脳のコンディショニングNo5 脳内物質
今回は脳内物質について、その役割に注目して神経伝達物質とホルモンについて投稿します。同じ物質で神経伝達物質としてもホルモンとしても働く物質も多いですが、今回は主な役割の方を重視してまとめました。
●神経伝達物質
人間は、電気信号プラス神経伝達物質の遣り取りで、情報を神経細胞から神経細胞に伝え活用しています。
神経伝達物質の量やバランスは情報の伝わり方や受け止め方に影響を与えます。そのため脳の認知が人により変わってくる可能性が出てきます。同じことを総ての人が同じように受け止められない、理解できない理由の1つがここにあるかもしれません。
神経伝達物質の量やバランスを左右するのが食事や言動です。何を食べるか食べないか、どんな行動をし、どんな発言をするかで神経伝達物質の量は左右されます。
バランス良く食べることでバランス良く理解できることになります。
偏食による様々な問題の原因の1つが神経伝達物質のアンバランスにあると思います。
たくさんの神経伝達物質の中で重要なものがドーパミン、セロトニン、オキシトシン、ノルアドレナリンです。以下にそれぞれの神経伝達物質について説明していきます。
○ドーパミン
別名脳内麻薬とも呼ばれ、依存性があります。人間の言動の原動力として活動に大きな影響を与えています。
楽しい、嬉しい、気持ちいい、美味しい、おもしろい、好き、様々な場面でドーパミンが脳内に出ます。最新の研究で、目標を達成した時だけでなく、目標を設定した時にも出ることがわかりました。従って具体的な目標を設定したらそれに向けての意欲が湧くということです。
脳内に出ると人は興奮状態になり、テンションが上がります。興奮系の神経伝達物質に分類されています。
意欲、やる気の素もドーパミンなので、少なくなると意欲が減退します。出るとやる気が出てポジティブになります。
但し、過剰に出過ぎると依存症になったり、脳を傷つけることも分かってきました。お酒やたばこ、ギャンブルや薬物などで大量に出ると脳がかなりダメージを受けているかもしれません。外国では国により合法化されている大麻はかなり大量にドーパミンが出るはずです。脳は多少傷ついても復元しますが、傷つく量が度を越すと復元が間に合わず廃人になります。
ドーパミンが不足するとパーキンソン病になり、ADHDの人はドーパミンが足りなくて、それを求めるあまり多動になり、何にでも首を突っ込む、でしゃばると言われています。
ドーパミンはアドレナリンとノルアドレナリンの前駆物質なので、その量がアドレナリンとノルアドレナリンの量に影響する可能性もあります。
ハッピーホルモンとしての役割もあり出ると満たされます。「超気持ちいい感覚、陶酔感、快感」が得られます。人間の様々な欲望を満たすのがドーパミンです。
「やめられない止まらない」を引き起こすのがドーパミンやエンドルフィンで、度を越えると依存症を引き起こしたり、暴走させます。人があがらうのが難しい物質で、企業は収益を上げるために巧妙に利用しています。多くの人がスマラー?になっているのもドーパミンの影響力が大きいです。
依存の一例
糖質を取るとドーパミンが出ます。糖質が減少すると再び糖質を求め、ドーパミンも出て満たされます。糖質とドーパミンの刺激が連動し、ドーパミンが減ると糖質を求めるようになります。糖質依存の始まりです。やがてストレスを感じてイライラした時にも、ドーパミンが出れば解消されるので、糖質を求め食べるようになります。
○セロトニン
オキシトシンと共にハッピーホルモンと呼ばれ、分泌されると穏やかで幸せな気分になります。太陽の光を浴び、リズム運動をすると作られます。ダンスはもちろんですが、ウォーキング、サイクリング、咀嚼、歯みがき等でも作られます。最近その効能がわかってきた貧乏ゆすりでも作られるかもしれません。一方で笑っても作られます。鏡に向かって自分に笑いかける作り笑い、それが苦笑いでも出来ます。
沈静系の神経伝達物質なので、痛みに対する耐性を高めます。セロトニンが多く出る人は、痛みを感じにくく、痛みに強いです。ドーパミンやノルアドレナリンを制御するので心理的な安定、覚醒作用もあり、不安を取り除きます。不足すると不定愁訴を訴えます。
何か不安を感じた時、イラついた時、ドキドキした時、無意識に貧乏ゆすりをするのはセロトニンを補充して落ち着くためかもしれません。
アメリカでは、うつ病治療薬として使用されているセロトニン量を増やす薬を処方箋なしで誰でも買えるので、大学生が定期テストの際購入して飲むそうです。
