【PODCAST書き起こし】名人:三遊亭圓朝について語ってみた(全6回)その1(真景累ヶ淵など)
【PODCAST書き起こし】名人:三遊亭圓朝について語ってみた(全6回)その1(真景累ヶ淵など)
(「いらすとや」さんの画像使用:https://www.irasutoya.com/)
【山下】皆さん、こんにちは。集まれ! 伝統芸能部!! のお時間です。TFCラボプレゼンツポットキャストステーション『BRAIN DRAIN』集まれ! 伝統芸能部!!「落語講談、おあとがよろしいようで」ということで、今月はなんと私のたってのお願いでですね、三遊亭圓朝さんについて三浦さんと和田さんにお話をしていただきたいと思いますが、私MCの山下です。東北新社グループでポットキャスターを務める三浦さんです。
【三浦】三浦です。よろしくお願いいたします。
【山下】そして、放送作家であられる和田尚久さんです。
【和田】和田です。よろしくお願いいたします。
【山下】和田さんは落語評論家とかっていう肩書ではあまりやられてない?
【和田】そういうふうに付けられる雑誌とかで結果的に書かれていることはありますね。もう出ちゃってるのは「ああ、そういう判断なんだな」っていうことで。
【山下】基本あれですか、放送作家っていう形で活動されてる?
【和田】そうですね。自分で自称するとしたら落語研究家。
【山下】なるほど、なるほど。落語研究家ね!
【三浦】落語研究家!
【和田】はい。
【山下】もう、落語を研究して何十年の和田さんと落語を見て30……
【三浦】私は落語ファンですね!
【山下】落語大ファンの三浦さんとですね、圓朝についていろいろお話を伺えると思いますので、ぜひよろしくお願いします!
【和田】はい、よろしくお願いします。
【三浦】こちらこそ、よろしくお願いします。
【山下】では、私はスイッチャー席に戻ります。
【三浦】今年2021年はまだコロナ禍、真っ最中、真っただ中という感じですが、夏を迎えもうすぐ関東地方も梅雨が明けて、いよいよ夏の盛りを迎えようとしています。夏というと、真夏というと怪談話とか。そういう落語ですとね、怪談のお話が取り上げられたりする訳ですが、今日は三遊亭圓朝さんということで圓朝さんの亡くなられた日が8月11日で、圓朝忌という日で、わりとこの日に当てて落語協会が『圓朝まつり』とかいろいろ催したりしています。圓朝のお墓のある谷中の全生庵。全生庵は“全体に生きる庵”と書きますが、全生庵には圓朝の墓もあり、毎年8月……今年もあると思うんですけどどうなんですかね? 8月1日~~31日まで幽霊画展が。
【和田】はい。
【三浦】圓朝が集めた絵なんですかね、これは?
【和田】一部そういう絵もあるのかな。そのあと集まってきたものも含めてだと思うんですけど。
【三浦】必然的にあそこに幽霊画があるから、そこに集めようみたいなことですかね? 8月にやるのは圓朝忌というのもあるんですけど、絵を一回外に出して虫干しする意味もあるんですね。笑
【和田】はい。
【三浦】私、実は入館料500円で安いので、そんなにたくさん絵がある訳じゃないんですけど。何度か訪れて全生庵の幽霊画展は何度か見ております。わりと点数も少ないので気楽に見られて、けっこう夏の暑い盛りなので汗かきかき行くんですけど。幽霊画見てもそんなにひんやりとはしないですが、なかなか不気味なものも多くて楽しめるという展覧会ですね。幽霊画展です。で、三遊亭圓朝が生まれたのは1839年。まだこれは江戸末期ということになりますかね?
【和田】そうですね。維新まで20数年。
【三浦】そうですね。維新が1860……
【和田】8。
【三浦】8年!
【和田】はい。
【三浦】ですね。
【和田】だから、幕末の代表的な演者ですよね。圓朝と、芝居のほうでいうと河竹黙阿弥がそうですけど。江戸と明治を両方生きた人。しかも、偶然なんですけど半々ぐらいなんですよね。
【三浦】そうですよね!
