脳のコンディショニング No8~脳の障がい特性~ASD編
ADHDに続いて次はASDです。自閉症スペクトラムと呼ばれ、幾つかの発達障がいが含まれますが、その中でアスペルガー症候群(以下AS)に着目しながら投稿します。
○ASDに共通する障がい特性
・社会性の欠如
他者への関心が低いので、上下関係の理解や公私の区別が難しく、自己本位で分不相応な言動をしてしまいます。
関心のあることしか知ろうとしないので、特定の内容への深い知識はあってもその他のことを浅く広く知ろうとしないために世間知らずな感じで、仲間に合わせて行動することが難しいです。
社会の現実に疎く、正論を唱え、ひたすら正義を貫こうとするので、現実離れしているように見られます。
・コミュニケーションが苦手
他者と関わることが苦手で、一方通行な関わりをして、自分だけ一方的に話したいことをひたすら話したりします。
1人で行動することを好みますが、積極奇異型は関わることを苦にしないので、社交的にも見られます。
自己の思いを上手に相手に伝えることが苦手で、自身の偏ったものさしで相手の言動を理解するため誤解することが多々あります。言葉のキャッチボールが上手く出来ませんが、ASは語彙力があり普通に話が出来るのでわざとではないかと誤解されやすいです。
・想像力の欠如
相手の気持ちを想像することが難しく、自己本位で行動してしまい周りとずれが生まれます。正義感は強いのですが、大岡裁きの様な柔軟な対応は難しく、正義を振りかざして強引な判断をしがちです。
手心を加えたり、許すことは難しいです。言外の意味を汲み取ることが苦手で、コミュニケーション能力の欠如と合わさると相手に確認せずに自身の勝手な思い込み、決めつけで行動してしまい、早とちりや暴走、相手を傷つけたりしてしまいます。こだわりや融通の利かなさも想像力の欠如の現れまです。数学の図形が苦手です。
○ASのタイプ
①積極奇異型
ADHDのジャイアンタイプと似ています。物怖じせず、積極的に行動します。他者への関わりも普通に行えます。
②受身型
自己決定が苦手で、他者の決断に流されます。決断の早いADHDのジャイアンに振り回され安いです。強引なジャイアンに押しきられて結婚すると上手く行かなくなることが多いです。
③孤立型
1人でいることが苦にならず、孤独を愛します。1人遊びが好きです。干渉されることを嫌い、偏屈な変わり者のイメージを抱かれやすいです。
EPOの「三番目の幸せ」に歌われているように、一人の時間が必要です。全てから自由になれる。
感情を読み取るのが苦手なので、感情的なADHDとよく衝突します。ADHDの虎の尾を踏み大喧嘩になることもしばしばです。お節介で世話好きで、ずかずかと自分のテリトリーに入り込んでくるADHDの人が特に苦手です。
論理的で合理性、整合性を重視するためアバウトで浪花節的なADHDと基本的に反りが合わず、ADHDから気にくわないやつとして、いじめのターゲットにされやすいです。
受身型の人は、いじめられてもSOSの訴えが苦手なので、素早く周りが支援しないと深刻化な結果を招きます。
正義へのこだわりが強いが故に情け容赦ない言動を取ってしまうこともあります。
感情的な言動は理解しにくくても愛されること、大切にされることはわかるので、辛抱強く働きかけ、繋がりを強め、支援していくことが大切です。信頼した人の指示には素直に従えます。
自分だけの独特の世界観をもち、別世界に生きています。周りの人が違和感を感じることが多く、まさに同じ日本人ですが、関わる際は異文化理解の心構えが必要です。時にその異文化性から周りの人から宇宙人と呼ばれたりもします。
自分なりの世界を映像や音楽、芸術で表現し、世界に認められるギフテッドの人が多く見られます。
スピルバーグ、ルーカス、米津、フカセ、Ado、藤井風、槇原等。
遊び心があまりなく、生真面目で融通が効かないので、付き合いにくい印象を抱かれがちです。
○顕著な特性について
①関心のあることだけにロックオンする
関心のあることだけに惹かれるのはADHDと同様ですが、関心のあることが変化し、幅広いADHDに対して、ASDはずっと同じことに惹かれ、こだわります。1つのことに一途になります。周りが見えなくなるほどのめり込みます。同じことの繰り返しが楽しみになり、パターン的行動をします。自閉症児の常同運動にもつながります。
マニアック、ストイック、つきつめる、極める、こだわる、半端ない、妥協しない等が当てはまります。正に達人、名人の域です。パターンを苦にしないので、妥協することなくこだわって同じ品質の物を作り続けられます。逆に関心のないことには全く興味を示しません。
②感覚過敏
刺激の受け止めの調節が困難で、必要以上に刺激を感じます。自己の内での調節が難しいので、外部で調節してあげるしかありません。
・痛覚過敏
シャワーを浴びたら針で突き刺されるような痛みを感じる。
・聴覚過敏
周りの喧騒が我慢できない、音程のずれが許せない、スタートのピストル音が、風船の割れる音が嫌い。
・嗅覚過敏
動物園に行くと、動物のし尿の臭いがくさくて我慢できない、プールの塩素の匂いが苦痛。
・味覚過敏
辛さを強烈に感じる。
・触覚過敏
シャツのタグが肌に当たるのが気になる。体を触られるのが嫌、きつい洋服を着たくないやきつい上履きをはきたくない。
・視線過敏
人から見られるのを嫌う。
生活の多くの場面で支障を来し、調整が必要です。そして、問題を複雑にしているのは合わせて人により鈍感さもあるということです。