情動や攻撃性のコントロールもするので、セロトニンが十分にあると物事に柔軟に対応できるようになります。日本人はセロトニンが少なめなので、不安を抱きやすく、慎重で、柔軟性に欠ける面が出ているかもしれません。ドーパミンが出やすく、大きな力をもつ現代社会では、ドーパミンを制御するとても大切な存在です。
トリプトファンが原料なので大豆食品、乳製品、卵、ごま等を食べるとセロトニンが作られます。
睡眠ホルモンメラトニンの前駆物質なので、セロトニンが多いほどメラトニンが増えて、良質な睡眠が取れます。その意味でも睡眠不足の日本人には必要不可欠かもしれません。
大切な自律神経の調節もしているので、セロトニンが不足すると大変なことになります。ストレスを防ぐ効果のあるセロトニンですが、ストレスで減少します。ストレスと戦うビタミンCと共にしっかりと補充していきたい物質です。
また、表情を作ったり、姿勢の保持も行うので、表情が乏しい、姿勢が悪い場合は、欠乏が疑われます。
○オキシトシン
分泌されると幸せな気分になります。主に他者とのスキンシップで出ます。愛情ホルモン、抱擁ホルモンの別名があります。お母さんが赤ちゃんを抱っこして授乳する時、動物を撫でたり、だっこしたりして触れ合う時、手触りのいいクッション等を触った時も出ます。リラクゼーションの施術を受けても出ます。人を愛する時出るホルモンで、愛された人にはオキシトシンの受容体ができて、愛することに興味をもち、人を愛することが出来るようになります。ASDの人はオキシトシンが不足することで、共感がうまく出来ず、他者への信頼感も減少して人との関わり、コミュニケーションがうまくいかなくなるのではと言われています。触られること、スキンシップにも抵抗感を示す場合もあります。異性との関わりにも影響が出てきます。
幼少期に十分に愛されないと人を愛することに関心がなくなり、分からなくなって、代償として他の物への依存が強くなることが最近の研究で分かってきました。虐待された子どもが親になり虐待を我が子にしてしまうのは、この辺りが原因かもしれません。
セロトニン同様、鎮痛効果や不安の軽減、摂食欲求の抑制効果もあるのでダイエットにも有効です。愛されなかったり、周りにかまってもらえずほったらがしにされると不足するので、過食になるのかもしれません。
○ノルアドレナリン
分泌されると覚醒し、集中力が増し、やる気が出ます。ドーパミンからできるので働きが似ています。勉強や仕事には欠かせない物質です。
但し、ドーパミンとの違いは恐怖や怒り、不安にも関与していて、出過ぎるとパニック障がいを起こすため、両刃の剣です。
似たような働きのあるのがアドレナリンで臨戦態勢をとらせ、人を戦闘モードに入らせます。共に交感神経に働きかけ、活性化させます。格闘家が試合中痛みをあまり感じないのも鎮痛効果をもたらすノルアドレナリンやアドレナリンのせいです。
仕事の手際がいい人、手のキレる人は、ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンの分泌が多いのかもしれません。この3つが出過ぎると暴走の可能性が高まるので暴走三兄弟です。仕事ができる人ほど切れやすいのはこの辺りが原因と思われます。
●ホルモン
脳や体の働きに大きな影響を与えるのがホルモンです。一般的には、第二次性徴を発現させる成長ホルモンが知られていますが、今回はアドレナリンとコルチゾールです。
○アドレナリン
ノルアドレナリンと共にドーパミンを原料として出来ます。ノルアドレナリンと同じような働きをしますが、主にホルモンとして働きます。
○コルチゾール
ストレスホルモンと呼ばれ、ストレスと闘うために必要な物質ですが、出過ぎると様々な弊害を体にもたらします。ノルアドレナリンと共に扁桃体を過敏にするので、扁桃体による様々な問題を引き起こします。
私は現役時代、高ストレスから高脂血症に悩まされました。原因がよく分からない体の不調に関係している可能性があります。
適度な運動、食事内容のさらなる改善等に取り組んだ成果もあると思いますが、退職後、職場での大きなストレスが失くなったことで、随分体の調子は良くなりました。
コルチゾールそのものへの対処は難しいので、如何にストレスを減らすか、効率よく発散させるかが大切になります。
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