【和田】圓朝は明治よりですけど、どっちかっていうと。
【三浦】そうか!
【和田】江戸にスタートして。
【三浦】ほんのちょっとだけ明治よりですかね?
【和田】そういうことですかね。だから、黙阿弥のほうがもうちょっと先輩になるんですけど。
【三浦】はい。
【和田】でも、おっしゃるように江戸の最後の時代と、明治になって近代化されたというものの、生きてたのは30年ぐらいかな? だけど、高座にあがってたのは20年ぐらいだった。明治20年代ぐらいまで寄席に出てて、最後のほうは出てなかったらしいんですけど。
【三浦】そうなんですね。
【和田】そういう時代を生きた人だったんですね。
【三浦】江戸末期というと、かなり激動の時代だと思うんですけど。落語家としてその時代を生きる上で何か大変なこととかあったんですか? それとも、意外にそうでもなかったんですか。その時代っていうのは。
【和田】どうなんだろうな……? 僕、さっき研究家っていいましたけど。圓朝に関しては落語をですね、生の落語を聞いていろんなことを言ったり書いたりする人と、テキストっていうかですね。
【三浦】資料を?
【和田】明治時代の例えば新聞をですね、都新聞をめくって、お好きな方がおりまして。そっちのほうの古文書を開いて、ひも解いて研究をする人たちは圓朝をものすごく研究しているんですよ。で、僕は正直そうでもないんでよく知らないんですけど。圓朝に関していうとね、圓朝って芸人の子供なんですよ。
【三浦】そうですね。お父さんなんでしたっけ、圓太郎?
【和田】圓太郎。
【三浦】圓太郎ですよね。
【和田】で、小円太っていってたのかな? で、子供の時からあがってたんですよ。
【三浦】そうですね。
【和田】だから、圓朝自身の背景でいいますと、僕はいわゆる芸人の子供で、なんていうのかな……? 疑問を持たずにいろんなものを吸収して大きくなったんじゃないかなと私は思ってます。
【三浦】なるほど。ということは、幕末から明治維新にかけて激動はしてますけど、庶民の生活とかは別にそんな変わる訳ではないですもんね? 寄席も日常的におこなわれているでしょうし。
【和田】はい。
【三浦】だから、そういう意味でいうと芸人は芸人の生活を営んでいたというふうなことで。
【和田】ということだと思うんですけどね。でも、すごく才覚がおそらくあった人で今もやる『真景累ケ淵』っていう怪談話があって、豊志賀の死っていうのがよく知られてますけど。あれ最初は『累ケ淵後日の怪談』といったそうなんですけど。
【三浦】そうらしいですね。
【和田】最初の外題はね。あれ作ったのは20代のころ。
【三浦】累ケ淵後日の怪談ってつまり累の怪談話っていうのは過去にあったってことですよね?
【和田】そうです。過去にもあったし。
【三浦】累の墓とかもありますよね?
【和田】あります、あります。
【三浦】それは要はお話とは別に関係ないというか、全段でもなく累の墓があったということからなんですか?
【和田】いや、累のですね、累っていうのは羽生村というのがありまして。
【三浦】羽生村は今でいう千葉県ですか?
【和田】いえ、茨城県 常総市羽生町ですね。。
そこに実際にそういう出来事があったらしいんですけど、ある女性が男の人に騙されて殺されて死んでしまったと。そうすると、その女性、それが累っていうんですけど。
【三浦】はい。
【和田】累の霊がいろんな人にとりついてその男の罪をですね、告発したり。幽霊になって怪奇現象を起こしたり、それこそ置いてある茶碗が宙に浮いたりとかですね。そういうのが起きたんです。
【三浦】心霊現象。
【和田】そうです。羽生村というところにね。
【三浦】ええ。
【和田】で、いろんなお坊さんがきて祈念したりしたんだけど、なかなか収まらなくて、最終的に後の祐天上人、お坊さんですね。が、当時はまだ佑天って名前じゃないんですけど。若きすごいお坊さんでそこの羽生村に乗り込んでいって、何十日間の法要をして。
【三浦】累の法要をして?
