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「自己開示」で売る。青木想が語る、ワーキングマザーの保険営業への挑戦

「私の未達時代」では第一線で活躍するセールスパーソンを訪ね、失敗をしていた過去から売れるようになった現在までのストーリーを紹介していく。

4回目となる今回は、元リクルートで企画職から営業へ転職したキャリアを持つ、青木想(あおき・そう)さんを訪ねた。本記事では彼女がなぜ営業になったのか、これまでの苦悩や失敗談、売れる組織に必要なことなどを語っていただいた。

「営業を始めた頃は泣くほど辛かったです」と話す彼女。そんな日々をどのように乗り越えてきたのだろうか。

プロフィール
慶応義塾大学総合政策学部を卒業後、新卒で株式会社リクルート(現リクルートマーケティングパートナーズ)に入社。計数管理、事業戦略立案から法務、総務業務、サイト設計など、リクルートの企画職を全て経験。入社4年目と6年目に出産をし、キャリアの半分以上をワーキングマザーで過ごす。離婚を機に、一度しかない大切な人の、大切な人生に、自分が直接役に立てるような仕事をしたいと思い、全く畑違いのフルコミッションの外資系金融機関の営業職へ転職。初年度新人コンペンションで1387人中3位、女性営業マン1位を獲得

ワーキングマザーとして、企画職から外資系保険の営業へ

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——現在のお仕事について教えてください。

営業アウトソーシング事業を行う株式会社Surpass(以下、Surpass)でCMOをしています。Surpassは従業員の8割が女性で、アポイント獲得やアフターフォローなど、クライアントの営業活動をサポートをしています。

——新卒で入社したリクルートの配属は経営企画。そこから、なぜ外資系保険の営業職に転身することにしたのでしょうか?

きっかけは離婚をしたことです。娘を2人育てながら働くために、やればやるほど稼げて、何かあったときに助けてもらうための「人脈」が広げられて、営業力が身につくところ。その3つが揃うのは外資系の保険営業以外ありませんでした。

営業に関しては、学生時代にコールセンターや家電の販売、試食販売、携帯のショップなどのアルバイトをしていて、ずっと興味があったんです。

——外資系保険会社の営業について、具体的に教えてください。

外資系保険会社の営業はとにかく自由。基本的にはいつどこで何をしていても問題なく、ただ売れてさえいればいい。やったらやった分を稼げて、会社からも評価される仕組みになっています。

また外資保険営業にとって重要なのは人脈作りです。最初は自分の周りにいる人から声をかけていく。そのため「その人がどう生きてきたかが如実に成果に現れる」と言われます。

——青木さんも最初は知人への営業から始めたのでしょうか。

そうですね。保険の営業ではまず「知り合いに保険を売る」というハードルを越えられない人が多いです。一方で私はそこに対して抵抗はありませんでした。きっと自分自身が保険の重要性を理解し、腹落ちした状態だったからだと思います。

またそこをクリアしないと、人脈を広げられないことも分かっていたからかもしれません。2ヶ月目、3ヶ月目と時間が経つにつれ、人脈は尽きてくる。保険の営業として人脈を広げるためには、通らないといけない道でした。

自己開示をきっかけに、営業が“辛い”から“楽しい”ものに

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——入社してからは、どのように営業力を身につけていったのでしょうか。

まず保険を売るためのノウハウを学びました。生命保険の営業は歴史が長く、生命保険ならではの売り方があるので、基礎からみっちり教えてもらいましたね。

最初の1ヶ月間は、朝8時から夜6時まで勤務し、その後も先輩とのロープレや保険の資格の勉強。子どもがまだ小さくて夜遅くまで働けなかったので、朝は早く起きる。毎朝自転車をこぎながら、先輩のロープレをイヤホンで聞いていました。

——未経験で飛び込んだ営業畑。最初から売れていましたか?

そうですね、基礎から丁寧に教えてもらっていたおかげで成果は出ていました。しかし営業の仕事自体は辛くて、毎日泣いていましたね。

まずお客様との距離感が分からない。それもあって、お客様と接するのはどこかぎこちなく、自分の殻を破りきれず、満足いく商談がなかなかできませんでした。

私自身が離婚を経験したことや子供がいること。それらは私にとって大事な要素かつ、自分自身が保険の営業をやっている理由でもあるのですが、いざお客様を前にすると「これを言ってしまったらどう思われるだろうか」と不安になり、自分をさらけ出せなかったんです。

——自分をさらけ出せなかったことを、どのように克服していったのでしょうか?

