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明日はニュピ
タイトルそのまんまです。
明日はニュピ。
サイレント デイ。静寂の日とでも訳すといいのかな。
ニュピはバリの暦のお正月。
静寂の日というぐらいだから、この日はバリ島にいる人間は全て、観光客も含め全員、静かに家の中で過ごさなければならない。
仕事も休み。騒音も御法度。夜になっても家の外に灯りが漏れるのもダメ。飛行機の離着陸もなし。
戦時下か!? と思うぐらい、明日はひっそりと籠城していなければならない。
日が暮れてもまともに灯りも点けられないので不自由この上ないけれど、私はニュピが好きである。
前日である今日は、夕方からオゴオゴが練り歩くのを観に行った。
オゴオゴとは悪霊などの「怖いもの」「邪悪なもの」をモチーフにした巨大なハリボテ人形で、それを村の男性たちが御輿のようにして練り歩く。
ニュピの日には地上に悪霊がうようよするらしいから、それを模しているんだろうな。
もちろん、道は通行止めになりますよ、ええ。
このオゴオゴがまた、どの組も出来栄えが見事で、毎年私は感嘆のため息をもらす。
各自治体の人たちが、この日に合わせて手作りするわけだが、よくもまあ仕事の片手間にここまでの完成度のものが出来ることよ。
オゴオゴが練り歩くときは、生のガムランも一緒に歩きながら演奏されるわけだが、このガムランも「村の衆」が本業とは別のところでこなすわけで、この島の人たちはみんな根っからの芸術家なのだと思い知らされる。
オゴオゴが練り歩く時は、電線にひっかからないようY字形に作った長い竹の棒で電線を持ち上げつつ慎重に、かつワイルドに進む。みんなで声をかけて協力しながら。
とにかくどこを取っても活気があって、日頃は時間が経った味噌汁の、沈殿した味噌のような私の精神も、久しぶりに上昇した手応えあり。
ああ、良いところにいるなあ。この伝統がいつまでも守られますように。
心が躍動し始めると、目の開き方もちょっと変わるような気がする。よりクリアに見えるように思えるから不思議。
それなのに。それなのに。
家に帰ってきたらまた断水してたよ。
オゴオゴ観に行って、汗ばんでるのにシャワー浴びられないの!?
思わずメマイを感じそうになったが、これは踏み絵なのだと解釈した。
こんな状況でも、ここを良いところだと思えるか!?
答は当然、YES! だ!
明日のニュピ、楽しみです。
何も出来ないんだけど。