【和田】累の法要をして、最終的に収めた。怪奇現象が静まったといわれてるんです。そういう江戸時代の、あれは17世紀になるのかな? すごい大事件がありまして。
(※ 1672年)
【三浦】それは、実際にあった事件なんですよね。
【和田】そうです、そうです。
【三浦】累の。
【和田】はい。これは、高田という人が『江戸のポルターガイスト』という本を書いてるんですけど。
【三浦】おもしろいタイトルですね!
【和田】おもしろいです。ほんとにそのとおりなんですよ。ポルターガイストの江戸版なんですけど、そこにものすごく詳しく書いてあります。それで、羽生村に累の伝説も残ってるし、目黒の祐天寺。
【三浦】祐天寺?
【和田】はい。
【三浦】それが祐天上人の?
【和田】祐天上人のお寺だから祐天寺なんですけど。あそこに累塚っていうのがありまして。
【三浦】祐天寺にあるんですね。
【和田】はい。目黒のもつ焼きばんのところにあるんですけど。
【三浦】もつ焼きばん。笑
【和田】それは祐天上人が、とにかく祐天上人ってすごいお坊さんなんだけど、彼の生涯の内で指折りの大事件だった訳ですよ。
【三浦】の一つと。
【和田】うん。その話があって累の怪奇伝説といいますかね。事件があってそれが歌舞伎にもなり、本にもなり、いろんなふうに脚色された訳です。
【三浦】はい。
【和田】で、歌舞伎だと累の出し物もいくつもありますしね。累物っていうんですけど。
【三浦】それは、圓朝の累ケ淵とは別に?
【和田】別に。
【三浦】関係なく別にある?
【和田】完全な江戸時代。
【三浦】あったってことなんですね!
【和田】うん。で、圓朝はそういう累物をもちろん当然知っているし、歌舞伎でもやったりするから。『累ケ淵後日の怪談』がどういうことかっていうと、それの新版を作るという意味なんです。
【三浦】(ごにち)というのはどういう?
【和田】後日。
【三浦】後日か。後日を(ごにち)と読んだんですね。
【和田】うん。
【三浦】後日の怪談。
【和田】だから、それの現代版をやっちゃおうよって意味なんです。
【三浦】当時の現代版ってことですね?
【和田】そういうことです。
【三浦】江戸末期~~明治にかけての現代版。
【和田】そうです。だから、なんといったらよろしいのか。つまり、昔の西洋の例えば大昔の神話『オルフェウスの神話』っていうのがある。
【三浦】はい。
【和田】それを例えばリオのカーニバルに持ってきて『黒いオルフェ』って映画があるじゃないですか。
【三浦】黒いオルフェ、ありますね。
【和田】そういうのを引用して現代版をやっちゃうよ。っていうのありますよね? 今でもね。
【三浦】はい。
【和田】そういう発想で圓朝は累物を「俺が書き替えたら」っていう感じで作ったんです。
【三浦】なるほど。累という幽霊界の第一人者をモチーフにして。
【和田】そうです。
【三浦】自分流の累の話を書いた。
【和田】そういうことです。だから、今でいうと強引にいってしまうと、野田秀樹が野田版なんとかってやるじゃない?
【三浦】そうですね。
【和田】元のモチーフがあって野田版っていって、『桜の木の下の』とかやるじゃない?
【三浦】はい。
【和田】あれの発想に近いですよ。
【三浦】なるほど。
【和田】圓朝版累っていうのを発表した訳ですよ。昔から伝わってる累をそのままやるんじゃなくて、だから、圓朝の累っていうのは豊志賀っていう女性がですね、男に裏切られたっていうか、女性のほうの一方的な恋慕のような気もしますけど。
【三浦】かなりつき纏う感じですもんね?
