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講談師(前座)神田伊織さんに講談について聞いてみました。(その2)



【山下】はい。みなさんこんにちは。集まれ! 伝統芸能部開幕のお時間です。この番組は普段は映像制作会社に勤める伝統芸能好きが大集合! 伝統芸能をたくさんの人に好きになってもらうために勝手にPRを頑張る番組です。ポッドキャスターを務めるのは?

【三浦】はい。講談と落語好きの三浦です。よろしくお願いいたします。

【大野】講談に興味ありあり大野と申します。

【山下】はい。そしてMCの山下の3人です。で、実は今日はですね、講談師の神田伊織さんをゲストに迎えました。これからみんなで神田伊織さんに講談に関するいろんなことを伺っていきたいと思います。では、よろしくお願いします。
【三浦・大野・神田】よろしくお願いいたします。

【三浦】話また変わるんですけど、稽古っていうのはどういう形でされるんですか?

【神田】これはもう師匠次第でして、師匠のところに定期的に行ってそこでネタをつけてもらうっていうのがまあ頻繁に行われる感じで、師弟関係もありますし、そうじゃない人もいますし。様々ですね。

【三浦】他の先生のところに習いに行っても良かったりするんですか? 落語家ってそういうの結構ありますよね。

【神田】そうですよね。ええ。それもある程度年数が経ってくるとそういう形になりますね。基本的に講談の演目はどう身に付けるのかっていうので4通りあると思うんですけど。

【三浦】4通り。

【神田】まず、1つは自分の師匠から直接ネタをもらう。で、稽古つけてもらう。もう1つは、他の先生のところに行ってネタをもらう。もう1つは、講談の場合は講談本っていう明治・大正の頃の講談を記録した本が山ほどあるんです。その講談本から話を起こして台本を自分で作るっていう。

【三浦】作る。

【神田】古典を蘇らせるっていう作業がありますね。あともう1つは、全く新しい新作を独自で作るっていう。

【三浦】作る。

【神田】はい。

【三浦】ああ、新作を。

【山下】新作。

【神田】はい。

【三浦】講談本って今おっしゃいましたよね。

【神田】はい。

【三浦】講談にちょっと興味持ってけっこう経つんですけど、いろんな講談会行って、たとえば忠臣蔵外伝とかこういうののいわゆる本家、どっかにないのかなってちょっと探したことあるんですけど、やっぱり一般人だと探しきんないですよね。

【神田】そうですね。あの、本来の講談本っていうのは和本の和綴じの本なんですよ。明治の頃のものとかは。で、その和綴じの本は古本屋で。

【三浦】古本屋で探せばあるんですか?

【神田】あります。ありますし……。

【三浦】なるほど。

【神田】あと今は国会図書館で。

【三浦】国会図書館。

【神田】で、デジタルライブラリっていうのであります。そこで検索するとたくさん出てきます。で、一応和綴じのものでなくても昭和に入ってから作られた講談全集とかっていうのがあるんですけど、よっぽどおっきい図書館でないと置いてないですね。

【三浦】そうですね。普通の区の図書館で探しましたけど全然出てこなかったですね。

【神田】ないですね。

【三浦】国会図書館って貸してくれないですもんね。

【神田】国会図書館は貸してくれないですね。

【三浦】閲覧だけですよね。

【神田】そうですね。

【三浦】師匠によって違うんでしょうけど、入って最初に習う話って決まってるんですか?

