【読書記録5】白鳥とコウモリ(上)(下)巻
旅と読書をこよなく愛するBrain Library七瀬 透です。
東野圭吾「白鳥とコウモリ」
今回は、上下巻の長編小説。
これぞ東野ミステリーと言っても過言ではない。
自白が全て真実であるとは限らない。その自白は綺麗なパズルのように真実とピッタリ重なりあっていたが、絵柄はまるでちぐはぐであるかのような物語だ。
じっくり東野圭吾の世界を味わいたい人におすすめの一冊です。
あらすじ
東京で1人の善良な弁護士、白石健介が殺害された。
愛知県に住む倉木達郎が捜査線上に浮上した。なんと、この男30年以上前に愛知県で起こった殺人事件とつながりのある人物だった。
そんな中で、倉木は2つの事件を自白した。しかし、その自白の裏付けが取れないまま事件は、裁判へと進むことに。
加害者の息子と被害者の娘は、それぞれの父親の本当の真実を探すために、捜査一課の五代の力を借り、徐々に真実へと近づいて行く。
ふたりは共に愛知へ向かうが、そこで待ち受けていた驚くべき真実とは・・・。
書感
自白が全て真実とは限らない。
そんな事実に気がつかされた作品となった。
「自分に不都合な嘘の自白などするはずがない。」という思い込みの中で、自白を得られたら問題解決となってしまっているのではないか。
今作品の中では、被害者の息子と加害者の娘という正反対の立場にいる2人が、自白の嘘に気づき真実を追い求める。
作中でも表現されているが、光と影・昼と夜、そしてタイトルにもなっている白鳥とコウモリ。
どちらが白鳥でどちらがコウモリなのか?作品の中で、真実が明らかになっていくと徐々に登場人物たちの立場も変わっていく。それもまた面白い!
被害者や加害者の家族はもちろん、2つの事件の関係者たちも、それぞれ立場が変化していく。
間違っているのに、さも合っているかのごとく綺麗に並んだパズルのピースを、疑って眺めてみて欲しい。
正しく見えても、それは間違った真実なのかもしれない。東野作品の中でも全体的に少し暗いトーンで進む話だが、先が気になり一気読みしてしまった。
時間がある時に、じっくりと読んで欲しい。