社会学レポート課題
【論文タイトル】
田中 善紀,2010,「グローバリゼーションへの対応:シンガポールにおける外国人労働者問題と市民社会(西口清勝教授退任記念論文集)」『立命館經濟学』58(5/6), 992-1008
【要約】
シンガポールのように人口が少なく、労働資源が重要な国にとっては、外国人労働者の導入は重要である。実際、外国人労働者は労働人口の30.3%を占め、シンガポール経済は著しく外国人労働者に依存している。また政府の外国人労働者(移住労働者)政策はシンガポール政府のグローバリゼーションに対する肯定的な姿勢とも関連している、と著者は説明する。
シンガポールで働く外国人労働者には2つのタイプがある。外国人熟練労働者(企業経営者、マネージャ-など)と非熟練労働者だ。特に移住労働者の大多数を占める非熟練労働者は、建設、港湾サービス、海運などシンガポール人の間で求人が少ない分野に不可欠な労働力を提供した。
結果として、移住労働者の導入は国内の労働コストを安価なものにし、国内のサービス価格を抑えるという影響をもたらした。しかし、その一方で、外国人労働者は生活における様々な法的制約に直面し、非常に苦しい立場に置かれているそうだ。
そのような状況を考察するにあたって、著者が引用した先行研究の論文によれば、国民国家のエッセンスは市民権の組織にあるという。つまり、領土内のすべての住民の市民としての政治的平等を維持し、政治的コミュニティーに統合するということである。したがって、外国人労働者(移住労働者)に対しても政治参加、シンガポール人と同等の福祉サービスの提供が求められる。
また移住労働者といかに共存するかという問題に対し、マー国家開発相は「シンガポール人は彼ら(移住労働者)と会い、彼らと共有スペースをシェアするようにしなければならない」と発言している。しかし、政府のシンガポール人への説得にも関わらず、シンガポール人と外国人労働者との間には未だ大きな摩擦が存在しているそうだ。
グローバリゼーションによって起きる移民は、労働力受け入れ国の経済発展への影響だけでなく、文化的差異を超えた新たな「市民権」と「国民国家」へのシフトチェンジをもたらすと言えるだろう。さらに受け入れ国の国民の意識変化も求められる、と私は考える。