【神田】これは実は決まってるんです。これはどこのとこに入門しても。

【三浦】あ、どこも一緒ですか。

【神田】一緒なんです。昔から決まってるんです。講談師は最初は「三方ヶ原軍記」。

【三浦】「三方ヶ原軍記」。

【山下】「三方ヶ原軍記」。

【三浦】あの、講談会で何度か前座の方がやるのを聞いたことあります。

【神田】あ、そうですか。ええ。あれはもちろん前座が稽古としてもやるんですけれども、真打になっても時々。やっぱり掛けたりしますね。講談の一番んー。

【三浦】基本になる。

【神田】原点ですし。

【三浦】原点。「三方ヶ原軍記」。

【神田】ですし、歴史的にも講談っていうのはもともと軍談と言って合戦の様子なんかを。

【三浦】戦記物ってことですよね。

【神田】そうですね。読んで聞かせていたので。で、その軍談を読むことで講談の声と拍子を身に付けるっていうのがもう昔からの。

【三浦】基本が身に付くってことですね。

【神田】そうですね。

【三浦】「三方ヶ原軍記」を読むことで。

【神田】はい。ええ。

【三浦】「三方ヶ原軍記」って合戦で言うと何合戦の。

【神田】三方ヶ原の戦い。

【三浦】戦い。

【神田】はい。徳川家康が。

【三浦】徳川家康。

【神田】武田信玄に負けて。

【三浦】そうですね。

【神田】ええ。生涯ただ一度の負け戦と。

【山下】なるほど。

【大野】なるほど。

【神田】その話を昔からずっと。

【三浦】信玄出てきますね。

【神田】語り伝えてきてる。

【三浦】三方ヶ原の合戦。家康が生涯一度、信玄に負けた。

【神田】そうですね。

【三浦】それすごいですね。それがやっぱり講談の基本になってるっていう。なんか歴史的な。

【神田】そうなんですよね。江戸時代を通じても、徳川家にとっては言ってみれば恥の。

【三浦】そうですよね。

【神田】記録なんですけども、それを大事にしてるんですよね。

【三大野】なかなかドラマチックさと実況中継の内容が、ぎゅっと詰まってるとかそういうので第1歩のものになってるんですかね。

【神田】三方ヶ原の内容っていうのは、ドラマ仕立てではないんですよね。むしろその合戦に参加した武将がどんな旗を持って、どんな鎧を着てっていうのを永遠と名前を読み上げている。

【山下】描写してるんだ。

【三浦】そうですよね。武将の紹介みたいな印象を持ちましたね。

【神田】そうなんですよ。だから、そこら辺っていうのが近現代のドラマ、物語を聞かせる話とはなんか全然違いますよね。それこそ、昔の叙事詩とか、世界各地共通する神話的な……。

