アンダーヘアについて考察してみよう
タイトルのとおりである。
アンダーヘアは要るのか要らぬのか、について考察してみよう。
これは私にとって十代半ば頃からの長年の疑問であった。
アンダーヘア、要るのか要らぬのか……いかに一人で煩悶を重ね、繰り返し考えても一向に答が出ぬことにシビレを切らせた私は、ある日、とうとう友達に尋ねてみた。
「アンダーヘアというのは、要る? 要らん?」
高校生の時のことである。
その時、一緒に下校していた友人二人は揃って眉間にシワを寄せた。私からの問に考えを巡らせたからではなく、
「またいきなり何を言い出すかと思ったら」
という怪訝顔である。
「そんなん……あってええんちゃうの?」
と友人Hは言った。
「無かったら、子供みたいじゃない?」
と、友人M。
二人は不思議そうに私を見た。だって、と私は食い下がった。
「だってさ、昔の絵画やと、裸の女の人のアンダーヘアって描いてなくない? アングルにしてもゴヤにしてもさ。それはなんで? 無いのが理想、てことちゃうの?」
奇しくも帰路は美術館前に差し掛かった所であった。
友人Hは言った。
「……それは描くのがめんどくさいとかちゃうの?」
……描くのがめんどくさいから描かない、などということがあるのだろうか。頭髪は描けるのに!?
友人Mは言った。
「そういう規制があったとか……?」
じゃあダビデ像はどうなのだ? あれってアンダーヘアも表現してあるのでは……?
結局、この時は明確な答どころか、何らかの進展に繫がるようなヒントも見出だせなかった。友人二人は、「あるのが当たり前」という認識のようで、それ以上深く私の疑問に付き合ってくれることはなかった。
あって当たり前。
そうなのだ。彼女たちの言う通りなのだ。神様がそのようにお作りになったのだから。必要だから存在するのだ。
しかし。と、私はまだ腑に落ちないでいた。
女性用のセクシーな下着類。ああいうものの中には、布面積が非常に小さいものや、スケスケのものなどがあるようだが、そういうセクシーな、際どい下着を身にまとう際、どのようにヘアとの折り合いをつけるのだろう? 「ある」状態では、あの面積内に収めるのは無理があるのではないか? あの面積内に収める技みたいなものを大人の女性は全員心得ているのだろうか? それとも、収まりきらずにコンニチハしていても良いものなのか。いやいや、さすがにそれはないと思われる。そんな有様、想像するまでもなく百年の恋も冷めそうではないか。カタログやファッション雑誌でだって、そんな状態、見たことない! どの写真も、「毛? 何それ」と言わんばかりの涼しい顔で、「一本のミス」もなく写っているが、あの美しい写真のパンツの中は一体どうなっているのか!!
私の疑問は晴れるどころか深まる一方であった。
美しいランジェリーを着こなすことを考えると、アンダーヘアは無用の長物な気がする。パンツの中の辺りの脱毛も盛んになってきていることを見ても、それは言えるのではないか。
イヤイヤしかし!
と、また、一つの結論に着地しようとした私を引き止める自分が頭をもたげてくる。
やっぱりヘアはある方がセクシーだって言うよ!? 無いと子供みたい、という意見は、なかなか無視出来ないものがありますよ!? ビジュアル的にもその方が「エロい」し、大人の女……という演出的にも必要よ!?
フェロモンはその辺りから出るというし、ヘアがなかったら、せっかくのフェロモンが上手く拡散しないよ!?
「エロい」って、大切なことよ!?
実用的にも、生理のときは「毛がないとかぶれる……」という切実な声を聞いたことがあるし、「毛がないと血が漏れやすいのよ、せき止めるものがないから」という困惑もあるらしい……。
ということで、色々と検証した結果、「ある方が良い、かも」という結論に落ち着きそうである。
あ、でも、あの叶恭子さんは、完全に脱毛したそこへ、蝶々のタトゥーを入れておいでとか……。
そういうのもいいなぁ……。
そんなところに蝶々のタトゥーだなんて、まず子供のようには見えないだろうし、さぞエロくて美しいのだろう……。そうしたらどんなに小さな面積の下着だってどんと来いではないか!
そうだ、脱毛してタトゥー!
これが正解だ!
心がぱあっと晴れ渡り、清々しい気分になった。
……が、脱毛はともかく、タトゥーを施す勇気がないのはどうしたものか。
タトゥーを入れてこそ完結だというのに。
ということで、アンダーヘア問題はまだまだ解決にはたどり着かなさそうである……。
昔の絵画にヘアが描いてないものは何故なのか、その理由も謎の霧の向こう側のままである。
気になる。
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