東北新社グループで最も落語に詳しい三浦さんに初めて落語を見た大野さんが聞いてみた!シリーズです!全4話(その1)
東北新社グループで最も落語に詳しい三浦さんに初めて落語を見た大野さんが聞いてみた!シリーズです!全4話(その1)
【山下】皆さん、こんにちは!
「集まれ! 伝統芸能部!!」開幕のお時間です。
この番組は、普段は総合映像制作会社に勤める伝統芸能好きが大集合。伝統芸能をたくさんの人に好きになってもらうために、勝手にPRを頑張る番組です。ポッドキャスターを務めるのは
【三浦】はい、こんにちは。三浦です。よろしくお願いいたします。
【大野】はい、こんにちは。落語に興味がある大野と申します。
【山下】そして、MCの山下の3名です。題して今回は、落語!
【三浦】講談!
【3人】おあとがよろしいようで!!
【山下】はい、この全然そろっていない感じが、いまどきでコミュニケーションが不足していますが。(笑)
実はですね、先月でしたっけ? 大野さん、三浦さん。
【大野】はい。
【三浦】はい、そうですね。
【山下】実は大野さんが、まだ落語を見たことがないということで、ですね、初めて大野さんが落語会に行きました。桂吉坊の独演会ですね。成城学園前の駅で集合して、どうでしたか? 大野さん?
【大野】いろいろ感想があるんですけれど、とにかく初めて行って、会場に入って、いろいろ想像と違う。わりと、お客さんの人数少なめの、非常にぜいたくというか、そういう会場でして。簡単に言うと、皆さん色気がすごいというのを、ひたすらに感じておりまして。色気ですね。
【山下】それは、噺家さんの?
【大野】はい、私、噺家さんの目の前ど真ん中で見ていたんですけれど、動きとかも、話の抑揚以外にも、あらゆる全身を使って、けっこう語っているというか、楽しませようとしているというのが、もうビシビシ伝わってきたので、感動しましたね。はい。
【山下】なるほど。三浦さん、いかがでしたか?
【三浦】はい、あのぐらいの人数の会というのはなかなかなくて、主催をしてくれている2人の方がいらっしゃるんですけど、もしかしたら、かなり手弁当な感じでやっていただいているのかなっていう。30人いない会でしたよね。昔のいわゆる落語をお座敷に、大店の旦那が自分の遊びで呼んで、酒飲みながらやるみたいな、ちょっとそれに近い感じもありますし、きちっとした落語会でしたけど、非常に楽しめました。
私、去年も行きまして、去年よりもさらに、こういうコロナの状況下なので、さらに人数を、もう少し抑えめにしていたっていう。席の間隔も空いていましたし、本当にただ大野さん、目の前だったので、吉坊さんとゲストで出た桂りょうばさん、あと前座、開口一番の人も出たんですけど、開口一番の人も汗かきまくっていて、汗とツバが大野さんの顔にかかるんじゃないかっていうぐらいな。
【山下】大野さんはもう、いろいろなものを浴びていると思いますね、特に落語のオーラを浴びてますね。
【三浦】やっぱり、だいぶ秋も深まって冬に近づいているときだったので、冷房ってそんなに入れると、お客さんが寒いし。ただ、噺家さん、芸人さんたちは熱演なんでね、汗ダクでしたね。本当、大熱演でしたね。
【大野】ですね。
【三浦】あのぐらいの観客数だと、本当に、もろに反応が本人たちに伝わっていると思うので、「あれ? ここ、全然うけへんかったな」みたいなことがあると、きっとよけいに汗が出るんじゃないんですかね。そんなことありましたけど、
【山下】最後、オチがすべっちゃったりするとかね。
【三浦】そういうのもありましたよね。でも、大野さんの初めての落語会という意味では、とてもよかったのではないかなと思います。
【大野】はい、とても感動です。
【山下】大野さんと噺家さんの距離、僕と大野さんの距離ぐらいですものね。 (※ 約1メートル弱)
【三浦】まったくそうですね。
【大野】わりと噺家さんの位置が高めで、けっこう見上げながら見る感じで。
【三浦】そうですね。やっぱり高座っていうぐらいでね、高い所にあるわけですから、高座っていいますよね。
余談ですけど、「太鼓持ち」さんているじゃないですか。「太鼓持ち」さんて、けっこう芸をたくさん持っていて、落語もできたりするんですよ。旦那さんを喜ばせないといけないんですけど。「太鼓持ち」さんは自分の仕事場を、落語家さんは高座ですけど、「太鼓持ち」さんは修羅場って呼ぶんですよ。
【山下】修羅場ね。その言葉もすごいですね。生死がかかっているような感じがしますね。
【三浦】その職業の違いによって、働く場の呼び名が違うっていう。修羅場っていうらしいですよ。すみません。また話が脇にずれてしまいました。
【山下】なんか演目もね、この前、三浦さん、桂吉坊がやった「鴻池の犬(こうのいけのいぬ)」を、あの、さん喬さんが。
【三浦】そうですね。吉坊さんのやった上方話の「鴻池の犬」って、江戸で生まれた捨て子の三兄弟の犬が一匹、鴻池さんにもらわれていって、
【山下】お金持ちのね。
【三浦】そうですね。そしたら、その江戸のお店の丁稚さんがいちばんかわいがっていたのが、その鴻池さんにもらわれていった犬で、その犬をもらわれていったら丁稚さんが、もう興味を失っちゃって、真ん中のぶちと、いちばん下の白は邪険にするようになっちゃって、かわいそうに。ぶちは、白と一緒にお腹をすかして食べ物を探しにいく途中で、大八車にひかれて死んじゃうんですよ。それで、白だけが残って、白がお兄ちゃんの黒に会いに行こうと。で、上方に行く話でしたよね。
たしか吉坊さんのときは、すぐ上方へ行ってませんでしたっけ?