【三浦】なるほど。

【神田】お話なんかだと神々の名前が永遠に。

【三浦】神々がどういう感じとか。

【神田】とか、どこかなんかそういうのに。

【三浦】列伝みたいなことですかね。

【神田】列伝……。

【三浦】列伝だとそうか……、エピソードがあるからまた違いますね。

【神田】また1人の武将の話になってしまうと思うんですけど。

【三浦】そうか。

【神田】合戦自体の記録なんですよね。

【三浦】どんな武将がいて、どんな旗立てで、どんな甲冑着てて。なるほど。

【神田】記録なんで、講談師はもともと御記録……、天下の御記録読みって江戸時代は。

【三浦】天下の御記録読み。

【神田】威張ってたんですよ。昔の徳川家の歴史、合戦の様子を語り伝える。記録を伝えるという側面があるっていう。

【三浦】記録を伝える。そこのところを一手に引き受けて歴史をつないでいくっていうことなんですかね。役割的に。

【神田】そういう一面がありますし、それが講談の原点なので、そこだけはずっと大事にしているところはありますね。三方ヶ原を読むときに「修羅場」っていう独特の。

【三浦】修羅場。

【神田】調子で読むんですけど、修羅場の調子が講談の語り口の基本になっているのでそれを最初に。

【三浦】つまり、それを最初に習うことが型が、基本が身に付くっていうことになるんですね。

【神田】そうですね。

【三浦】だからそうか、講談会で前座さんが出てくると必ず「三方ヶ原軍記」数分聞くことができますもんね。

【神田】そうですね。

【三浦】でもなんか読んでるとこ、違ったりしますよね。

【神田】そうですね。長いのでだいたい前座、講談協会でしたら、城跡で10分っていう時間を与えられるので、その10分の中で読めるところ。

【三浦】全体でどのぐらいある話なんですか? 「三方ヶ原軍記」って。

【神田】うーん、この「三方ヶ原軍記」の台本も師匠によってどこまで伝わるかっていうのもまた違うので。

【三浦】それも違うんだ。

【神田】そうなんですよね。私は今持ってるものだと30分はできますけど。人によってはもっと長い。

【三浦】もっと長い。

【神田】持ってる方も。

【三浦】そっから「三方ヶ原軍記」で始まっていろんな話を習っていくっていうことですね。

【神田】そうですね。最初はやっぱり武芸物と呼ばれる。

【三浦】武芸物……宮本武蔵とか。

【神田】宮本武蔵とかが多いですね。あと、前座の場合は、あんまりおっきなネタをかけない。その辺の判断もあります。

【三浦】勉強するのはいいんですよね。

【神田】勝手に。

【三浦】勝手に。

【神田】勝手に覚える分にはいいんですけど、前座が講談界に出る時に結局寄席もそうですけど、後から出る方、特にトリの先生が一番引き立つように。

【三浦】そうですよね。

【神田】するっていうのが寄席の流れなんで。そうすると、前座なんかは最初に軽い話をして、それから後の人が付かない話をかけるっていうのが大事で、話を……ネタがつくっていうのを皆さんすごく気にされるので。同じような話にならないように気を付けるんですけども、その時、武芸物は無難なんです。

【三浦】そうなんですね。まあ、先生方が何を話すかって結局分かんないわけですもんね。最初はね。

【神田】分かんないんですけども、この先生はだいたいこれを得意にしてるとかっていうのはありますね。

【三浦】そうするとそこは避けて。

【神田)そうですね。

【三浦】そうすると、武芸物はおそらく話さないだろうっていうことで。

【神田】そうですね。

【三浦】やっとくと。

【神田】そうですね。武芸物はまあ。武芸物なら前座がやって怒られることってまずないと思います。

【三浦】ない。そういう話じゃないのを読むときっていうのはもう自分たちの勉強会とかそういう。

【神田】そうですね。そういう場では。

【山下】伊織さんはそれをどうやって……
覚えるのはどうやってやってらっしゃるんですか?

【神田】もう毎日毎日とにかく新しいネタを覚えつつ、一方で明日の会のために前覚えたネタを攫ったり、1週間後の会のためにネタを攫ったりって常にいくつかのネタを同時並行で。

【山下】いやあ、それはもう丸暗記っていうか。全部覚えるんですよね。すごい。

【神田】私はまずは最初はそうですね。

【山下】僕なんかだともう10分のものが全然覚えられないんじゃないかってすごい心配になっちゃうんですけど。

【神田】これはもう、それが仕事になれば誰でもたぶんできると思います。

【山下】なるほど。そうですか。

【三浦】だんだん体が覚えてくるんですよね。きっとね。落語なんかもやっぱり皆さん当然覚えてらっしゃって。あれ、流れがあるから。こうきたら次はこうだろうなっていう。ただ、落語の場合そこで1回なんか詰まったとしてもひとつの別の展開を瞬時にやることができそうな気がするんですけど。

【山下】アドリブが入る。

【三浦】講談ってそうはいかないような。

【神田】いや、意外と先輩方は覚える時も一言一句ではなくて大まかに覚えてそれで。

【三浦】なるほど。

【山下】なるほど。

【三浦】それで、できちゃってる方が多いですね。そうすると毎回毎回ちょっとずつ変わったり。

【三浦】違うんですか? 話が。

【山下】そうすると筋の全体の流れを覚えるんですか? 最初に。

【神田】はい。そこで対応できる方が多いですけど、私は無理ですね。私は一言一句覚えてやらないとできないですけども。だんだん場数を踏んでもう一言一句覚える余裕がなくなってくるみたいですね。会がどんどん増えてくると。

【三浦】そうですね。追い付かないっていう。

【三浦】丸暗記……。

【神田】一夜漬けで対応しなきゃいけなくなったりするんで、そうすると一夜漬けでもだいたいの流れを掴んで、それで講談にかけて。できちゃうんですよね。場数を踏んでるから。