痛みや熱さに鈍感で骨折しても気づかない、火傷しても気づかない場合もあります。勝手に決めつけず、本人に様子をしっかり尋ね確認することが大切です。
悪戯で驚かせると、とてもびっくりするので、本人は周りが思う以上に大変です。
③豊かな創造力
想像力が欠けていて、人間関係で様々なトラブルを起こすASDですが、独特な創造力があり、多くの人が思いもよらないような世界観を小説や漫画、映画、音楽、料理等で表現します。
④こだわり
1つの事に固執し、譲ることが出来ません。頑固、偏屈、堅物と敬遠される元となります。かなり細かなことまでこだわるので、周りの人は窮屈です。細かなことにこだわりだすとそこから抜け出せない、切り替えられないので本人もかなり困っています。強迫性障害に発展することもあります。
ただし、仕事と結び付くとこだわりの○○、達人、名人となり、高評価です。味覚過敏と結び付くと特定の味が好きになり、そればかりを食べ続けたりすることもあります。
⑤常識の破壊者
自身の思いやこだわりを大切にし、自分なりの世界観をもつので、常識に囚われず、常識から自由です。常識外れと揶揄されることも多いです。新奇な発想も出来るので社会の変革者になることもあります。他者意識の低さも影響していると思われます。
⑥取っつきにくい
無愛想、無口、無頓着、無関心、無表情な所がある故に、関わりにくい感じがします。関心の無いことには反応も薄いので、余計に相手は付き合いにくさを感じます。セロトニン不足が笑いの少なさや固い表情に影響していると思われます。
⑦ギフテッドが多い
ある特定の分野で極めて優秀な能力をもつギフテッドが多く見られます。人類の発展を支えてきてくれました。
⑧臨機応変が難しい
合理的でない、マニュアルがない、したことがない(初物に弱い)ことをするのが難しいです。
相手次第で変化して対応するのは困難です。合理的、論理的な思考には優れますが、非合理で感情的な思考は苦手です。アバウトが苦手なので、アバウトな特性のADHDも苦手です。どう転ぶかわからない恋愛も苦手でぎくしゃくします。非言語のコミュニケーションが苦手なので理解できずに苦しむこともあります。
しかし、ASD同士だと心安らぐ恋愛が出来、意気投合しやすいです。実際に結婚してから共に暮らしだすと、相手のことがわからずにうまく行かなくなることも多いです。
⑨非言語コミュニケーションが出来ない
コミュ障なASDですが、特に非言語コミュニケーションが苦手です。
ASDの人には、言語で出来るだけ具体的に、明確に、簡潔に伝える必要があります。非言語コミュニケーションは避け、あてにしないことです。思わせぶりな態度は誤解を招くだけです。額面通り捉えるので、安易な約束や悪ふざけは誤解を招きます。悪ふざけを悪戯と思えず本気にするので、大きく傷つきます。
感情も読み違え易いのでそこからの誤解とこだわりが結びつくと、思いもよらない行動が唐突に生まれます。ASDのストーカー行為も誤解から生まれた産物の可能性が高いです。
⑩自分のルーティンを崩せない
こだわりや感覚過敏等から自分が毎日決めて行っていること、自分なりのやり方、手順を変えるのは困難です。周りが譲歩して譲る、または合わせないとパニックになったりします。
⑪集団を嫌う
集会や集団行動等の多人数になることが苦手です。聴覚過敏からのうるさい、孤独を好むからの落ち着かない、目的がはっきりしないことが不安でたまらない、自己に関係のない事で集められるのが不合理で許せない、納得できない等色々な理由が複合しています。
本人の思いをききながら柔軟な対応が必要です。「さぼりたいんだろう」といった決めつけの対応は本人を苦しめます。
連帯責任の考え方を理解させるのは困難なので、自己責任を限定的に取らせることに切り替える
べきです。
⑫指示されたことしか
想像力の欠如から、アバウトが苦手で、どれが大切か判断できないので、具体的に指示されたことしか出来ません。額面通りにしか動けません。プラスαを期待しても難しいです。曖昧な尋ね方をされると答えられなかったりします。
⑬攻撃的になりやすい
ADHD同様、前頭前野の機能障害なので、ブレーキが弱く、感情の制御機能に問題があり、扁桃体が活性化しやすいので、興奮しやすく、攻撃的になりやすいです。扁桃体ジャックが起こりやすく、自分の思い通りにいかないと癇癪を起こしパニックになります。
⑭空気が読めない
感情の動物と言われる人間なので、感情が読み取れないのは致命的で、その場の雰囲気を理解するのが困難です。相手が困惑したり、迷惑がっていても気づきません。自分の関心のある話題を一方的に話続けたりして、極めて失礼な奴と思われたりします。
暗黙のルール、言外の意味がわからないことも有名です。
⑮正直すぎる
空気が読めないということは忖度できないので、素直に本音をいってしまいます。それが相手を傷つけることも多々あります。
⑯自分と他者の違いに疎い
他者意識が低いので、自分と他者がほぼ同じであると考えてしまいます。自分が関心のあることは他者も関心がある、予備知識があると勘違いして、要点からいきなり話し出したりするのでとても唐突な感じです。
⑰注意の配分が苦手
1つのことに集中すると他のことに注意を向けられなくなります。話しかけても反応がなかったり、生返事をして全く聞いていなかったりします。
ASDの障がい特性をASに注目してまとめましたが、ADHD以上に複雑で特性理解がないと対応がとても難しいです。具体例を出来るだけあげてわかりやすくまとめたつもりですが、障がい特性のない人には実際に関わってみないと分からないかもしれません。障がい特性のある人は、自己理解の何らかの助けになれば嬉しいです。