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高額療養費制度上限の引き上げ検討について

国民医療費総額は、令和2年(下記pdf参照)のデータで総額43兆円。年齢別では、65歳以上の医療費が61.5%を占めます。さらに75歳以上の後期高齢者は39%を占めます。
日本の総人口における75歳以上の比率15%に対して、医療費の割合が高いことが分かります。
その1つの要因が、今回の検討対象になっている高額療養費制度。高額療養費制度は、医療機関や薬局の窓口で支払った医療費が1ヶ月(月の初めから終わりまで)で一定の上限額を超えた場合に、その超えた金額が公的医療保険から支給される制度です。例えば、年収約370万~770万円の人で自己負担が3割の場合、1カ月の支払いが8万円程度に抑えられます。
高齢になればなるほど、病気になることも多くなり高額の治療が必要になりますが、上限額を超えた分は自己負担する必要がないため、負担を気にせず高額医療を受けることができるメリットがある反面、必要以上に医療費を使うというデメリットがあります。
そのため、今回の高額医療費精度の上限額引き上げの検討については賛成の立場でした。

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/20/dl/sankou.pdf

しかし、下記yahooコメントを見て、考えが変わりました。
「医療費の削減は、高齢者の自己負担3割化や一定のアクセス制限で達成すべき」という意見に納得です。

中田大悟
独立行政法人経済産業研究所 上席研究員

高額療養費制度の上限引き上げは、公的医療保険制度を支える国民の信頼を揺るがしかねません。高額療養費制度は、ビッグリスクに備えるという意味で、公的医療保険制度の根幹の制度です。ここを縮小させて喜ぶのは、補填的な保険商品を販売する民間営利保険企業くらいなものです。民間保険と異なり、公的医療保険は、応能負担(つまり所得の高い人が高い保険料を払う)で成り立っています。つまり所得再分配の要素が組み入れられています。それでも人々が公的医療保険に信頼を寄せるのは、給付については平等であると考えているからでしょう。しかし、負担も高所得者が多く出す、給付は高所得者には低く出す、ということでは公的医療保険への信頼が大きく損なわれてしまいます。医療費の削減は、高齢者の自己負担3割化や一定のアクセス制限で達成すべきであり、最も重要な高額療養費制度の縮小で達成すべきではありません。

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