【三浦】まああくまでももう場数っていうことなんですね。

【神田】だと思います。私なんかとても。アドリブを入れてちゃんと時間に収めるので。

【山下】すごい。

【神田】すごいなと思いますね。

【山下】すごいな。

【三浦】そうですよね。いつもいつも、たっぷりっていうことでもないですよね。

【神田】じゃないです。特に講談の何名かで出る会の場合は時間をみんなすごく気にするんです。必ず何分でやるっていう。でも、たまに前の方がちょっと延びちゃったりしたら自分は縮めて。

【三浦】そうなんだ。

【神田】後の方に迷惑かけないように。ってなるとその時間に合わせて時間を調整するんですよね。

【三浦】調整する。

【神田】それを臨機応変にできるのがいい芸人だと思うんですけど。それはすごい難しいですよね。と私は思いますけど。やっぱり先輩方はそうやってますね。

【山下】時間はなんか時計か何か見ながらやるんですか?

【神田】そうですね。

【山下】あ! そうなんですね。

【三浦】大体、演芸場でもどこでも奥に時計はありますね。

【神田】ありますね。

【山下】なるほど。

【三浦】今ってもちネタっていうんですか? どのくらいあるものなんですか? 

【神田】まあ、大体わたしは1年に10席ぐらいは覚えるので、40ちょっとぐらいですかね。

【三浦】それからでも、これからどんどん増えてくるわけですよね? 

【神田】まあ、そうですね。それはホントに楽しいところというか、時間をかければかけるほど、なんとかこの世界にいればいるほど、演目は増えますし。

【三浦】そうですね。

【神田】それからその場数を踏むんで、表現力とか、さっきの対応力が徐々に、なんだかんだ下手くそといわれてる人でも、時間かけていればできるようになるって皆さんおっしゃってるので、時間をかけるだけ伸びてくっていう点では、すごくやりがいがありますし、歳をとるのが楽しみに。

【三浦】あ! 確かにですね。

【山下】とればとるほどですよねー。

【神田】味が出てきて話の説得力っていうのは、やっぱり見た目も若いとどうしても生まれにくいので、僕もヒゲを生やしたおじいさんになるのが楽しみです。

【三浦】ヒゲ生やさないといけないですか? 

【神田】いや、そんなことはない。

【山下・三浦・大野】わははは!

【神田】でもね、定年がなくて、ずっとできるっていうのも楽しいんですよね。ホントに新しいことずっと。

*【大野】一生やっていけるってことですよね。

【三浦】あの、落語家さんっていわゆる前座・二つ目・真打ちってあるじゃないですか?  講談師の世界もそれが……

【神田】一緒ですね。

【山下】上方はないんですか? 

【神田】上方はないですね。上方は落語さんもないですもんね。

【山下】あ! そうなんですね。

【神田】上方はそうなんですよ。落語家さんも前座・二つ目ってないんですよ。

【山下】へー。

【神田】あの制度は。

【山下】なるほど。知らなかった。

【三浦】「忠臣蔵」って別に連続ものってことでもないんですかね?  あれは。

【神田】そうですね。まあ1つ1つの……

【三浦】「慶安太平記」ってなんかずっと続きものみたいなのある……

【神田】ありますね。ただ、「慶安太平記」は、やっぱ伯山先生……松鯉先生の一門の方が連続ものとして取り組んでますけども、わたしのいる講談協会のほうでは、あれをかけてる方はあんまりいないですね。

【三浦】あんまりいないですね。講談協会のほうで1番皆さんよくやってる*演目ってどういううのはあるんですか……? 

【神田】うーん、いやホントに人によっても全然違いますけども……まあ、連続ものの会っていうのがあって、若手の二つ目さんとか、若手の真打ちがよく出てまして、そのときそのときで、それぞれの方がなんらかの連続ものを選んで取り組んでるんですけども。

【三浦】それは別に決まってなにってわけではなく? 

