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【小説】女子工生㉑《告白》

真白の気持ち

「ん?大丈夫だけど、何?」

「ちょっと・・・・」

徹(てつ)は真白(ましろ)の横をすり抜け、外へ出た。
真白もそのまま、後に続く。

「どうしたの?」

「清文(きよふみ)と、何話してたの?」

リビングに 真白と清文がいない事に気付いた徹は ちょっと、いや かなり気になって廊下へ出た。
廊下の窓から2人が見えた。
声までは聞こえなかったが、清文が何か言った途端、真白の顔がパッと紅潮し、嬉しそうに首をかしげて清文を見上げた。

2言 3言会話して、真白が笑いながら清文を叩き、清文もふざけて真白の首に腕を回した。
それが、恋人同士の行動の様に見えて、徹は
いても立ってもいられなくなった。
慌てて自分のバッグを掴み、靴を履いた。
玄関を開けると、清文が目の前にいて ビックリした声を出した。
徹のバッグを見た清文は、徹の肩を叩き 小さな声で “頑張れよ” と囁いてそのままリビングへ向かった。
頑張っていいのだろうかと思いながら、真白と清文の会話が気になってしまった。
清文も真白の事を好きなのでは、と思い始めていたので余計だ。

「この辺にいる野生動物について。」

「は?」

「さっき、鹿の声がして 清文、聞いたことなかったらしくて、何の音?ってなって、鹿の鳴き声だよって。他にも猪とか、狸とかいるよって話・・・・ってか何で私、この寒い中2人に別々に 野生動物の話ししてんの?」

「あ、ご、ごめん。・・あの、あのさ・・・・
これ。」

徹は バッグからクリスマス仕様の 可愛いラッピングがされた包みを取り出した。

「あげる。」

真白の前に包みを突き出した。
真白は躊躇した。

「え、だってクリプレはさっき・・・」

「あれは交換用。これは真白用だから。」

「でも でも。」

真白は オロオロと困っている。
徹は思い切って 喋り出した。

「俺、真白の事、好きだ。」

真白は目を大きく開いて固まった。

徹は1度息を吐き、真白を真っ直ぐ見つめた。

「真白、前に野崎に告られた事あっただろ。
あの時 真白、OKしたらどうしようって思ったんだよ。
真白の1番近くにいるの、俺なのにって。
恋愛感情持って 真白に近づくやつがいるって分かって、俺、すげえ焦った。
俺も 人から言わせると、すごいニブイみたいで。それからいろいろ考えて、俺、真白の事
好きだなって。
友達とか、クラスメイトとしてじゃなくて、女の子として好きなんだなって。・・わかったと言うか、気付いたって言うか・・・。真白、俺の事 友達としか思ってないって、分かってるけど、もし、少しでも俺の事 男として見てくれるなら 俺、頑張るから。真白に好きになって貰える様に頑張るから・・・。━━真白、
俺と、 付き合って下さい。 」

徹は 一気に言いたい事を言った。
耳の奧に心臓があるのでは、と 思うくらい
ドクドクと脈打つ音が響いていた。
真白は 2、3秒 間を置いて口を開いた。

「これ、開けていい?」

差し出されているプレゼントを 指差した。

「え、うん。」

真白は受け取って、ガサガサとラッピングを取った。

「あ、可愛い。マフラーだ。してもいい?」

「うん。」

マフラーを くるくると2回ほど首に巻いた。

「ありがとう。これ、好きな色だ。」

「思った通りだ。似合ってる。」

「私ね、少し前に鈴音(すずね)と咲良(さくら)に、テツとか、清文とか、仲いいけど誰か好きな人、いないのかって聞かれたの。」

「へえ・・・」

清文の名前がふいに出て、心臓が1度 大きく
ドクンと跳ねた。

「高校入って 友達いっぱいできて、それだけで すっごい楽しかったから、考えたこと無かったのね。」

「うん。」

「そしたら2人が、ちゃんと自分の気持ち理解ってないと、野崎くんの時みたいに ビックリして反射で断わっちゃうよって。」

「え、あれ反射で断わったの?」

「あ、いや、私が野崎くんの事、知らないってのも勿論あったよ。友達として付き合った事も無い人だもん。でも、鈴音と咲良が、 “驚いて断わっちゃってから、やっぱり好きでした。
じゃ、遅いんだよ。” って。て、考えたんだけど、よく分からなくて。」

「今も 分からない?」

「・・この間、1人で想像してみたの。テツとか、ヒロとか清文とか聡(さとし)とかが、私の知らない女の子と、付き合ってるのを。」

「そんな事、考えてたの。」

「うん。」

「で?」

「で、清文とヒロと聡と勇介(ゆうすけ)は、
“あー彼女できたんだー。今までみたいに遊べないなー。” って思った。」

「俺は?」

「すっごいドキドキしてきて、上手く息が出来なくなって、涙出てきた。」

「え、想像なのに?」

「うん。おかしいでしょ。誰か知らない女の子とテツが、手を繋いだり、遊び行ったりしてるのを 考えただけで泣けちゃった。」

「他の女の子なんて要らない。俺は真白と一緒にいたい。」

「うん。私も。」

「俺の彼女になってくれる?」

真白は 貰ったマフラーに半分顔を埋めたまま
コクン と頷いた。
徹は 天を仰いで 大きく息を吐いた。

「はー。やったー。すっげえ緊張してたから。嬉しい。ありがとな。」

徹が真白を抱き締めようとした時、

「ハックション!!」

真白が 大きなくしゃみをした。

「あー、ごめん。ムード台無し。」

「俺こそごめん。中、入ろう。」

徹は、真白の肩に手を回して、玄関の方へ促した。
その時、

「テツ、」

真白が徹の耳に 顔を寄せた。
徹は一瞬、真白がキスしてくれるのかと思い
ドキリとした。
真白は、固まった徹に

「好きだよ。」

と、小さく囁いて、小走りで家の中へ入っていった。
徹は真白の言葉が、嬉しかったのと、キスと勘違いした自分が恥ずかしくなって、真っ赤になって、立ち尽くした。

                 ㉒に続く


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