「仮説の仮説の仮説をたてる」元リク・小澤美佳が語る目標130%を達成するための戦術
「私の未達時代」では営業の第一線で活躍するトップセールスを訪ね、彼らの考える営業の極意を語っていただいている。今回は元リクルートで、プレイヤーとマネージャー両方の経験を持つ、小澤美佳さんに取材。前半では新卒時代まで遡り、彼女の営業人生に迫った。
後半では、彼女が大切にしている姿勢や明日から役立てられる営業Tipsを紹介。最後には、彼女にとって営業のやりがいや、プレイヤーとマネージャーの違いと面白さについて教えてもらった。
トップセールスになるために心がけている「三つの姿勢」
——小澤さんが営業する上で大切にしていることを教えてください。
プレイヤーとして常に心がけていることは三つあります。
一つ目は「現地現物」の姿勢。現地現物とは、実際に現地へ足を運び、実態を見て物事を判断するということです。
普段はトヨタの生産方式の基本的姿勢として語られる言葉ですが、営業にも当てはまると思っていて。お客様の課題は何なのか、何のためにやっているのか突き詰めるためには、現場に触れて判断することが必要なんです。
——「現地現物」とは、実際どのように行動に移してきたのでしょうか。
例えば全国展開をしているお客様であれば、マネージャーに許可をもらい、北海道でも沖縄でも飛んで行っていました。
他にもお客様が喫煙者であれば一緒に部屋に入り、そこで話を聞いたり。時にはお客様先の女性社員を集めて、女子会を開いたり。
確かにお客様にとって私は“採用屋”なんですが、採用をお手伝いする人だけには止まっていたくはなかった。営業の正解がないなかで、お客様のためになるのであれば、どこまででもやろうと決めていました。
——心がけていることの二つ目について、教えてください。
二つ目はお客様よりもお客様のことを考え、知るということ。
お客様から「営業が全然売れず、営業組織がうまく回らない」と相談があった際には、「もっとこうしたらいいんじゃないか」とか、「このようにKPIを設計していきましょうよ」と積極的に提案をしていました。
——小澤さんが、いかにお客様に真摯に向き合われていたのかを実感します。
そうですね。会社の4大経営資源である「ヒト・モノ・カネ・情報」において、「ヒト」についてだけは、常にプロフェッショナルでなければならないと思っていましたから。
三つ目は「営業は“愛人”であれ」という姿勢です。お客様と奥様でも恋人でもなく、愛人のような距離感。つまりビジネスの関係ではあるけれども、誰よりも裏の情報やお客様の本音を知っているような関係でいることを大切にしています。
「小澤さんがいたから上手くいった」と言われなくてもいいんです。むしろ黒子でいるべき。お客様の目標を達成するために、一番頼りになる存在でいることが大事なんです。
「モンモン妄想」でお客様とのディスカッションに変化を
——本記事を読んでくれた方々が、明日から真似できそうなTipsについて教えてください。
営業のTipsは、忘れないようにnoteに書いていて。例えば以下の「常勝軍団の作り方について」では、実際に私がマネージャーだった時、数字を達成するために何をやったのかについて、簡単にまとめています。
営業組織【常勝軍団】の作り方|小澤美佳 | HELP YOU広報|note
——A.営業数字の追い方で書かれている、「モンモン妄想」が気になります(笑)。
これは、営業活動の進捗を管理する「ヨミ表」に関するTipsです。ヨミ表とは、商談途中にある各案件を、受注で見込める金額や時期、確度(受注が見込める可能性)によって分類し、表にまとめているもの。それによって、全体目標に対する現状を、数値的に理解することができるのです。
普通は「Aヨミ・Bヨミ・Cヨミ」などと分かれているのですが、私は「ネタ」を加え、さらには「妄想・モン妄想・モンモン妄想」という欄を作っていました。
こうだったらこうかもしれない、あの人に会えたらこうかもしれないなど、「アリもしないけど、なくはない」という温度感で妄想し、仮説の仮説の仮説を立てる。そのおかげで、なぜかヨミはないのに周りから「美佳は達成しそうだな!」と言われていました(笑)。
——仮説を立てるのはとても大切なことだと思います。立てるだけでお客様とのディスカッションの内容が変わりますよね。
おっしゃる通りです。お客様に対していろんな打ち返しができるようになり、「こんなにも考えてくれていたんですね」と言われるようになりました。
——あと気になったのは、「アスピレーション目標」の話。
アスピレーションとは、ビジネスにおいて「向上心」や「目標に対する熱い想い」という意味合いです。
リクルートにはこの「アスピ(レーション)目標」を設定する文化があります。例えば、目標が300万だとしたら「目標の130%を達成するにはどうしたらいいのか」を考える。与えられた目標を達成することは当たり前で、さらに「自分はどこまで伸ばしたいのか」ということを問われてきました。
自分を可能性を決めつけすぎず、挑戦する営業へ
——プレイヤーとマネージャー、どちらも経験した小澤さん。もともとマネージャーに興味はあったのでしょうか?
いいえ。もともとは興味はありませんでした。
しかし、ある時上司が「せっかくだったらマネージャーを目指せ」とマネジメントのいろはを叩き込んでもらって、マネージャーしか見れない資料をこっそり見せてくれて、メンバーが成果を出せるのもマネージャー次第ということを知った時に、非常に面白そうだと思ったんです。そのおかげで「HRの最高峰」と呼ばれるリクルートで、マネジメントを経験せずに辞めてしまうのは勿体ないなと思い、プレイヤーとして感じてきた楽しさとは違う面白さを体感してみたくなりました。
——振り返ると、自分はどちらに向いていると思いますか?
プレイヤーは楽しいですよね。動いたら動いた分目に見えて成果が出ますし、お客様から「ありがとう」と言ってもらえる機会が多いのは、やっぱりプレイヤーだなと思います。
逆に、マネージャーはどちらかというと苦しい部分もあって。けどその分、自分一人で動ける範囲を超えて、がっと世の中を変えていける可能性がある。社会に変化を仕掛けたり、インパクトをもたらしたりすることは、とても難しいですが勉強になりました。
——では最後に、小澤さんにとって営業のやりがいについて教えてください。
自分が入ることによって、お客様を通じてお客様が変わっていく姿や、お客様の会社に人が増えて組織が大きくなっている様子。今まで採用できなかった層が採れるようになり、それによって会社自体が変化していくところ。そういった部分を見ることができた際は、やりがいを感じます。
もちろん、人それぞれ向き不向きはあると思うのですが、今プレイヤーの方々もぜひいろんなポジションに挑戦して、営業を楽しんでみてくださいね。
ライター:フジカワハルカ
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