【神田】決まって俺はっていうのはないですね。ただ、昔は一門によって「この一門はこの演目」っていうのがありますね。例えばその神田だったら「次郎長」とか。

【三浦】あ、「清水次郎長」。

【神田】はい。神田は、侠客を昔はやってましたね。で、一龍斎の一門ですと荒木又右衛門とか。いうのが昔は結構、差別化といいますか、一門によってこのネタっていうのがあったんですけど、今はそういうのはないんですね。そういえば今、新しい連続ものちょっとしかないと言いましたけど、「笹野名槍伝」っていうのを最初から最期までね一応やったことありましたね。忘れてましたね。

【三浦】それはどういう連続ものなんですか? 

【神田】笹野権三郎という槍の名人が父親を打たれて、その敵討ちの旅をして、その道中で色々な出来事があって、最後に敵討ちを果たすと。ま、これ、実は「笹野名槍伝」に限らず明治の頃の連続ものの、特に武芸ものの基本パターン。

【三浦】笹野めいそうでんの「そう」って……

【神田】あ、槍(やり)です。

【三浦・山下】ああー・

【神田】まあ、あのよくその海賊退治っていうものが……

【三浦】ああ、海賊退治。よく聞きますね。

【神田】ええ、「笹野名槍伝」
のなかの海賊退治だけよく取り上げられてるんですけど、あれ、ホントは長い話の一部なんですね。

【三浦】あの、最後に出てきて海賊の親玉、海に引きずりこむのは……

【神田】そうですそうですよね。

【三浦】なんか見たことあります。

【神田】あ、そうですね。

【三浦】あ、あれがそうか。長い話の一部なんですね。

【神田】ホントは長いんですね。あれはただ、旅の途中で移動している瀬戸内海で海賊に襲われたっていう本筋とは全然関係ない話なんです。

【三浦】敵討ちとは関係ない?  旅の途中の話。

【神田】はい。

【三浦】割と連続もののそういうエピソードを色々おりまぜてくって、こう……

【神田】あ、もう完全にそうですね。そういうパターンですね。結局、実のところは敵討ちの大筋よりも、途中途中のちょっとしたエピソードのほうが、面白いってことが多いんで。

【三浦】面白かったです。

【神田】そうすると、途中のエピソードだけが残って。

【三浦】残って独立した話で……。あれですもんね。「宮本武蔵」もいわゆる巌流島のオオカミが……

【神田】オオカミ退治のところ(笑)。

【三浦】これ、なんやろなというぐらい面白いですね。

【神田】うん。

【三浦】あの、講談読んでで、色んなお客さんいると思うんですけど、お客さんって、どういう色んな千差万別だと思うんですけど、まあ聴き方っていうと堅苦しくなりますけど、演じるほうから見た観客ってどういう印象……まあ、広さによると思うんですけど。

【神田】やっぱり会によって全く違いますよね。どういう会かっていうので、基本的に定席石と呼ばれる毎月あるような会にいらっしゃるお客様はご常連と呼ばれる方で、昔からずーっと講談が好きで、毎月のように通ってらっしゃる会。ご常連の方は、うーん講談のお客さんの特徴なのかもしれませんが、そんなにおおげさに「わーっ」とか反応はしないで、腕を組んで黙ってこう……

【山下】あはは。

【三浦】見てるといかにもですっていう(笑)。

【山下】あんまりニコニコともしない。

【神田】ニコニコしてないですね。で、目つぶって聴いてたりするんで、起きてんだか、寝てんだか分からなかったり。

【三浦】もうでも、見てて分かるわけですね。「あ、またこの人来てるな」って。

【神田】あ、もう完全にそうですね。いっつもおんなじようなご常連の方ばっかりなんで。で、ただすぐに前座なんかだと、木戸に立つんで、木戸でご常連の方とちょっとやりとりします。

【三浦】あ、そっかそっか。

【三浦。大野】あー!

