【小説】女子工生⑮《パーティーの準備》
真白も準備
車で真白の家に着いた一行は、一旦 荷物を台所に置くと、真白の部屋へ行って着替えだ。
それぞれ自分の着替えをバッグから取り出した。
「脱いだ制服はこれに掛けて、そのカーテンレールにでも引っ掛けておいて。」
真白がハンガーとスカートハンガーを 2人に渡した。
「ん、ありがと。」
咲良はピンクのニットシャツに、白地に茶色い太めのチェックの 長めのフレアースカート。
鈴音は、白いハイネックの暖かそうなフワフワ
シャツに、黒いタイトミニのジャンパースカートだ。
2人とも 個々の性格や外見によく似合っている。
真白は、水色のタートルネックシャツに 肩が大きく開いた 黒いセーターを重ね、デニムの
膝丈タイトスカートだ。
3人で キャッキャッ言いながら 着替えていたが、鈴音が真白をマジマジと見ている。
「何?」
「いや、んー 真白らしいっちゃ、らしいんだけど、なんかなあ・・・もっとこう、クリスマスっぽくさあ・・・、ちょっとクローゼット見せて。」
鈴音は、勝手に真白のクローゼットを漁っている。
「これ?んー これか?いや、んー」
ひとり言を言いながら 検分している。
「あ、これがいい。」
と、取り出したのが、黒いフレアースカートの上に、同じく黒いシースルーが重ねてある
フワッとしたスカートだ。
親戚の結婚式でも着て行ける様な代物だ。
「ちょっと こっち、合わせてみなよ。」
「え、ちょ、ちょっと・・・待って・・・
キャー!エッチー!」
などと 言っている間に、あれよあれよと真白のスカートを変えてしまった。
「ほらー。こっちの方が可愛い。クリスマス仕様だよ。」
「あ、ホントだ。真白、可愛いスカート持ってるじゃない。」
咲良も 手のひらを胸の前で会わせて、ニコニコしている。
「これは去年、大兄ちゃんが、買ってくれた。どこぞのブランドだって言ってたな。」
「コレ、プラ○だよ。お兄さんもガッカリだね。プラ○送って どこぞの・・なんていわれたら。」
咲良が、裏のタグを見てクスクス笑う。
「だって、ブランドとか、興味ないんだもん。こんなの着て行く所もないし・・・・。」
鈴音が手を腰に当てて、ベッドの上に仁王立ちして 真白を見下ろした。
「だ・か・ら・今日みたいな日に着るんでしょうが!デニムなんて、普通の日に 幾らでも穿ける!」
「・・・・変じゃない?」
真白が自信なさげに聞いた。
「メッチャ可愛いよ。いつもフィギュアいじったり、マンガ見たりしてる 私の言う事信じなさい!」
「そうだよ真白。可愛いよ。似合ってる。それに、プレゼントのスカート穿いてたら、きっとお兄さんも嬉しいと思うよ。ほら、髪も少しいじってあげる。」
咲良が 器用に真白の前髪をまとめ、頭の上の方で ヘアピンを数本使って止めてくれた。
「さ、こんなもんでしょ。で、これは私と鈴音からのクリプレー。」
咲良が、ポーチから口紅を出した。
「え?」
真白が目を丸くしている。
鈴音が楽しそうに 真白のほっぺたを 両手の人指し指でプニっと押した。
「どーせ真白、色付きリップくらいしか 持ってないんでしょ。そろそろお年頃なんだから、口紅くらい持ってなよ。」
「でも、でも私 2人に何も・・・」
「いーの。今日もおうちにお邪魔して、お菓子だの ケーキだの お肉だの、ぜーんぶ出してもらって、お礼も兼ねてるんだから。」
鈴音が、イシシッと笑った。
咲良もニコニコしながら、真白の頭をポンポンする。
「そうだよ。私も鈴音も 真白程じゃないけど、中学時代は少し浮いてた。知り合いはいたけど、親しくする友達もいなかったし、友達の家で 料理作ってクリパなんて初めてだもん。真白が今日誘ってくれて、私達、すっごく嬉しかったんだよ。
初めての口紅だろうから、色は薄めのを選らんだから 大丈夫だと思うよ。」
「ありがとう。2人とも。大事に使うね。今日使う。」
「さあ、ササっとメイクして 早く下行こう。早くしないと皆が来るのに 間に合わなくなっちゃう。
真白、道具貸してあげる。メイクも手伝ってあげる。」
ファンデを塗りながら 鈴音が言った。
しばし3人は、無言になり、自分の顔を作り始めた。
「あらあら、3人とも可愛いこと。見違えたわ。」
一階へ降りて行った3人を見て、正子は胸の前で手を合わせて喜んでいる。
「真白、あなた そんな格好もできるのね。普段 男の子みたいな格好が多いのに。」
「お母さん、2人からクリプレで 口紅貰った。この色。」
真白は自分の顔を指さして、唇をつぼめた。
「まあ、ありがとう。気を遣わせてごめんなさいね。」
「いえ、今日はいっぱいお世話になるので。」
「じゃあ、始めましょう。皆、エプロンはあるのかしら。なければうちのを貸すわよ。」
「大丈夫です。持参しました。」
「私もあります。」
「さ、じゃあ、何から行こうかしらね。取り敢えず3人とも、手を洗ってらっしゃい。」
「はーい。」
女4人の台所が、こんなにもうるさい物なのかと、誰かいたら 耳を押さえたかもしれないぐらい、賑やかに パーティー準備が進んで行った。
⑯に続く
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