初めての執筆
双子のために、週3回勤務日勤、深夜勤、準夜勤を繰り返す中、看護部の方から、ある看護雑誌の執筆を依頼された。
この勤務を続けていると、中には嫌味を言ってくるスタッフもいた。文句を言われないように他のスタッフに迷惑をかけないように、人一倍努力していた。
そんな中での依頼で、正直書けるのか不安はあったが、こんな勤務体制でも両立する事ができる事を証明したくて受け入れることにした。
依頼内容は小児のある検査のプレパレーションについてだった。プレパレーションとは「子どもが病気や入院によって引き起こされる様々な混乱に対し、準備や配慮をすることによって悪影響を和らげ、子どもや親の対処能力を引き出すこと」であり、子どもの権利を守るための大切な援助の事をいう。
子供を持つ看護師ならではの視点も必要であろうと依頼を引き受けた。
独身の時に学会発表は経験していたので、書く事については不安ではなかった。問題はどうやって週3回勤務の中で書き上げるかだった。
私は、昔から仕事をプライベートに持ち込まないようにしている。全て病院内で終わらせたい。頭の中で構想は、練ったとしても家では書かない。当面仕事に行った時の空き時間と、仕事後の1時間で書き上げることに決めた。
看護雑誌を書く時は必ず共同執筆者として上席者の名前が入る。今回は、副師長と、教育担当師長の名前が上がった。共同執筆者と言っても、土台作りは下っ端の仕事、少ない時間を利用しながら、土台を書き上げていく。
土台を書き上げると今度は、2人から添削が入る。書いていることの根拠だったり、事実関係等細かいチェックが入る。根拠を示すために、文献も読み根拠を示す。書き直してはチェックを受けを繰り返し仕上げていった。
そうして出来上がった原稿に、今度は校閲が入る。
こうやって雑誌の記事は作られていく。
雑誌が発売される前に出版社から、最終版の原稿が送られてくる。そして僅かながら執筆料も送られてきた。初めての看護雑誌の執筆は、大変だったけれど、子育て中でも自己研鑽できる事が出来て学会モチベーションの向上につながった。
この事がきっかけで、その後も学会発表や、執筆を行う事ができた。自分の名前を検索すると自分の功績が出てくるようになったのは、嬉しい限りだ。