湘南ご近所散策(3) 桜の便り
今年の桜は、寒の戻りで開花が足踏みした分、一気に咲いた。
藤沢の桜の名所、大庭城址公園と引地川親水公園から桜の便りをお届けする。
大庭城址公園
平安時代の末期、この地は大庭御厨と呼ばれる伊勢神宮の荘園だった。
この荘園は、桓武平氏の流れをくむ鎌倉景正(権五郎、景政とも表記)に
よって開拓され、伊勢神宮に寄進されたもので、のち子孫は大庭氏に改姓し
代々治めていた。
大庭城は、石橋山の戦いで源頼朝と戦った大庭景親の父にあたる大庭景宗に
よって築かれたと言われている。「大庭の館(たて)」とも呼ばれ、景親ら
の軍事拠点として重要な役割を果たしたと想定される。
現在は、戦国時代の大規模な空堀や土塁などが残っており、大庭城址公園と
して保存され、藤沢市の史跡に指定されている。
ー フリー百科事典「ウィキペディア」より引用 ー
大庭城址公園は、数ある桜の名所の中でも独自の地位を占めている。
かつて、ここが大庭氏の築いた城だったことが、満開の桜に時空を越えた
ロマンを加えるのだ。
桜の花の向こう側に、在りし日のいにしえの人々が見える思いがする。
自分がこの公園を訪れた時は、早朝だった。
土曜日だったので、早朝にもかかわらず、多くの人たちが来ていた。
まだ七分咲きくらいだろうと思っていたのだが、すでに満開近くまで
咲き進んでいたので驚いた。
ふだんは心落ち着かせる緑の木々に包まれた場所であるが、桜の季節
だけは、光に包まれ、心躍らせる特別な場所となる。
ふと、差し伸ばされた桜の枝に目をやると、花が朝露をたっぷり含み
朝の光を透過して、真っ白に輝いていた。
引地川親水公園
丘の上にある大庭城址公園から下りて、引地川へ向って歩くと
10分ほどで引地川親水公園に着く。
ここもまた、桜の名所である。
しかし、趣は全く異なり、閉じられた桜の舞台を楽しむのが
大庭城址公園とすれば、あたかも人生のような川の流れに沿って
咲き誇る桜並木を、川下りでもするようにゆったりと味わうのが
引地川親水公園の花見の醍醐味である。
平時だと、行き交う人もまばらであるが、桜の季節には、どこ
から湧いて出たのだろうと思えるほど、多くの人々がひしめき
合う。家族連れも多く、さながら祭りの縁日のような賑わいで
ある。
ここも、ふだんは川の流れに沿って並木道が続く穏やかな風景
だが、桜の季節には装いが一変する。
引地川に沿って、1キロ近くにわたり艶やかな桜並木が連なる。
川の流れと、背後に控える丘陵と、広がる田園風景が相まって
他所では見れない独特の風情に、心が動かされる。
自宅から、ほんの僅かしか離れていない場所であるが、時間と空間の流れの
中を悠久にたゆたう旅人の気分に、この花見はさせてくれる。