鍵は「紹介営業」!より大きな成果を導くための時間の使い方
「私の未達時代」ではトップセールスを訪ね、彼らの考える営業の極意を語っていただいている。今回インタビュイーを務めてくれたのは株式会社morich 代表取締役 兼 All Rounder Agent 森本千賀子(モリチ)さん。前半では彼女の過去に迫り、そもそもなぜ営業を選んだのか、またどのような新人時代を過ごしてきたのかを語っていただいた。
後半は時間の使い方など、彼女が営業として成功するために行っていた具体的な戦術を探っていく。
朝型人間になり、夜はご飯の予定を入れる
——25歳頃のスケジュールについて教えてください。
1週間のうち多くはお客様の訪問に時間を使っていました。多い時は朝の9時から2時間おきにアポが入り、1日5件入っていましたね。3ヶ月で243件のアポをこなしたこともあります。この頃は今と違って対面営業のみ。もう本当に忙しくて死にそうでした。
——時間がアポで埋まっている中、訪問前の準備はどうされていたんでしょうか?
私の場合はある時からほぼ紹介でアポをもらっていたので、気になることは紹介者に事前に聞いていました。例えば、社長のバックグラウンドや訪問する会社の強み、差別化などのポイントは抑えていましたね。分かる範囲でですが、企業や組織の課題も教えてもらっていました。
——モリチさんの1日のスケジュールが気になります。
私は基本的に朝型人間なんです。当時は、リモートワークなんて言葉もない時代でしたの。また個人情報を扱う仕事なので、会社に行かないと仕事ができない。誰よりも早く会社に行き、朝の6時ごろからお客様にメールを送っていました。朝型だとお客様からは非常にポジティブな評価をもらうんですよね。「モリチさんはなんて真面目で努力家なんでしょう」と言われていました(笑)。
隙間時間はアシスタントとの連携の時間に使っていました。優秀なメンバーだったのですが、時には私の判断が必要なこともあるので、気になったことは連絡し、指示を出していました。
夜は訪問先から直帰することもあれば、時には終電までとことんやっていることもありましたね。基本的には誰かしらと会う予定を入れていることが多く、だらだら夜遅くまで仕事することはなかったです。
限界を突破するために、3年目でアシスタントを雇用する
——アシスタントがいらっしゃったんですか。
そうなんです、多い時には2人いました。私は当時から、3人分程度の行動量と進捗量が当たり前になっていました。そのボリュームの仕事に向き合っていたある日、求職者のお客様の名前が覚えられなくなった瞬間があったんです。またどんなに頑張っても月に十数件程度の人材紹介のマッチングの成約を決めるので頭打ち。数十件、数百件の決定はどう転んでも一人では難しい事が分かりました。ある意味、限界値の天井が見えて「この程度で私は限界を迎えるのか」と。
そこで現状分析をしようと業務を全て洗い出し、その中で「私でしかできない業務」と「私がやりたい業務」のみを抽出して時間を算出してみました。するとそれ以外の業務に費やしていた時間が意外にも多いことに気がついたんです。事務作業や入力作業、日程調整業務などなど……。それらの時間は全てそういった業務が得意なアシスタントに任せることにしました。
——アシスタント雇用。よく許してもらいましたね。
事務業務に関しては私よりも得意な人がいると思います。上司には「もしこの時間を私から抜き出せたら今の倍結果を出します」と伝えたんです。当時3年目だったんですけど1人で1チーム分ほど売り上げていたので、「そこまでやっているから少しは聞き入れてやろう」と話を聞いてもらえ、試しに雇ってもらうことができました。
結果売り上げは次のクォーターから2倍以上になりました。パラダイムシフトをしたからこそ限界を突破できましたね。また、喜びや悔しさを共有・共感し合えるパートナーの存在は大きいものです。アシスタントというパートナーとの出逢いは私にとっての大きなターニングポイントだったと思います。
——では、休日はどのように過ごされていたんですか。
運動全般をやるのも観るのも好きなのでジョギングしたりスポーツ観戦にも行っていましたね。もともと大学時代はラグビー部のマネージャーだったこともあり、ラグビー観戦もよく行きましたし、サッカーやアメフト、野球の試合観戦にも行きました。冬はスキーにいったりもしていました。
副業を始めてからはセミナーや研修で登壇したり、そのための資料を作ったりと忙しかったですね。そもそも昔から何も予定がないという日が少ないのですが(笑)。頭を空っぽにして何も考えたくないという日は、映画を観に行って思いっきり泣くなどしていました。
「日曜日に1日中寝てた」とか一般的にはよくいうじゃないですか。実はそれの意味が分からないんです。例えば布団の中でボーとするようなことはありません(笑)。起きるときは起きるんです。
「紹介営業」でより効率的で、本質的な時間を
——最後に、営業にとって大事なことは何だと思いますか?
営業にとって絶対的な鍵となるのは「紹介営業」だと思っています。
どんなに得意なミッションでも新規開拓をゼロからし続けるのは非効率なんです。例えば1件の受注をするのに100件ほどのリストアップが必要で、電話をかけてアポイントがとれるのは10件程度、その中で2件受注できたとしても全体の2%にしかならない。
確かに残りの98件の電話かけや8件の訪問に価値がないわけではありませんが、私はその時間分に「本当に自分のことを必要としてくれるところに行きたい」と思っていました。そんな思いから「パートナー」と呼ぶ、紹介者をネットワーク化し、基本的には、「紹介営業」としてお客様をそのパートナーの方からご紹介いただく。その頃から自身で新規開拓をする必要はなくなりました。
パートナーからの「紹介営業」とは簡単にいうと私が所属していたリクルートと相手のパートナー企業と企業同士でパートナー契約を結び、協力体制を作ることです。結果60社超のパートナー企業と契約を結ぶことができました。
——紹介営業の利点を具体的に教えてください。
お客様からすると信頼関係ができている方から推薦をしてもらえるんです。「モリチさんというリクルートで非常に売れている方を呼んで来ました」と。お客様には「この人の紹介であれば大丈夫」と初めから安心してもらえます。
営業にとってお客様と信頼関係を構築する時間と労力は多大です。しかし信頼関係が生まれている状態での営業は、初回アポでもすぐに本題から話せるのでより時間短縮になります。
また金融機関等のパートナー企業だと、たいがい取引先となるとその会社の社長やCFOなどキーマンを紹介してくれるケースほとんどです。CxOクラスの意思決定者は価値のあるものか否かで判断をするので、値段交渉の時間がなくなりました。そもそも「割引してほしい」「まけてほしい」などのコミュニケーションを取らなくてすむようになるんです。
——紹介をもらうためのコツを教えてください。
大事なのは、いかにパートナー企業とのWin-Win関係を作るかということです。私も常に紹介してくれる方にとってのWin(利益)は何かを考えていました。
また紹介していただいた後も、そのお客様とのビジネスがどうなったかのフィードバックは欠かさず行うことが大切です。これは簡単そうに見えて意外と怠りがちな部分だと思います。紹介してもらった後も知らんぷりではなく、お客様とどのような関係になったのか丁寧に報告する事が重要だと思っています。
お客様と信頼関係を育み、一件でも多く紹介してもらえるようになることが成果への近道だと思います。ぜひ参考にしてみてください。
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記事には書けなかったマル秘話も公開されておりますので、是非通勤の合間などにお聞きください!
ライター:フジカワハルカ