【山下】そう、吉坊は上方落語だから、上方の話から始まっていましたよね。
【三浦】そうですよね。さん喬さんがどういうふうにやったのかというと、
【山下】さん喬さんのは、違うんだ。
【三浦】途中で探しにいく。まず、江戸を出発する前に、お伊勢参りの犬に出会うんですよね。お伊勢参りの札を首に下げた、お伊勢さんに行くぞって下げた犬に出会って、その犬と一緒に行くんですよ。
【山下】それは、さん喬さんのアレンジですか?
【三浦】いや、もしかしたら、あるんだと思います。そうじゃないと、こういう創作はしないと思うので。もしかすると、吉坊さんは、そこ端折ったかもしれないですね。このへんは、上方にもっと詳しい人だったら、よく話してくれると思うんですけど、とりあえず、そういう違いがあって、けっこう、そのお伊勢参りの犬と白が、すごく仲良くっていうか、お伊勢参りの犬がとてもやさしい犬で、一緒に行こうぜっていって東海道をずっと越えていくんですよ。箱根を越えて、富士山見ながら。それから、
【山下】ずっと、その旅の様子が話されるわけですよね。
【三浦】そうなんですよ。それで、ワンワワンワワワワン♪ とか。
【山下】箱根の山は天下の嶮(けん)の替え歌、犬語で。
【三浦】そうなんです。それで、富士山にいくと、富士山のワンワンワンワワンワン♪ とかやりながら進めていくんですよ。おもしろかったですね。
【山下】それは、さん喬さんが絶対作っていると思うわ。
【三浦】で、名古屋いくとね、しゃちほこがいるというね。それで、その先で、あって気づくわけですね。大阪はこっちやぞ。お伊勢はこっちやぞって。
【山下】兄弟がおるかもしれへんと。
【三浦】その、人間に教わるんですよ。
【山下】そっか、分かれ目ですからね。ちょうどお伊勢さんとね、名古屋は。
【三浦】そうそう、それでね、お伊勢参りに行くっていう首から下げていると、人間がすごいやさしくしてくれるんです。
【山下】へえ、なんでですか。
【三浦】えらいな、おまえたちって言って、おまえこれ食えや、あれ食えやって、餌もくれるし、道案内もしてくれるっていう。いい時代の話だなって。
【山下】なるほど、なんかいいですね。
【三浦】それで、いよいよ別れて、お兄ちゃんの黒のところに到着するっていう話で。まあ、先は一緒でしたけど。
【山下】最後は、上方の船場に行って、お兄ちゃんに会うという。
【三浦】そうです。船場行ったら、町内というか、隣り町とこっちの町の犬がけんかしているのを、おまえらいいかげんにせいやっていうね、ところがありましたけど、そこからは一緒ですね。
【山下】そこからは同じですか。吉坊さん、少し短くしたのかもしれませんね。
【三浦】そうですね。多分そんな気がしますね。でも、「鴻池の犬」って、私も何回か聞いたことありますけど、お伊勢参りの犬と東海道を下っていくっていうのは、初めて聞いたような気がします。
【山下】そうですか。犬のお伊勢参りって、新しいですね。
【三浦】40分から45分ぐらい、それで話していましたね。長講でしたね。また後半が、さらに長講だったんですけどね。
【山下】そうなんですか。何をやったんですか?