【和田】そうです、そうです。でも、彼女の心理としては「男に捨てられた」と。それで、相手の新吉っていうんだけど。
【三浦】新吉?
【和田】はい。のことは死んでも祟るぞといって。
【三浦】8人祟るっていってますね。
【和田】そうそうそう。実際に、その怪奇現象が起きるし、いろんな人にとりついたりっていう話がある訳なんですよ。
【三浦】はい。
【和田】関係ない罪なき人にとりついちゃったりして、その人が殺人事件に巻き込まれたりとか。その構造が累っていうのは「累」って書くんだけど。
【三浦】累ですね。
【和田】累々と続く訳ですよ?
【三浦】累累と続く。
【和田】で、物語の後ろのほうになると「お累」っていう女性が出てきたり。
【三浦】お累出てきますね!
【和田】出てきますよね、後半のほうにね。
【三浦】お累は出てきますね。
【和田】だから、そういうふうに元の累の話を引用して、場所も上善が淵っていう江戸から始まるんだけど、江戸に住んでられないっていって引っ越していく。そうすると、あっちの羽生村のほうに行くんです。
【三浦】羽生村に行きますね。
【和田】行くんです、二人が。だから、そういうパロディーですよね。元の話を踏まえて、でも僕は作っちゃうよっていう形でやったのが累ケ淵。今は『真景累ケ淵』という題で。
【三浦】後日の怪談が『真景累ケ淵』になったと?
【和田】そうですね。それを作ったのがやっぱ20代の時だというんで、すごい才覚ですよね。
【三浦】途中で最後に新吉と夫婦になるお賤っていう女性が、初めて出てきた時に累の墓、碑に詣でたりしてるシーンありましたね。
【和田】そうそう、そうですそうです。
【三浦】召使か連れて。
【和田】うん。昔々、累の物語がありましたと。そこに偶然きてしまった江戸の者みたいなことで、なんていうのかな……劇中でも昔の累っていうのがここで出てくる訳ですよ。
【三浦】そうですね。
【和田】当時の現代っぽい話だから。厳密な時代設定は分からないですけどね。とにかく、新機軸の累を見せますよってことで作ったんだと思います。
【三浦】そこはやっぱり、累が末代まで祟るっていう累の事件の亡霊が祟っていくというのは豊志賀に憑依してるということなんでしょうかね?
【和田】そうですね。あれは、結局豊志賀と新吉というのがカップルになって、豊志賀という女の……
【三浦】年の差がありますもんね。
【和田】そう、年の差があって女が二十歳ぐらい上なんですよ。年上で、だけど新吉っていうのに惚れて夫婦みたいになって。で、新吉がそれから逃げようとして豊志賀は捨てられたと解釈するんだけど。あれはその全段として、新吉のお父さん。
【三浦】そうですね。
【和田】が累のお父さんを殺している訳です。
【三浦】ここでざっと人物相関図的なものを一応私のほうからいっておくと、今出てきた豊志賀っていうのは、要は、宗悦をがお父さんでこの人は金貸しも営んでいたと。
【和田】そうです。
【三浦】按摩さんであり、金貸しも営んでいた。で、その娘が豊志賀で妹がいるんですよね?
【和田】そうです。
【三浦】お園でしたっけ?
【和田】うん。
【三浦】宗悦が金を貸していて、全然返してくれない貧乏旗本が深見新五郎。で、その息子が二人いて新五郎と新吉。で、今出てた新吉は二番目の子供ってことですね?