【山下】なるほどなるほど。

【三浦】そうですよね。そのときなんか「頑張れよ」とか声かけられたりするん……

【神田】そうですね。あとは例えばお正月でしたら、ちょっとお年玉をもらえる。

【三浦】あーいい話ですね。

【神田】そう、応援してくれてる人がいるっていうことで素晴らしいですよ。

【三浦】そういうとき例えば「来週勉強会自分の会があるんです」みたいなことも言ったりする……

【神田】そうですね。そういうご常連の方にお声がけして定席とは別の会にいらしていただくっていうことは多いですね。

【三浦】そういう定席とは別の会っていうのはどういうところで……

【神田】これはホントに色んな会があるので、その主催者次第なんですよね。主催者の方がどこの会場を押さえて会を開くかで、またその主催者の方がどういうお客さんを呼ぶかで全然違うんですよね。そうすると例えばうちの師匠の会ですと講談好きってよりも、師匠を個人的に応援してる人が会を開いて、師匠を応援してる人がお客様としていらっしゃる。すると、講談自体はあまりよく知らないというお客様だったりするんで、そうすると、そこで講談のご常連が喜びそうな演目をやってもあんまり伝わらないですけれど、その辺のお客様によってどういう演目を聴いてもらうかっていうのを判断しないといけないところがありますね。

【三浦】ああ、なるほど。演目っていう、今お話し出(てき)きましたけど、演目としてこれからすごくやっていきたいものっで、読んでいきたいものとかって今ありますか? 

【神田】それはもう、いっぱいありますね。さっき講談本の話が出ましたけども。講談の演目は落語よりはるかに多いんですね。

【三浦】ああ、なんかそれも誰かのどなたかの講座で聴いたことあります。

【神田】で、その山ほどあった……

【三浦】4千とかっていう話……

【神田】まあ、多分もっとあると思いますね。数えられないと思いますね。そのいくらでもあるお話のなかからどれを読むかっていうので、全部覚えることはもう絶対にできないですね。ただ、今では忘れられてる話って
いうのがたくさんあるんです。もちろんあんまり面白くないから忘れられたものも多いんですけども、今読んでみても面白いのに誰ももうやらないっていう話も結構あるので、……

【三浦】そういうのは是非やって欲しいですね。

【神田】そうですね。蘇らせたいっていうのはありますね。

【大野】それは是非やって欲しいですね。

【三浦】誰もやってないわけですもんね。

【神田】そうです。それはホントにいくらでもあるんでそれを復活させるっていうのは講談師としてちょっとやりがいがあると思いますし、わたしなんか講談本を集めたり読んだりするのが好きなんで、自分でホントに面白いもの見つけて覚えてみたいなっていうのはありますね。

【三浦】こういう言い方が正しいかは別として、学究肌っていう感じですか?  学究派っていうか突き詰め追求してく……

【神田】うーん……

【三浦】落語家さんにもそういう人いますもんね。

【神田】そうですね。でも講談師のほうがやっぱり読むっていう要素が強いので講談本、集めてる講談師は結構います。

【大野】あ、そうですか。ま、講談がホントに好きでそれを集めて読んでっていう。それでまた講座にかけるんですね。

【神田】そうですね。

【大野】それは楽しみですね。古本屋さんで足繁く通って買ってきたりとか? 

【神田】まあ、今はネットで買いますよね。ネットの古本屋で買いますし、あとヤフーオークションとか。

【山下】そういうの、出てるんですね。

【神田】出てますね。講談本、千円くらいで買えますもん。

*【大野】あ、そうなんですか。誰が売りに出してるんですかね。元講談師? ) そんなことないですか? (笑)

【神田】生活に困った講談師(笑)。それをほかの講談師が買ってくれた。

【大野】なんか互助的で良いですね、それも(笑)。

【神田】そうですね。

その3に続きます。

以下 書き起こしを担当してくれたブラインドライターズの担当の方の感想です。

担当者:小林 芽以
ご依頼ありがとうございました。落語は知っていたのですが講談という言葉を初めて聞いてとても興味深かったです。


担当:立川くるみ
今回もご依頼いただきありがとうございます。神田さんの「どんな人でも続ければ上手くなっていくから歳をとるのが楽しみ」という言葉が印象的でしたし、自分もそうありたいと思いました。
また、講談の数々のストーリーそのものにも興味が沸きました。

テキスト起こし@ブラインドライターズ
http://blindwriters.co.jp/


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