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一人前ではなく一流を目指せ

一人前ではなく、一流を目指せ。
その瞬間、がつんと胸に響くものがあった。

大学卒業後、新卒で就職した会社を2ヶ月で退職し、将来への希望や目標もないまま、アルバイトをしていた。努力したって報われなければ頑張る意味などない、自分がしんどくない程度に適当に働いて金を稼いでいればいい、と斜に構えて過ごしていた。

そんな屈折していた時、祖母の知り合いの紹介で、ある建設会社の社長さんにお会いする機会ができた。

「就職面接ではないから近所のおやじさんと話をするノリで行ってみてよ」と言われたので渋々会社を訪問してみた。

初めて社長とお会いした時、とても物腰の低い方で恐縮してしまった。

「君はまだ若い。これからいっぱい働きながら勉強しなさい。そして色々な経験を積んで自分の器を大きくするんだ。一人前なら誰だって10年くらい働いていればなれるものだが、一流を目指して頑張って下さい」

僕の中で忘れかけていた何かが音を立てて動き出すような気がした。

その日のうちにその会社で働くことを決めた。

大学で勉強したこととは、全く無縁の建設業。
最初は会社の業態を把握するため現場でジョブオンザトレーニング。肉体労働とは縁のないぬるま湯人生を歩んできた自分にとって辛い日々もあった。

それでもボルトを一本はめるだけの小さな作業でさえ、自分の仕事の足跡を残せることに喜びを見いだす。ほんの小さな一部でも自分が関わった建物で、週末に家族連れが食事を楽しむ。もちろん僕の想像で自己満足かもしれないが、誰かの幸せに間接的にも貢献できることに働いて良かったと思う。

だから「次はもっと良い仕事ができるようにもう少し頑張ろう」と心に誓い、具体的な目標を設定する。

一人前ではなく、一流を目指せ。
辛いときも社長の言葉を胸に自分自身を励まし続けてきた。

何気ない一言が誰かにとっての希望となり一歩を踏み出すための原動力となる。僕もいつか誰かにとっての光になれるよう、日々精進に努めたい。

一流への道のりはまだまだ長い。

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竹内康司
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