【和田】そうですね。それを知らずにカップルになってしまう。
【三浦】そうですね。で、累ケ淵読んでいくと出てくる、読んでれば分かるんですけど。お兄さんの新五郎っていうのは、豊志賀の妹であるお園に惚れるんですよね。
【和田】そうです。
【三浦】で、お園に惚れるんだけどお園はそういうお互いの家族……そうそう、宗悦を殺すんですよね? 金を取りに行った時に。
【和田】そうそう。だから、借金返せないっていう事情があり、ちょっと感情的な行き違いもあって殺してしまう訳なんですよね。
【三浦】当時、武家お旗本はある意味不愉快というか、そういうことがあった時に切り捨て御免でもよかったんでしょうかね?
【和田】他の話でも、『牡丹灯籠』でもいきなり往来で殺しちゃうみたいなのはあるんで。
【三浦】ありますよね。要は、武士に対して不愉快な思いをさせると、そういうこともありえたということなんですかね?
【和田】はい。
【三浦】で、宗悦……お父さんが殺されその死体がどこかに捨てられるようなところから始まってたと思うんですが、年数はたってそれぞれが、新吉も成長し偶々豊志賀という、殺された父親の娘が父の仇の息子と恋仲になっているという。
【和田】恋仲になってしまう。
【三浦】そういう筋立てな訳ですね。
【和田】元の累伝説もやっぱりそういう話なんですよ。
【三浦】そうなんですか!
【和田】うん。累と与右衛門も本人たちは偶然知り合ったと思ってるんだけど、その前の代からの因果があって、それが次の代に出てきちゃってるっていう話なんですよね。だから、そういうのを引用して。累ケ淵に関していうと、やっぱり今いった豊志賀の話が近代的ですよね。
【三浦】そうですね。
【和田】圓朝が近代的なことやるぞっていう、作ったのは江戸の時だし。偶然先取りしてたってことだと思いますけどね。
【三浦】偶然ですか、それは?
【和田】だから、圓朝の冴えてる部分ですよね。そういうところにおもしろさを見出した。だから、単なる因果話で親の代の因果が次の世代に出てくるっていうんだと、たぶんここまでの命脈はなかったと思うんですよ。
【三浦】そうかもしれないですね。
【和田】だから、そこすっ飛ばしても四十になった女性が、独り者の女性が二十歳の人に好きになって、カップルになるんだけどうまくいかないっていう、そこだけ取ったらおもしろいじゃないですか?
【三浦】はい。そこだけ取って落語として上演されることも多い訳ですもんね。
【和田】多いです。で、その時に……
【三浦】っていうか、それがほとんどですもんね?
【和田】そう。で、殺した敵なんですよ。って部分が極端にいえば僕はなくていいと思う。
【三浦】はい、そうですね。
【和田】なくても四十の独り者のそれまで男性に全く興味なかった女性が、二十歳の男性を好きになる。この女性のほうから誘う形で自分のところに住まわせる訳です。自分の家にね。だけど、男のほうは若い女性のほうに気が行ってしまったりとかいうのがあってうまくいかないって話なんで。
【三浦】それ、普通の話ですもんね?
【和田】普通の話ですね。笑 そういうことですね。
【三浦】で、男のほうから年上の女性にの愛想がつかされる原因っていうのが、ぽっと顔に吹き出物が出てきてそれが膨らんできて醜い顔になっていくっていう、それが幽霊につながっていくっていう一つの流れになって。
【和田】そうですね。
【三浦】前半は、わりとその豊志賀のいわゆる病気の非常に怖い顔。醜い顔が幽霊として出てくるシーンが何回か出てくると思うんですけど。結局、これあとで怪談ってあんまり出てこなくなりますよね? 累ケ淵って。どんどん話が進行するにしたがって。
【和田】そうですね。ただ、結局新吉が後にもらった女性とかが。
【三浦】ああ、そうだ。それも顔がそうなるんだ。
【和田】そうです。
【三浦】それがお賤でしたっけ?
【和田】そうです。そこで火傷をしたりとか。
【三浦】火傷もしますね!
【和田】はい。ケガを負ったりっていうのがあって、それが結局……
【三浦】因果?
【和田】うん。因果であり、祟りがですね、お前の付き合う女を絶対うまく。
【三浦】そうですね。
【和田】呪うぞっていってる訳じゃないですか!