ある時、昔一緒に働いていた方のもとへ保険の営業をしに行ったんです。すると商談のなかで、お父様が亡くなっていて、その保険金で大学に行っていたことをお話ししてくださって。また親の借金を自分が肩代わりして払っていることなどを話してくれた方もいて、いつの間にか相手のプライベートの話になっていました。

もともとよく知っている方ではあったのですが、今まで知らなかった事実、一緒に仕事をする時には知らなかった新たな一面を知ることに。そこで気がついたんです。「保険とプライベートの話は隣り合わせなんだ」と。

——保険を語るには、プライベートのことも語る必要がある。

そうですね。これまではお客様がプライベートを明かしてくれているのに、私自身は自分のことを包み隠していました。

しかし保険を売るには「自己開示」する必要があると。「私はこう思っていて、こういう人間で、こういうきっかけで保険に入って仕事をしている」ということを、お客様の前では全てオープンにしていかなければいけないと気がついたんです。

そう気づいてからは、積極的に自己開示するようになりました。すると応援してくれる人が増え、自分の気持ちも楽になり、営業の仕事も楽しめるようになりましたね。

定期的に多くの人と交流し、人脈を広げ続ける

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——これまでの失敗談があれば、教えてください。

ゴリっと受注しすぎてしまったのが原因で、受注した後にお客様から「やっぱりやめたいです」と言われたことはあります。

他には日曜日に泣きながらテレアポをしたこともありました。自分の中で1週間に2件受注すると決めていたので、土曜日の夜に1件ももらっていないと、日曜日手当たり次第「保険に入ってください、お願いします」と電話して。アポが取れたらすぐお客様先へ直行。それでなんとか受注できました。

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——受注できなくても「また来週頑張れば良いや」と諦めてしまう方も多いと思うのですが。

3回ほど日曜日の夜に“お願いセールス”をして乗り越えたことがあるのですが、その時に「できるかどうかではなくて、やるかやらないかだ」とまさに思ったんですよ。

ここで諦めたとしても、ただの「売れる人」にはなれると思うのですが、トップを狙うのであれば決めた目標は絶対に守り切らなければいけない。そんな強い意思を持っていたので、1300人いる新人営業の中で全体3位、女性の中で1位を取ることもできました。

——青木さんが売れ続けるようになるには、何かきっかけがあったのでしょうか。

知人からお客様を紹介してもらったことが、良い成功体験になりました。その時をきっかけに、人脈の広げ方が徐々に分かるようになりました。

——人脈作りという観点で、何かしていたことはありましたか?

週1で飲み会を開催していました。自分のお客様を呼び、お客様には友達を連れてきてもらって、定期的に多くの人と交流できる場を作っていましたね。

他にもセミナーや交流会など、人が集まる場所にはどこでも顔を出していました。まっすぐ家に帰ることはほとんどなくて、商談が終われば誰かに会いに行く。よほどのことがない限り、誰かがいる場所に行って、とにかく人に会っていました。

鍵は「OODA」のサイクルをいかに素早く回せるか

——青木さんがCMOを務めるSurpassは従業員の8割が女性。男性と女性の営業スタイルに違いはあると思いますか。

思います。女性は比較的「農耕型営業」が得意な方が多いです。農耕型営業は種をまき、水分や養分を与え穀物を育てる農家のように、お客様との関係を大事にしながら、ゆっくりと商談を育てます。

逆に「狩人型営業」のように、多くのお客様と接点を持ったり、素早くクロージングしたりすることは苦手な方が多いですね。

——「農耕型営業」の強みは、どのような場面で活かされるのでしょうか。

昨今はSaaSビジネスやサブスクリプションサービスが増え、受注して終わりではなく、むしろ受注がスタートの時代。いかにLTVを最大化するのかが重要な時代において、CS(カスタマーサクセス)職の需要が高まっています。

そういった時代では、「農耕型営業」で、丁寧なコミュニケーションやちょっとした気遣いができる営業は求められていると思います。

——ありがとうございます。では最後に、売れ続ける組織を作る秘訣を教えてください。

意思決定を促すサイクル「OODA(ウーダ)」をいかに回せるかどうか、それに尽きると思います。OODA(ウーダ)とはつまり観察(observe)、判断(Orient)、決定(Decide)、行動(Action)です。

とにかく目の前のことに向き合い、そこから得られる知見をもとに、新しい施策を考えて、実行する。そのサイクルを回し続けることを、いかに組織全体が本気でやれるかが、売れ続ける組織をつくる秘訣かもしれません。

でもこれは何も営業組織に限った話でもないかもしれないですね。営業マン個人も売れ続けるためには、OODAの考え方で営業行動を変化させ続けることで成果がでるのではないかと思っています。

3ヶ月前の成功法は今の成功法とも限らないなかで、いかに営業のノウハウを「形式知」として蓄積するか、そして再現性を作れるかが肝になってくるのではないでしょうか。

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ライター:フジカワハルカ

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