【三浦】後半は初めて聞く話で、主催者の人に聞いたら、6代目三遊亭圓生が話していた話で、
【山下】あの「志ん生と圓生」の圓生ですよね。
【三浦】そうです。「お藤松五郎(おふじまつごろう)」っていう話で、音源は圓生百席に入っています。
【山下】どんな話ですか?
【三浦】これはね、またちょっと悲惨な話なんですけど。
【山下】いいですね、悲惨な話。
【三浦】お母さんと娘の親子がいて、水茶屋みたいなのをやっているんですよね。お茶屋さんですね。お茶とちょっとしたお菓子とかを出すっていう。
【山下】ほんまにお茶だけを出す、お茶屋さんね。
【三浦】そうですね。で、やっていて、お父さんがもう亡くなっているんですけど、病気を患っていて、お金が苦しかったんですね。で、大店の旦那の、娘はお囲い者になっているんですね。それが、お藤。
【山下】愛人ですね。
【三浦】そうですね。囲われていて、そのお金でどうにか暮らしているっていう親子で、お母さんは、その大店の旦那のことがあんまり好きじゃなくて。このへん語り口がね、私が語ると全然おもしろくなくなっちゃうんですけど、ぜひ、さん喬さん、圓生さんの音源で聞いてほしいんですけど。
要は、おまえがこんな苦労しているんだったら、やっぱりおまえはいい年のまだ19の娘なんだから、好きな男の人と一緒になって幸せになってほしいって、お母さんは願っているんですね。そのためだったら、あんな旦那ともう別れなさいって言うんですよね。
【山下】そしたら、収入が途絶えるじゃないですか。
【三浦】途絶えるんですけど、それで、水茶屋に足繁くかよってくる松五郎っていう、三味線弾きっていう役どころの芸人さんなんですけど。お母さんが言うには、松五郎さんは、おまえのことが絶対に好きだからって言って、まあそうなのかな、とお藤さんは思うんですけど。ある日、そんな話をしながら、お母さんと二人親子で酒を飲んでいたんです。お母さん、ちょっと酔っぱらっちゃって寝るわって言って、そこに、松五郎さんがたまたま訪ねてきて、
【山下】お店に。
【三浦】いや、家のほうです。家のほうに訪ねてきて、それで、じゃあ一杯飲もうってことに。
【山下】娘と?
【三浦】娘と。で、やり取りするんですよ。お兄ちゃんて好きな人いるの? とかそういうね。結局その核心に迫っていって、じゃあ明日、この料理屋で待ち合わせをして、おいしいものを食べよう、お藤、明日、俺のために歌うたってくれって、松五郎さんが言って。その場ではうたわなくて、明日うたってくれって言っていたところに、今日は帰ってこないはずだった旦那が来ちゃうんですよ。この展開、嫌な感じでしょう。やばいでしょう。
【山下】やばいやないですか。鉢合わせやないですか。
【三浦】それで、鉢合わせして、その場はなんとかなるんだけれども、おもしろくないのは旦那で、旦那は、そのお伴の、それこそ太鼓持ちとか連れているんですよ。太鼓持ちとか連れて、飲みなおしだ、とか言って外に出て、一晩中飲んでるんですよ。それで完全にご機嫌斜め、おかんむりで。
それで、お藤は松五郎と約束していた料理屋を訪ねようとするんだけれども、途中でその太鼓持ちたちに見つかって、ほらほら旦那、お藤さん、ちゃんと旦那のこと迎えにきてくれましたよっていう展開になってしまい、そこで酒の相手もさせられ、歌もうたわされ。
松五郎は、どうしたんだろう、お藤こないなって探しにいくと、そのお藤がうたっている声が聞こえる。やはり、茶屋の前に通りかかってしまうと。それで完全に怒り狂うわけですね。
【山下】なるほど、昨日あんなに約束したやんけ、みたいな話ですかね。
【三浦】いや、そこで乗り込めばいいのに、乗り込まなかったんですよ。それで結局、ばかにしやがってってことになり。そこで明らかになるのが、松五郎は武家の出らしいんですね。それで怒り心頭に達して全員を。これ、聞いてもらったほうがいいんですけど。最後は、全員切り殺して自分も死ぬっていう。
【山下】なるほど、すごい話ですね。
【三浦】圓生師匠がそれやると、けっこう重いな、暗いなっていうふうになりますけど、さん喬さんのも、けっこう重かったですね。うーんっていう。
【山下】なるほど、ヘビーな、救いがないですね。
【三浦】だから、ボタンのかけ違いっていうのが、けっこう落語にいろいろあるんですけど、ボタンのかけ違いが、本当にエスカレートして、そこまでいってしまうっていう、そういう悲しさがね。なんか、どこかで引き戻すことができないものかと思うじゃないですか。でもやっぱり、一途な思い込みって怖いですよね。だから、もう全然、お藤さんの言い訳なんかも聞かないわけですよ。
