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【読書記録】長沼毅『考えすぎる脳、楽をしたい遺伝子』【動物は卵子の乗り物】

どうにも、頭で考えてなかなか行動を起こせない。
動くことは、変化することは、怖い。
人間である以上、仕方の無い部分はあると思います。

 知性を進化させてきた5万年の歴史で、私たちの脳は、同時に致命的とも言える進化をしてしまいました。
 私たちの脳は、「楽をする」ことを忘れてしまったのです。
(中略)
 他の動物はそんなことはありません。眠くなったら寝ます。疲れたら休みます。腹が減れば食べます。体の欲求に忠実に生きているのです。人間と他の動物との違いは、「脳」にあります。人間は、先天的に体の欲求に背いてしまう脳のトラブルを抱えているのです。

「はじめに」より。


私たちは本能ではなく、脳で考え行動することに重きを置きすぎているのかもしれません。
それが「生きづらさ」の原因でもあるように思います。


印象に残った部分を引用します。

 しかし、自分から好き好んで自分を辛い状況に追い込む生物は、人間だけであるようです。

p.12

 人間の脳は進化の過程で、様々な遺伝子が誤用され、転用され、流用される中で偶然生まれたものですから、不都合がいっぱいあるのです。言わば、「色んな遺伝子の寄せ集め」で作られたものです。
 そういう意味では、脳だけに限らず、人間の体は不都合ばかりだと言えます。
 たとえば、人間の体の何が一番おかしいかというと、頭が1.3キロの脳を持ってしまい、これが重すぎるということです。四足歩行だったらまだいいものを、二足で立ってしまったがために、こんな重いものを体のてっぺんに載せることになって、首や腰がおかしくなるのです。
「元々体の作りからしておかしいのだから、少しでも楽しませんか」というのが、私が言いたいことの趣旨です。

p.16

「人付き合いに興味を持てない。自分は心が冷たい人間なのではないか」と悩む人もいると聞きます。
 しかし、それはオキシトシンの分泌量や受容体の数のせいかもしれません。それは遺伝子によって先天的に決まるもので、ベースの部分は人によって様々であり、それは個性の一つでしょう。人付き合いというものに興味を惹かれないなら、そういう体を持って生まれただけのことで、気に病むことはないのです。

p.22

 人間界でも、ストレスに強い人と弱い人がいます。
「耐性」という言葉があります。ストレスなどの物理要因に対する抵抗性のことです。携帯電話が防水仕様であれば、水につけても壊れることはありません。これは水に対する耐性がある、と言えます。(中略)
「βエンドルフィンを受け取る受容体が多い」という遺伝子的な性質を持っていると、その人はストレスがかかるほど強い幸せを感じます。脳内麻薬は、一度その出し方を覚えると、脳はその回路をつながりとして残すので、次からはさらに多くの脳内麻薬が出るようになります。その人は、高いストレス環境下に置かれていながら、逆にどんどん多幸感を感じてしまう脳を持っているということになるのです。

p.25~26

 たとえば、人間は「白目」を手に入れることで、相手の視線がどこに向いているかがわかるようになりました。これを「アイ・ポインティング」と言います。この特徴は哺乳類では人間だけで、誰が誰を見ているか、視線がお互いにわかるようになったのです。

p.39

 個体によって違う強い部分と弱い部分があるということ。これを人間以外の生物はよくわかっています。動物は、その持って生まれた体の特徴をありのままに受け入れ、向いていることをし、向いていないことはしないように、できるだけ楽をしようとしています。
 もし、気候が自分の体には寒すぎたり、乾燥しすぎたりしていれば住居を移すし、自分の体を食おうとする外敵が多い場所であれば、群れを形成してみんなで守ろうとします。それが生き残るための条件だからです。
 しかし、いまの人間は、そんなに素直に生きることができません。
 本来であれば、人間も自分に向いていること、向いていないことをもとに、楽でストレスのない人生を選べるはずです。(中略)
 そこで邪魔をしてくるのが、「脳」です。大脳新皮質というワルモノが妙な意識を持ってしまっているがために、本当は楽な人生を過ごせばよいものの、なぜか楽ではない、普通の状態から逸脱する方向に向かって行くことがあります。

p.61~62

 そもそも体外的な評価を気にするなんて、そんなのは日本の狭い社会だからできるのです。
 たとえば、アフリカのどこかの民族の中に放り出されたときに、自分の何をアピールしようとするでしょうか。自分が得意なもの、できるものは何だったかとか、そんなようなことしか考えないはずです。
 外国人の中にドンと置かれたら、人からの見た目やら、体裁やら、役割やら、そんな脳が生み出すものなんて一つも思い浮かびません。

p.74~75

 動物が諦めるのは大抵、腹が減ったとか、ねぐらに帰ろうといった別の理由です。しかし、人間は諦めるのに脳が働いて「理屈」をつけます。やり続けるときにはシンプルに「やらなくっちゃ」なのに、諦めるときは100も200も言い訳を考えるのです。

p.107

 自分のいいイメージを信じて、それが表われるように行動すれば、「自信」が手に入ります。他人から見たとき、自分がいい状態で可視化されるようにすれば、それが周りから反射して返ってくる、周りにも認められる、ということです。

p.117~118

 世界にはたくさんの格言があります。何か自分が戸惑っているときに、格言を一つ読むだけで、スッキリとすることがある。これは言わば、過去の偉人たちが脳のバグを修正するための作業、「デバッグ」を行った結果できあがったものです。
 人間が人間である限り、脳のバグから逃れることはできませんが、そのためのルールは、先人たちがたくさん残して、今に伝えてくれているのです。

p.155


現代を生きる私たちは、脳に支配されすぎているのかもしれません。
遺伝子を優先して、あるがままに受け入れる姿勢も大切だと思いました。


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