまあとりあえず、もうこういう経験は2度としたくはないですね。ワッッハハ。