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読書録「すむ」ということ

図書館で普段は気に留めない「月刊武道」という雑誌を見つけた。

表紙画が朝ドラ「らんまん」の主人公の牧野富太郎と壽衛夫人だったので、思わず手に取ったところ、巻頭リレーエッセイが素晴らしかったので一部転記する。

「空すむ」「水すむ」は、秋の季語である。
秋になると、空高く大気が澄みわたり、水の流れにも清涼感を覚える。
「すむ」というやまと言葉には、①澄む(清む)、②済む、③住む、という三つの意味がある。

まず「澄む(清む)」とは、「浮遊物が全体として沈んで静止し、気体や液体が透明になる意」(『岩波古語辞典』)である。この使い方は、空や水、月や音など風物の様子だけではなく、澄んだ瞳とか、澄んだ心などと、人の心や表情のありようなどにも使われている。(中略)

水や泡沫が、かつ消えかつ結んで流れ行くように、また、風が吹くように、鳥や虫が鳴くように、この世にあるものは、いかにつらく悲しいことがあろうとも、みずからの思いのたけを、自然・宇宙のおのずからの働きに響かせ表出するならば、いずれついには、濁りや曇りが取り除かれて、静かに落ち着き収束しうるものなのだ、と。つまり「澄み」「済んで」、この宇宙の一隅に十全に「住み」うるものなのだ、という世阿弥の思想をそこに見出すことができる。「すむ」は、そうした含蓄を持った言葉として使われている。

竹内整一「すむ」ということ(「月刊 武道」2023年9月号 VOL.681)

うだるような暑い夏が嘘のように過ごしやすい日が続いておりますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。

食欲の秋、スポーツの秋、読書の秋・・・と秋は何か新しいことを始めるのに適した季節かもしれない。今まで興味があったけど、まだ手を付けられていない物事に挑戦してみるのも良いだろう。

澄んだ心の素直な気持ちで新しい世界の扉を開きたい。

今日も皆様にとってよい一日でありますように。


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竹内康司
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