【山下】でも、現代の社会でもありそうですよね。
【三浦】そうですね。だから、その旦那のところで嫌々お酌したり、歌うたったりしてて。ああ、早く松五郎さんのところ行かなきゃって裏口から出ていくんですよ。で、松五郎さんは表からやってくるから、
【山下】それで、すれ違っちゃうんだ。なるほどね。
【三浦】そこでもずれるんですよね。それでまず、ばかにしやがってって言って、1回お母さんのところに使いを出すんだけど、その使いがまたね、
【山下】とんちんかんな。
【三浦】旦那さんからって言っちゃうんですよ。だから、本当に旦那からだと思って、ふんっていう感じで返すと、それをまともに受けた松五郎は、なんだ、親子してばかにしやがってってことになって。まず最初はね、お母さんを切り殺しちゃうんですよ。
【山下】そうなんですね。そこの、カーッとなっていくのが怖いですね。
【三浦】そう、そこがもう、おさまりどころがなく。
【山下】なんか、「パラサイト」と言う映画で、最後、包丁を持って上流階級の人たちを刺し殺すシーンがあるんですけど、ちょっともう、そんな感じですよね。
【三浦】そうですね。思い込みで。その囲っている旦那とか、そういうのにも恨みはあるわけだし、1回逆上すると、おさまりがつかないという。だから、どっちかというと、一途な女っていますけど、一途な男の思い込みの話なんですよね。
【三浦】全然知らない話で行って、聞いて、
【山下】昔からある話なんですか?
【三浦】どうなんですかね。あるんじゃないですかね。初めて聞きましたね。
【山下】どれくらいの長さだったんですか?
【三浦】それも長かったですね。それも1時間ぐらいやっていましたね、さん喬さん。
【山下】落語だと独演会でも、1時間は長いですからね。
【三浦】50分か55分、60分弱やっていましたね。
【山下】さらに、まくらとかがついて。
【三浦】いや、まくらはわりと少なく入りました。今でも、やっぱりまだ、聞いたことのない話がたくさんあるなっていうのを、実感しました。
【山下】すごいですね。本当に奥が深すぎます。
【三浦】だから、圓生百席全部聞いたら、多分すごく。
【山下】それは、CDボックスかなにかになっているんですか?
【三浦】ボックスではなくて、1枚ずつになっています。全部2枚組ですね。だから、50枚出ているんじゃないですか。50枚出ているうち「真景累ヶ淵(しんけいかさねがふち)」が4セット8枚分。あと「牡丹灯籠(ぼたんどうろう)」が4枚分2セットですね。
【山下】長いですよね。だから、8時間ぐらいになるってことですよね。
【三浦】「累ヶ淵」はそうですね、7時間とか、かもしれないですね。だいたい50何分とかの話が多かったりするので。
【山下】「真景累ヶ淵」の本を僕、たまたま、今借りて読んでいるんですけど、最初オリジナルの円朝の「真景累ヶ淵」の本を読もうと思ったら、ものすごい分量で、こりゃあかん、と思って、歌丸さんがやったやつの口伝を借りて読んでいるんですけど、あれも恐ろしい話ですね。
【三浦】「累ヶ淵」はそうですね。でも、岩波文庫を読み始めるとおもしろいので、すいすいいきますけどね。すごくおもしろいです。
【山下】話はおもしろいですよね。大野さんもぜひ、「真景累ヶ淵」落語で見られるのを。
【三浦】YouTubeとかでも見れるんじゃないかな。
【山下】絶対見られますね。
【大野】そうですね。
【山下】それで、今日は、前回は神田伊織さんをゲストで講談のお話をしましたけど、実は初回で大野さんが三浦さんにいろいろインタビューをして、いろんなことを聞こうというので。時間切れで、途中で終わっちゃったので、今からその続きをやっていきたいと思いますが、このへんで時間なので、1回ここでカットします。
ブラインドライターズ
担当:N.Yamabe_BW
ご依頼いただき、ありがとうございました。
私も落語が好きなので、とても楽しく作業することができました。大手を振って、寄席に出かけられる日が早くくることを願っています。
今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。
テキスト起こし@ブラインドライターズ
(http://blindwriters.co.jp/)
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