【三浦】そうですね。豊志賀がやっぱり火傷も……火傷したあとがこの累ケ淵に出てくるお累ですもんね?
【和田】そうです、そうです。
【三浦】お累が火傷をし。
【和田】それが結局予言されていた「お前のこと絶対に幸せにしないからな」っていう遺書を書いて、その豊志賀パワーで怪奇現象が起きてるとも取れますよね?
【三浦】幽霊は出ないけど怪奇ですね!
【和田】そうです、そうです。
【三浦】呪われてます、呪ってますね。
【和田】そういうことだと思います。おっしゃるように、そこで火の玉が出て幽霊画みたいな幽霊がスーッと出てきてってイメージと違いますよね?
【三浦】はい。
【和田】それと、これは圓朝がどうやってたかっていうのは分からないんですけど。さっきおっしゃった豊志賀が出着物ができて、醜い顔になってしまうっていうのも、僕は今やってる人とか。あるいは、十代目の馬生さんとかね。あの辺の世代の人の聞くと、非常におもしろいなと思うのは、顔に小っちゃいデキモノができるんです。それが大きくなった時に新吉って別に豊志賀のこと嫌いじゃないから、「薬飲んでよくなんなよ」とか。
【三浦】いってますよね?
【和田】そう。「程なく小っちゃくなるから」とかっていう訳ですよ。
【三浦】それなのに豊志賀は「新吉さん、あたしのこと絶対に嫌いになるよ」って。
【和田】そうなんです。
【三浦】むしろ、そう吹き込んでるようなところがありますよね?
【和田】だから、豊志賀のほうがむしろ「こんな顔になった私のことは絶対嫌いになるはずだ」と。愛想がつきたんだろうということを。
【三浦】そのしつこさに辟易してしまうんですよね、新吉は?
【和田】そうなんです。だから、これが圓朝さんがやってた時から、こういうやり方をしていたんだとしたらそこはすごい現代っぽいと思うんですよ。
【三浦】そうですね。
【和田】顔が醜くなったっていって、「お前には愛想がつきた」っていうのはそれ以前の感覚な気がするんですよ?
【三浦】そうですね。今回、話させていただくに当たって、一回また累ケ淵読み直したんですけど。やっぱその通りになってますもんね。新吉が豊志賀のくどさに辟易するような流れに書いてありますよね。それで、そこにうまいことこっちの女になびくように、お久っていう豊志賀の生徒さん!
【和田】そうですね。
【三浦】弟子が出てきたりして、二人で手に手を取って下大沢の羽生村に行くような流れを作っているっていう。
【和田】そうですね。ことだと思いますね。
【三浦】単純な幽霊話では絶対にないということですね?
【和田】はい。そう、だからそこら辺が昔の古いモチーフを持ってくるんだけど、そうじゃない話……だから、江戸時代の感覚だといろいろあって、仏教のそれこそお坊さんとかが祈ってなんとかするとか。そういうふうになるんじゃないかなという気がするんですよ、僕は。
【三浦】そうですね。
【和田】だけど、そういうのがほとんど無関係になって、その中で人が動いてくって感じですかね。
【三浦】そうですね。
◇◇◇
テキスト起こし@ブラインドライターズ
(http://blindwriters.co.jp/)
『このたびは、ご依頼いただきまして、誠にありがとうございます! 起こしを担当しました佐藤です。“夏といえば怪談の季節!”というのとは別に、割と年がら年中、面白い話が転がってないかなーと漁るくらいには怪談が好きで(笑)。 そうすると、怪談の原点とされる落語の幽霊話がモチーフになっていたり、そのエッセンスが加わっている作品に出会ったりします。今回、思いがけずルーツとされる怪談に触れることができたので、このあとに続くポッドキャストも楽しみです☆ また、他の怪談話(落語の)も聞いてみたいなと思いました。それでは、この辺で。またのご利用をお待ちしています!』
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