【コメディ】麗しの社畜カフェ
この記事はオーディオドラマシアター SHINE de SHOWに再掲されています。今後はそちらのアカウントにてご覧ください。
コンプライアンスが重視され、働き方改革も進んだ今日この頃。
でも、はたしてそれはすべての人が望んでいたことでしょうか？
今回は、「社畜カフェ」という異世界へ迷い込んだひとりの会社員のお話です。
自分の意志も良心も放棄し、歯車として会社に尽くせたあの頃はよかった。昔に帰りたい……！
そんな人の望みを叶える場所。それが社畜カフェ。
よろしければあなたも一度いかがでしょうか？
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▶ジャンル：コメディ
▶出演
・客：小澤浩幸（ティーエフシープラス）
・カフェ店員：辻本裕子（ナショナル物産）
▶スタッフ
・作・演出：山本憲司（東北新社／OND°）
・プロジェクトマネージャー：大屋光子（東北新社）
・プロデュース：田中見希子（東北新社）
・収録協力：オムニバス・ジャパン
『麗しの社畜カフェ』シナリオ
登場人物
客（35）
カフェ店員（27）
ドアが開く。
客「こんにちは……」
店員「遅いぞお前！ こんにちはとは何事だ！」
客「え？」
店員「一体今何時だと思ってるんだ！」
客「失礼しました！ おはようございます！」
店員「さっさと席につけ！」
客「あ……」
店員「さっさと席につけと言ってるんだ！」
客「は、はい」
店員「ほら！」
布巾が置かれる。
客「え？」
店員「仕事環境の大切さはいつも口を酸っぱくして言ってるだろ！」
客「拭くんですか？」
店員「お前の仕事は、全員の机を拭くことだろ！」
客「は、はい。えっと……」
店員「チッ。もういいもういい。時間の無駄だ。お前には無理だ」
客「はい……」
店員「で、何だ！」
客「え？」
店員「何にするんだと聞いているんだ！」
客「えっと……」
店員「一体何年勤めてんだお前！」
客「今日……初めてです」
店員「なんだ。早く言えそれを。じゃあほら、資料」
客Ｍ「資料……メニューのことを資料というのか！ ああようやく来れた、あこがれの社畜カフェ。コンプライアンス重視の堅苦しい時代に颯爽と現れた社畜カフェ。やっぱりこうでないとな……」
店員「何をじっくり読んでる」
客「え？」
店員「資料を読む前にすることがあるだろ」
客「え、ええと……」
店員「指示待ちか？ お前ゆとりか？」
客「いや、その……あれ……ですよね。その……」
店員「わからないならわからないとなぜ言わない！」
客「いや、あの、でも……」
店員「すいませんだろ！」
客「すいません！」
店員「自分の分は自分でコピーするんだ！」
客「あ、なるほど」
店員「なるほどという返事があるか！」
客「承知しました！」
客Ｍ「迷うな……社畜スパゲッティに社畜オムライス、どれも社食にありそうな安くて味がどうでもいいやつ……」
店員「どうだ。進んでるか」
客Ｍ「ハッ、上司からの進捗確認。プレッシャーだ。たまらない……」
店員「なにをぶつぶつ言ってる」
客「えーと……では……社畜、社畜カレーでお願いします」
店員「社畜カレーでいいんだな」
客「もしかしてすごく辛いんでしょうか」
店員「そんなわけがあるか！ お前の休憩時間は15分だ。早くすすれるように超甘口だ！」
客「すすれるって……」
店員「量は！」
客「ええっと……普通で」
店員「それが人にお願いする態度か！」
客「ハッ、普通でお願いします！」
店員「ふん、普通か。仕事は半人前のくせして飯だけは一人前食うんだな！」
客「すいません。急いで食べます！ いえ、すすります！」
店員「飲み物は」
客「選べるんですか？」
店員「いちいち資料の読み方を教えてやらなきゃいけないのか？ 幼稚園出てんのか？」
客「すいません。ええとレッドタイガー、マジカルエナジー、アンリミテッドゴールド、ドカビタＣ……全部エナジードリンク!?」
店員「当たり前だ。何しに会社に来てるんだ！」
客「残業です」
店員「よし！」
客「もちろん。サービス残業ですよね」
店員「そんなことを私に言わせるな！」
客「すいません！」
店員「大体今日帰れるかどうかわからないからな。吹雪が強まってきている」
客「はい。ズボンがずぶぬれになりました」
店員「ずぶぬれごときを自慢してるのか？」
客「いえ、違います」
店員「電車が止まっても風邪を引いても出勤するのが会社員の務め。そうだろ！」
客「もちろんです！」
店員「ほら！」
料理が出される。
客「え？ もう？ これ社畜カレーですか？」
店員「カレー？」
客「いえ、僕が頼んだのは社畜カレーなので」
店員「お前、これがカレーに見えるのか？」
客「やっぱり。これハンバーガーですよね」
店員「わかっているなら余計な確認をするな！」
客「これは……どうすれば」
店員「なんとかしろ！」
客「え？ 僕がですか？ でも頼んでないので」
店員「前任者からの引き継ぎだ！」
客「僕が責任取るんですか？」
店員「なんだと？」
客「いえ、承知しました。前任者の責任は僕の責任です！」
店員「もちろんだ！」
客「しっかりと対応させていただきます！」
店員「よし！」
客Ｍ「あ……冷めてる。けどおいしい。周りをよく見ると一人も帰ってないな。そっか、上司が帰らないと帰れないからか。今日も終電かな……あーしあわせ……」
客「ごちそうさまでした……」
店員「ほら！」
料理が出される。
客「え？ 社畜カレーですか？」
店員「お前が頼んだやつ」
客「今ハンバーガー食べましたけど……」
店員「お前が頼んだんじゃないのか！ 社畜カレー」
客Ｍ「……無理に食べればいいのか。でももう食べられない。どうするのが正解なんだ。誰か助け舟出してくれないかな……あ、みんな僕のことこっそり見てる。僕がどう反応するか伺ってるのか。いや、そうじゃない。みんな何かを待ってる。何かを……そうか！」
店員「食べるんですか。食べないんですか！」
客「それは……」
店員「なんだ！」
客「それは……後任の方へお願いできないでしょうか……？」
店員「了解」
〈終〉
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【脚本：山本憲司】
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＊番組紹介＊
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