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シンデレラ卒業

別居婚を始めて、自閉症の息子を1人で育てなければならなくなった。
ルーチンの、隔週日曜日の温泉だけは大吾が続けてくれていたが、それ以外は自分が面倒を見る事になる。

それまでも、当たり前のように子供達のお世話と、仕事に追われてきた。たまの息抜きの飲み会も12時までのシンデレラ。少し時間をオーバーして、家から閉め出されたり、ドアの隙間から細粒スプレーや、お湯をかけられたり不自由な生活をしてきた。

この不自由さを解消するべく、福祉サービスを最大限活かす事にした。毎日放課後デイサービスに行き、月に7日間お泊まりに行く。たった7日間でも、自分の息抜きも出来るし、他の子とゆっくり過ごせる。何より、息子自体が福祉サービスを利用することが大好きだった。

息子の泊まりに合わせて、職場や、友達との飲み会に行っても時間を気にせずに飲めた。しかし、そうなったところで、案外飲み会もない。

そこで、いつ誘っても付き合ってくれたのが、全身真っ黒革ジャンにスリムジーンズ、ドクターマーチン、シルバーアクセじゃらじゃらのシングルママ友だった。
息子君が、大吾の店で万引きしてボコボコにされたにも関わらず飲む方が大好きな彼女は付き合ってくれた。

話は全く合わなかったが、子育てから離れて、軽く飲む感じを味合わせてくれた。そこには感謝しているけれど、それ以外で会うことはなかった。

シンデレラは無事に卒業したが、シンママとしては新米で、いつも縛られていた生活から、自由を得ても、案外持て余してしまうものだなと思った。

それを打破するお店が近所に出来たのは、大分後のことだった。

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