「#既判力の客観的範囲」を統一的に理解する
「#既判力の客観的範囲」に関する日本の通説判例が論理的に統一的解釈できていないと気付かれた方は、拙稿をご覧ください(「#新訴訟物理論」や「#争点効」を持ち出すのではなく、「#旧訴訟物理論」のなかで統一的に解釈するのが論理的である)。
(拙稿。「アンリ モチュルスキイ Henri MOTULSKY「民事事件における既判事項の権威の一層明確な客観的範囲の画定について Pour une délimitation plus précise de l'aotorié de la chose jugée en matière civile」司法研修所論集第102号1999-1,P128「あとがきに代えて」訳者大津卓也。高森八四郎先生古希記念論文集「法律行為論の諸相と展開、P383「所有は目に見えない、最判平成9、3、14は紛争を解決したか」)。
拙稿をお読みいただければ、「#物権変動の意思主義理論」と「#既判力理論」が密接不可分の関係にあることが分るでしょう。
「所有権確認の訴え」という訴訟がある。所有権は「目に見えない」抽象的な概念であるから、これを直接立証することはできない。現実に現象として目に見える所有権取得原因事実を立証して所有権の存在を推定するしか立証の方法はない(フランス民法1350条)。訴えの審理の対象は現実に現象としてある所有権取得原因事実の有無である。そしてこの点の判決があれば、既判力が生ずるが、蒸し返しを許さないのは、前訴で審理の対象となった所有権取得原因事実についてだけであり、審理の対象となっていなかった他の所有権取得原因事実で後訴を提起しても、前訴を蒸し返したことにならない。
売買契約の締結という事実により、その反映(Réflexion)として物事の本質Ľessentiel)である所有権の移転が当然に発生する。物事の本質は、心で見ないと「目に見えない」。サンテグジュペリ「星の王子さま」「On ne voit bien qu'avec le cœur, Ľessentiel est invisible pour les yeux)。
物権変動の意思主義理論を正しく理解したい。特定物の売買契約が締結されると、特定物の所有権は売主から買主に当然移転する。現実に現象としてある所有権移転原因事実と所有権移転は不即不離であり、決して分離独立することはあり得ない(意思主義理論の創設者ポティエ、フランス民法1350条以下)。意思主義では、所有権移転原因事実と分離独立して、日本の通説、判例のように、「目に見えない」抽象的な概念である所有権のみのやりとりを許すことはあり得ない。抽象的な概念が空中を行き来するのは論理学的に稚拙である。ポティエが創設したフランス民法の意思主義理論は本来深い思索から生み出された優れた理論であることに早く気付くべきである。日本の通説、判例はこのような高度の理論を台無しにしてしまった。
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