究極の選択
大吾が暴れて、パソコンはなんとか無事で、ほっとした。でも、息子からしたら、相棒と言ってもいいほどの、携帯と、Switchは奪われたままだった。
取り戻すべく大吾にラインを送った。
「本人も反省してるから返して貰っていいかな」
大吾からは返信が、「ボコボコにされていいなら取りに来いと伝えろ。」だった。
よーく考えてみても、ボコボコに殴られるような事をした覚えはないが、確かに約束を破るのはよくない事だし、謝りに行こうと息子に言ったけれど、「嫌やし、なんでこんな事されないかんかわからん。人の部屋勝手に荒らして、こっちこそ許さん。」「大体、なんで勝手に入ってくるん?不法侵入やん。」と、理不尽な攻撃が納得いかない様子だった。
そうなるよねー。同じ様なキャラだし、拗れるのはわかっていた。それでも、携帯が手元にない事の辛さに数日後息子から大吾の家に行くから着いてきてと言われた。
2人で、大吾の住むマンションまで、歩いて行った。
マンションが近づくと、息子が「やっぱ無理」と引き返そうとする。それをなんとかなだめて、大吾の家に到着しインターフォンを押した。
一回鳴らすが、出ず。二回目鳴らしても出ず。。
緊張からか、ヘナヘナヘナと、息子の力が抜けた。
腰の力が抜ける人を見たのが、その時が初めてだった。親子なのに対面するのにこんなに緊張していたんだと思うと、悲しくなった。
帰ろうと言うと、いつもの息子に戻って、明るく振る舞っていた。腰の抜けた息子とのギャップが痛たまらなくなった。
大吾に謝りに行ったけど、居なかった事をLINEで伝えた。「なんで1人で来なかったのか?あいつとは親子の縁を切る。勘当する。」と返事があった。何を言っても今は無駄だ。長年の夫婦生活で学んだ。
次の日息子とビックカメラに行った。新しい携帯を契約した。甘いかもしれないしれど、親から勘当と言われた子供の気持ちは、計り知れない。
片方の親が甘やかすしかない。それも間違った認識ということは後々痛い程気付かされるが、新しい携帯を手に入れた事で、片方の親をなくした事を忘れたようだった。
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