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【学年通信】 車椅子バスケットボール 〜チャンスの神様

 数年前、車いすバスケットボールを、少しだけ体験した。車いすを使用しているが、あくまでもスポーツなので競技自体は楽しい。しかし、それがきわめて過酷なスポーツであることも体験して分かった

大阪と仙台の国内強豪チームから講師としていらした二人の選手は、自分が車いすの生活になったいきさつや、この競技を始めるきっかけなどを話され、さっそく一対一でゲームをやってみせてくださった。その様子は、想像していた以上に激しく、ぶつかり合い、時に、車いすがひっくり返ることもあった

「起こしてくれたりする手助けは無用」と釘をさされていたので、私たちはハラハラしながら、また、申し訳ない気持ちで、選手が自力で車いすを起こし、車いすに再び乗ってプレーを再開するまでを見守った

「あなた達もバスケットボールをした時に転ぶことがあるでしょう。そのとき、誰かが起こしてくれる場合もあるでしょうが、たいていは自分で立ち上がるでしょう。障碍にもよりますが、私たち選手にとっては、競技中、自分で立ち上がることは『普通のこと』なのです」と一方の選手が私たちに教えてくれた。選手たちの、競技に取り組む並々ならぬプライドを感じると共に、『普通』について考えさせられた体験だった

講座の最後には、指導者の大阪の選手から地元に伝わる「チャンスの神様」という話をうかがった。チャンスの神様は、髪が長くボサボサで、とても汚い身なりをしている。その神様が、向こうから「チャンス、チャンス」と言いながら、その人めがけて「乙女走り」で走ってくるのだそうだ。想像してみるとちょっと怖い

大切なのはその時である。その時、走ってきた神様をむんずと掴む者こそが、チャンスを得るのだそうである。逃げたり、汚いからと躊躇しているとチャンスは永遠に失われる。これは、「ああだこうだと理由をつけて何もしないのではなく、まず行動せよ」「困難な中にこそチャンスは潜んでいる」ということを伝える寓話であろう

人によって目指すものは違っていても、目標に至るチャンスを得るには、何らかの行動によるしかない。黙っていても何も始まらない。

(2021年9月)

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